【ボーズ・ミーツ・ガール 2 住職は異世界で破戒する】 鵜狩 三善/NAJI柳田 レジェンドノベルス

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第六地球宙域駐留軍所属の従軍複製僧兵で住職階級の「オショウ」こと「HTF-OB-03」。異世界に転生し依頼主のケイトとともに魔皇討伐の旅に出て、世界を救い英雄となった。
その後二人は、ラーガム国のロードシルト公から、魔皇の厄災から救われたことを祝う祭りへ招かれる。王は風評の良くないラーガムへの出立に難色を示すが、オショウにこの土地の真実を知ってほしいというケイトの願いもあって、二人は隊商に同行する形でラーガム領領へ旅立つ。道中で禅問答という名の謎かけ遊びをしながら、旅を続けるオショウとケイトだった。
一方その頃、かつてオショウとともに戦ったカナタと彼らの仲間になったラーフラは、中立地帯に城砦都市を築き、大樹界を開拓することを志していた。都市が形になってきたころ、二人の前に長剣を帯びたウィンザーという男が名乗り出る。カナタとラーフラの正体を知っていたウィンザーは、自家の名誉のためにとあるたくらみを企てていた。ラーフラを守るため、カナタはウィンザーと共に、オショウたちが向かっているはずのラーガムへ向かうこととなる……。


カナタとイツォルの幼馴染カップルが本当に尊い!
魔皇討伐のために三国から特別選抜された面々って、ある意味全員捨て駒、或いは特攻兵のようなもので最強でありつつも本国からは切り捨てられた者たちだったんですよね。
ケイトだけは、アプサラスの王様が本物の仁君でケイトの事を本気で庇護し、また籠の鳥にせず今回の一件で送り出したように成長を促し、場合によっては国のくびきから飛び出すつもりがあればむしろ後押しするつもりがあるくらいの懐の広さと若者への愛情を抱いてくれている人なのだけれど、他の二組は結構本国から突き放された立場にあるんですよね。
特にカナタとイツォルの聖剣カップルは、王家からは冷たく接せられ実家からすら元々生贄として捨て駒にする予定だったから予定外に生き残り、功績をあげ、大樹界に新たにつくりはじめた開拓都市を治める事になったカナタから、実権を奪うことを目論んでいるという助け少なく周りどころか本国まで敵だらけ、という厳しい状況なんですよね。
元々経験不足のなか若くして開拓事業をすすめる都市の領主なんて立場に立って、カナタもイツォルも余裕なく全力疾走したままマラソンしているような状況だったので、すでに一杯一杯な所あったんだよなあ。これ、二人がお互いうまく支えあえればよかったのだけれど、お互いがお互いのために献身的すぎるので、うまくブレーキ踏めない状態になってたんですよね。
こうしてみると、そんな二人を上手いこと落ち着かせ導いてあげていたのが、先のラスボスであった魔皇ラーフラというのが何とも面白みがある。この人、敵じゃなかったらこんなに頼もしい面倒見の良い気のいいアンちゃんだったのか。結構皮肉めいた物言いもするのだけれど、凄く親身になってくれているし、カナタたちへの目線が弟妹を見るような目なんですよね。彼らのこと気に入っているというのは本当なのだろう。なんかこの二人ホントに見てて、尊い!と思うカップルなんですよね。
まだ道を定められず迷い苦悩しながらも、直向きに前進していく姿がどうしても放っておけないのだ。大人と言わずとも彼らよりも少しでも年長の仲間たちが、兄や姉、父親気分でついつい助言し手を差し伸べてしまうのもよくわかるんですよ。
ちゃんと素直に聞く耳持ってくれますしね。真剣に、言った言葉を考え受け止めてくれる。そうしてどんどんと伸びていく。目を離すと真面目さ故に、限界を無視して頑張りすぎてしまったり、無理して往くべきでない道へと目を向けてしまったりするような危なっかしさも、つい手を差し伸べてしまう理由の一つなのでしょう。
同時に、この子たちの直向きさは手を差し伸べた大人たちの側まで巻き込んで、一緒に引っ張ってくれるのである。準決勝で戦ったグレイおじさんなんかその典型でしょう。カナタの直向きさに真っ向から付き合ったが故に、一緒に高みまで引き上げられどこか膿んでいた精神にビリビリとした活力まで吹き込まれてしまった。
颯爽と助っ人に現れるおじさんがまたカッコいいのですよ。
これもう、この作品のもうひとりの主人公で間違いないでしょう、カナタくん。ある意味真っ当な側の主人公。
一方で、バリバリと立ちふさがる壁やら崖やらを突き破り、障害をまっ平らな地面のように駆け抜けるのがオショウさまとケイトのコンビである。ケイトも今回は特攻の使命から解き放たれたせいか、わりとイケイケドンドンだった気がします。いや、オショウへの信頼が揺るぎないものになったから、不安も悩みも抱く必要がなくなったのか。だからといってオショウ任せにせず頼り切りにならず、どんどんと自分がやれることやりたいことを見つけて、むしろグイグイと引っ張っていくあたりがこの娘さんのパワフルなカリスマなんでしょうね。
何気に、癖のおおいメンツの中で自然とリーダーシップをとってましたし。

そして今回一番確変を見せていたのが、ネス公ことネスフィリナ姫。前は鎧の中の人というイメージで鎧から出てからの出番もそれほどなかったので印象薄かったのだけれど、今回は出ずっぱりという事もあって一同のマスコット役も相まって、可愛いという凶器を俄然振り回すことに。
この娘、喋らないのですけれど感情表現を「!」で見事に豊かに表現していて、ちびっこいのも相まってひたすら可愛い生き物と化してたんですよね。ってか、喋らないのにめっちゃ言いたいこと伝わるのね。「!」の使い方もさることながら仕草動きが大きくて感情にダイレクトに連動していて、気持ちが凄く伝わってくる。セレストの兄貴への懐きっぷりがまた尊くてねえ。
もう存在自体が尊くなってるんですけど、ネス。セレストの方もお姫様を存在に扱っているようで、その実メチャクチャ大切に扱っているのよくわかるし。多分にもれず、このネスフィリナ姫もまた王家から危険視され白眼視され廃棄されたような危うい立場なんですよね。そんな彼女を連れ出し、守っているのがセレストとミカエラのお兄さんコンビで、このトリオがまたいいパーティーなんですよ。
んでもって、カナタたちの聖剣カップルにケイトとオショウ、そしてセレストたち三人が合流すると、またこれが凸凹だけれど息ピッタリのパーティーになるんですわ。前回は、合流したのが最後も最後、しかもカナタとセレストたちはほぼ力尽きた状態だったので、本格的に冒険事件を共にするのは今回がはじめてだったのですけれど、これほど気持ち的に相性ピッタリ息ピッタリとは思わなかった。意外と年齢分布もバラけていて、若い子と大人とのいい意味での支え合い気遣い合いが機能してるんですね。ネスが一番年下で、皆から可愛がられて愛されるポディションというのもありましたし、カナタとイツォルが年上のみなから見守られるカップルという立場もなんかしっくり来るものがあったのでしょう。オショウさまが何気にこの人、泰然と大人びているようでえらく幼い時もあるので謎の立ち位置でもあったのですが。
あとオショウさま、口数少ないだけあって説法そのものはあんまりうまくありませんねw 意図と気持ちは凄くじんわりと伝わってくるので、それはそれで良かったのでしょうけれど。セレストに兄貴がうまいこと伝法に噛み砕いた形で続いて説諭してくれたのでまたうまいことカナタにも吸収されましたけれど。

今回の敵は人外ではなく、人の中。いや、人の中にありながら人から外れてしまった外道たちという連中で、果たして前回の魔族相手の人類絶滅の危機以上に盛り上がれるのかという危惧もありましたが、愚かな人の闇や泥を若く新しい未来を掴む者たちが痛快にぶっ飛ばすという意味でまたよく映えましたし、味方サイドの連中が見ていて本当に気持ちの良い人たちで、また若い子たちが尊さに胸がときめくような初々しい子ばかりで、凄惨な展開が少なからずありながら、思わず微笑んでしまうようなやり取りに読んでいて心華やぐばかりでした。一巻よりもさらにメインの登場人物たちが好きになった、そんな第二巻でありました。彼らの冒険、これはもっともっと見ていたいですね。