【董白伝~魔王令嬢から始める三国志~ 2】 伊崎 喬助/カンザリン ガガガ文庫

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相国を拝命し、いよいよ国外逃亡が難しくなってきた董白。

「こうなったら……リクルートです!」

生存戦略のため関羽を仲間に引き入れようとするも、これが“義侠”の逆鱗に触れてしまい……。
そんなとき、後に“虎威将軍”と呼ばれる青年が敵陣にいることを知る。

名は趙雲、字は子龍。

窮地に立つ董白は、彼のリクルーティングに一縷の望みを託すのだが――?

孫堅の襲来。伝国の玉璽。呂布と陳宮の暗躍。そして、長安遷都。

絶えず流れを変える歴史の渦のなか、幼き魔王が打つ一手とは?
打擲(ちょうちゃく)幼女の覇道ファンタジー、第2幕!
ただ自分のみを守るため、うまいこと逃げ出すためにあれこれと謀を巡らし、動き回っていた董白。最大の味方である馬超はロリコン百合で董白ちゃんに首ったけというのもあるのだけど、それ以前に董白は子供なんだから責任なんか負わず逃げていい、という考えの人なのでその意味でも全面的に味方だったのだけれど、逆に言うと本当の意味で味方だったのってその馬超だけだったんですよね。
だから、あれこれと画策しても自分本位の方向性にまつわる方策はどうにもうまくいかなかった。
ただ董白ちゃん、これで真面目なので相国任されちゃった以上は仕事放ったらかさずにちゃんとこなそうとしちゃうんですね。そうなると自分のことばかりやっていられなくなって、まさに国を動かす仕事を自分の手づから動かすことになる。そうなると、どうやったって漢という国そのものの事を考えちゃいだしてしまう。
さらに、親族の董一族の我欲全開の企みによって皇帝劉協に対面することになってしまった董白ちゃん。そこで出会ってしまったのは、自分と同じようにわけわからん立場を仕方なく押し付けられてしまった同世代の子供。しかも彼劉協はどこか諦観とともに傀儡たる皇帝を全うしようとしているときた。これをこう、蔑ろにしてしまえないのがまた董白ちゃんなんですよね。わりと自分本位の子だと思うんだけど、仲良くなってしまった人を無視できるような子でもないんですよね。
そうやって放り出せないものが増えてくると、身動きだって取れなくなってくる。一応真面目に仕事してる分、漢を牛耳る軍閥の長として敵対勢力はどんどんと悪名を宣伝するものだから、もう魔王董卓の娘、ではなく董白自身が魔王として悪名を轟かせ付け狙われることになってしまったわけだ。
こうなると、もう身ひとつで逃げ出すなんてこと危険すぎて出来なくなってしまう。それでも未練がましくウダウダとやっていたのですが、とある人の指摘、或いは忠告によって彼女開き直るんですね。
このまま相国として漢帝国と劉協護りながら、天下統一とか無理だけれどなんとか勢力として生き残ってやる、と。そのために、前世の経済人としての経験と知識フル回転させて、この旧世界に喧嘩売ってやる、と。自分の命と、自分が背負って手放せなくなったものを守るために、ついに董白ちゃん、命を大事にという自縄自縛から解き放たれ、その才覚を存分にふるい出すのである。

ここに来て、まだお神輿というか、偶然担ぎ出されて本人の意志とはあまり関係ない所で歴史の表舞台に立たされてた、という感じだった董白ちゃんが、自分自身の意志で列強の一角を担う群雄の一人として振る舞い出した、という意味でも戦記物らしくなってきた感があるんですよね。
馬超と今回仲間になってくれた趙雲という二枚看板に、李傕という辣腕の軍指揮官、郭椶箸いι隊長もついて一応董白軍としても格好付き出しましたし。軍師が、軍師が足りないけどいないけど。
そういえば、軍師格のキャラって今の所陳宮しか出ていないのかそういえば。有名所は未だ沈黙を名乗ってるけど、どれだけ登場予定があるんだろう。
前回驚かされた劉備のキャラだけれど、案の定桃薗三兄弟、仲間になるどころか最大の敵に。いや「劉備」の仁の在り方からして未だ可能性はあるかもしれないのだけれど、何しろ「関羽」の義侠がなあ。あれ完全にマイルール正義で自分が絶対の判断基準、人の話は聞きません、皇帝の言うことだって聞きません、ってやつで話にならないもんなあ。ただ関羽だけだと本当に融通聞かなくなるので、それで劉備とセットという組み合わせにしているのだろうけれど、ルールが厳密すぎて彼ら自身にもコントロール出来ていない、常に現場対応って感じだし。
しかし董白ちゃんが責任感じているように、蜀の五虎将軍、まだ未登場の黄忠を除いて見事に分断されてしまったのか。趙雲がなんとなく今まで見たこと無いタイプの下積み型なのがちょっと面白い。

しかしこの董白ちゃん、中身は元おっさんということでTS転生、性別が反転しての転生になっていて、おかげで男とのお付き合いは生理的にムリー、って本人は言ってますけれど……。
TSモノの醍醐味の一つとして、元男だけれど女に目覚める、というのがあると思うんですよね。そのまま心は男のまま、というのもあるんだろうけれど、段々と体に引っ張られて心も女になっていく、というのもまたあると思うんですよ。
董白ちゃんの場合、別に体に引っ張られているという様子はないのだけれど、別に普段の振る舞いとか男出てるわけじゃないし、中身の方もそんなおっさんくささもないんですよね。
それでも、恋愛とか生殖の相手として男はちょっと、とはコメントしてるんですけれど……君、劉協くんとわりといい雰囲気じゃね?
董白ちゃんはそんなつもりないんだろうけれど、皇帝という位ではなく劉協個人に接してくれる董白ちゃんに、劉協くんかなり心捕われてますよ?
それでも、皇帝として自分を律しようとしていた劉協の心に、踏み入ったのは貴女の方ですからね董白ちゃん。
前世から、ある一線を超えると自分を制御出来ずに相手の心をへし折る形の悪口雑言を撒き散らしてしまう悪癖がある董白ちゃん。この生でも、度々炸裂させていたその悪癖、まあ呂布や今回は孫堅といった名だたる怪物たちの心を一度とはいえ真っ白にするくらいの超攻撃的煽りをカマしていたわけですけれど……(孫堅の格好は挿絵見て、うん思った。確かにそう思った。董白ちゃん言ってくれて、スッキリした!)、董白ちゃんの言葉、攻撃だけじゃなかったんですね。
同じように自分の中の統制を離れて発せられてしまった言葉。でも、相手は「友達」である劉協であった時、絶体絶命のさなかにそれは確かに親愛と真摯さと誠実さで形作られた、心をへし折り傷つけるものではなく、その心に響かせ鷲掴むものでした。
あれ、完全に劉協くん落ちましたよ? あれ、完全に女の子ムーブでもありましたよ?
あれ、かなりいい雰囲気になってたと思うんですけど、うん。
いやうん、個人的にはですけれど董白ちゃんよ……劉協くんアリじゃね? 有りで、うん。
馬超は怒り狂うかもしれませんが、有りで。あの男の子、可愛いじゃん。さり気なく、後宮誘ってるし。ちょっと勇気も出してたよねw

長安脱出を成功させ、名実ともに一大勢力董白軍の棟梁となった董白ちゃん。反董白連合の魔の手からも、義侠の魔の手からも親族の魔の手からも逃れ、彼女なりにただ生き残り逃げ延びるのではなく、大切なものをまもりながらこの三国志の世界に経済圏を打ち立てて生き残りを図ろうと目論むわけだが、群雄は今なお割拠し、皇帝の身柄を手にしている董白ちゃんは色んな所から狙われること必定。未だ、あの「曹操」が姿を見せていないのも不安が募るんですよね。
董白ちゃんは、果たして生き残れるのか。なかなか一巻よりも見ごたえある展開になってきました。