【ボーズ・ミーツ・ガール 1 住職は異世界で破戒する】 鵜狩 三善/NAJI柳田 レジェンドノベルス

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第六地球宙域駐留軍所属の従軍複製僧兵で、住職階級の「HTF‐OB‐03」は蟲人との死力を尽くした宇宙戦の果て、力尽きようとしていた。死の世界を目前にしたその時、神の思し召しか仏の救いか、不思議な力が働いて、彼の体は見知らぬ世界へと転移していた。召喚主の少女ケイトから魔皇討伐への同行を求められる。異世界で出会ったけなげな少女の願いをかなえるべく、鍛錬を積んだ孤高の戦士は、己の肉体と武芸を駆使して、新たな道を突き進む!


小坊主じゃん!!(全部読み終わったあと)

第六地球宙域駐留軍所属の従軍複製僧兵で、住職階級の「HTF‐OB‐03」というフレーズだけで釣られてしまう。しょうがないじゃない、かの不朽の名作【ブラックロッド】にて「機甲祈伏隊(ガンボーズ)」という今まで見たことも聞いたことも想像したこともなかった存在に衝撃を受けた世代だもの。SF方面に設定がぶっ千切られている仏教系僧侶存在とか、唆らされざるを得ない。
それがさらに異世界召喚されて、ファンタジー世界で大暴れ、となったらSFにお坊様というギャップにそこからさらに異世界ファンタジーというギャップを折り重ねるのだから、これ面白くなるに決まっているでしょう。
もっとも、異世界ファンタジーと言っても昨今隆盛のゲーム的な中世西欧風味の異世界とちょっと違っていて、これって一昔前のオカルトパンクの要素満載のファンタジーなんですよね。
なるほど、これならサイバーパンクな強化人造僧兵とも食い合わせはばっちりだ。

と言っても世界観がどれだけソリッドでも、そこにキャラクターがついていかなくては物語としては話にもならないのだけれど、この僧兵。テラのオショウを名乗ることになる彼がまたイイんですよ。
寡黙で話し言葉も「うむ」と最低限なんだけれど、その篤実な人柄が伝わってくるような温かい雰囲気の持ち主で、返す言葉こそ少ないもののどんな話でもしっかりと聞いてくれるし、時に語る言葉には誠実さと率直さが現れていて、すっと心に入り込んでくるものがある、まさに人物なんですよ。
そんな彼を召喚した少女ケイトもまた、壮絶な運命を背負ったものでありながらそれに押しつぶされることなく心健やかに振る舞い快活な少女で、オショウが眩いと評するまでの健気で人という在り方の希望を体現したようなヒロインなのである。
そして文字通りに、人類の命運と希望を背負ってしまった少女でもあるのですけれど。
彼女に限らず、人類側の決戦存在として排出された各国の勇者たちもまた、みんな揃って気持ちの良い好人物が揃ってるんですよね。いや、そういった特別な人間だけではなく、何の力もないながらも理不尽に対して勇を示し、覚悟を示し、礎になる事を厭わない。本当は心に恐れを抱え、死ぬことに怯え、泣いて蹲ってしまいそうなのをこらえて立向うことの出来る、本物の勇気を持つものたちがオショウたちの戦いを支えることになるのです。
特別な存在にただ押し付けるのではなく、ともに戦う気概を持って。だからこそ、ケイトたちもまた胸を張って人を守るために命を懸けるのだと言い張れる。
彼女にしても、聖剣の勇者カップルにしてもその成立にはおぞましい程の冷徹な論理が介在していて、悪意ですら無い機械的なまでの人類存続のために彼らは兵器として研がれ使い潰されることを前提として創り出されている。
それを誰よりも承知し、理解し、しかし受け入れた上で彼らは兵器としてではなく誰よりも人として、人のために戦い果てようとしている。それが素晴らしいことだと一方的に刷り込まれたからではなく、自分の目で見て耳で聞いて、人と交わり、親しみ、人を愛したがために。

こういう報われるべき人たちのために、オショウさまが衆生救済のためにその力を振るうには存分な舞台なのである。戦う理由は十分で、だからこそその戦いはひたすらに痛快になる。
まさにエンターテイメントアクションの見本ではないですか。
スペースオペラさながらに、宇宙空間を舞台に星間スケールの戦いを繰り広げてたオショウさまを、地上世界に打ち込むのはそれはそれで大いに反則な気もするけれど、魔皇勢力側もかなり反則気味な能力、自分を傷つけ得るルールを告げてしかしそれ以外では決して傷つかない、という宣誓と呼ばれる絶対定義が人類側には色々とハードル高すぎるんですよね。
部位弱点とかウィークポイントではなく概念的な定義で、自分よりも遅い者からの攻撃は傷つかないとか、飛び道具は通じない、武器は通じず肉体による直接攻撃しか通じない、とかそういうのばっかりなんですよね。
それをどう攻略していくのか、が本来の味噌なんでしょうけれど、オショウ様はオショウ様でしかないんですよね。だから、一人だけジャンルが違うんだってば。
わりと一番最後が一番理不尽だったような気もしますが。味方側じゃなくて魔皇側にとってw
でも、一方的に殴っておしまい、ではないあたりに主人公が鎌倉武士の類ではなく、仮にも僧職にある仏道の人であったのを思い出させてくれます……ほんとだよ?

おしゃべりで落ち着かないけれど、真っすぐで心映えもカッコいいとすら言えるヒロインであったケイトも可愛げもたっぷりで非常によかったのですけれど、やっぱりあの幼気な聖剣カップルが自分たちにまつわる残酷な現実を受け入れ踏まえてなお、初々しく甘酸っぱい幼い恋人同士になっていて、実に尊かった。あれはよいものです、うんうん。
なにはともあれ、痛快を軸としたかっ飛ばした作品で、面白かったです。