【異世界、襲来 01 プロジェクト・リバース】 丈月城/しらび MF文庫J

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世界を救うのは、いつだってヒーローだ。

突如、現代社会に現れたポータルから、異世界文明は人類への侵攻を開始。ドラゴンが飛来し、大魔術師が襲撃する世界へと変貌した。中学生の一之瀬ユウは国家プロジェクトの幼年従事者として、国防軍所轄のナノテクノロジー研究所に徴用される。彼は運命の導きにより、かつて国防の要であった人型戦闘機械『アスラフレーム三号』の継承者として選ばれる。それは『着装者三号』の愛称で親しまれ、日本に平和をもたらす救世主としてグッズ化、映像化もされるなど、社会現象になるほどの人気だった。大人も子供も憧れた彼はまさしく、ヒーローだった――。丈月城×しらびによる、ヒーローVS異世界の革命的戦記、ここに開戦!

こりゃあもう、アポカリプス・デイ……「黙示録の日」のその後だ。
異世界文明の襲来によって崩壊した現代地球文明。描かれているのはとりあえず日本のみだけれど、国防軍は組織だった反抗が粉砕され、首都圏は水没。政府は九州に疎開したものの、統治能力を失い、他の本土大都市も大規模魔術によって壊滅。社会体制は崩壊し、日本国内で難民が発生。もはや治安は守られず、異世界から送り込まれてくる魔獣たちの襲撃に怯えながら寄り集まって暮らす市民たちからはモラルは消え去り、暴力で弱い人々を従える組織構図が自然とできあがっている。
荒廃した未来なんて世紀末絵図ではない。現在が、現代が、今こうして日常を失い荒れ果てていくその最中なのだ。
ゾンビパニックなんかでも起こりがちな人心の荒廃だけれど、ニンゲンの手ではどうしようもない上位存在からの徹底した攻撃、文明そのものの破壊という意味ではまさに黙示録の日なんですよね。

そんな絶望的な天意に抗えるのは、亡命者であるエルフたちが持ち込んだ技術などによってもたらされた「アスラフレーム」。その装着者のみ。
人形戦闘機械というけれど、乗り込むんじゃなくて着込むようなタイプなんですよね。そして見た目はまさに仮面のヒーロー。黄色いマフラーが聖骸布として意のままに動くどころか自律して動く武器であり防具というあたりも、まさに仮面のヒーローなんだけど……。
ここまで社会体制がボロボロにされてしまった状態から果たして挽回できるんだろうか。
偶然なのか運命なのか、前任者の戦死から稼働する事なく沈黙を続けていたアスラフレーム三号と、眠らされていたエルフの姫のクローンとに認められ、新たな装着者となった少年兵の一之瀬ユウ。中学生の彼は、決して才気煥発とした意気軒昂な主人公というわけではないのだけれど、年齢の割にクレバーで強かなんですよね。こういうさっぱりとした粘り強さを感じられる主人公は、丈月さんらしい。同時に、この絶望的な状況に心折れないソルジャーとしての気質の持ち主でもあると言えるし、絶望的な状況に達観し割り切っているとも見て取れる。しかし捨て鉢になってるわけじゃないんですよね、いざというときの覚悟を決めているとは言っても。
中学生にここまでの覚悟をさせてしまうほどの、どうしようもない状況であり、それまで彼とその友人である伊集院が経験してきた世界が亡びていく日常が鏖殺されていく現実の過酷さ、凄惨さがそれほどのものだった、とも言えるのでしょう。
果たして、たった一人のヒーローと僅かな数の仲間たちとで、この終末極まった世界を救うことなんて出来るのだろうか。異世界側も、何気に少数の超強力な魔術師のもとに侵攻を行っているみたいなので、首刈り戦術を行っていけばワンチャンあり、なのかもしれないけれど。
仮面のヒーローと言っても、パンチやキックで怪人をぶっ飛ばすどころじゃなく、殆ど戦略兵器なみの強力さを誇るだけに。まあ敵側も同レベル以上に単体で戦略兵器そのものなんですが。
アスラフレームの話題からして、少なくともあと二体は3号と同レベルで似たコンセプトの機体みたいなので仲間か味方になりそうではあるのですけれど。

尤も、この一巻に関しては強大な敵と戦うよりも前に、モラルが崩壊してしまった同じ日本人たち相手にどうやって日々を無事にやり過ごし、また生き残るかという方にエネルギーが費やされていた気がします。それだけ、荒廃した現状を噛み締められたとも言えたのですけれど。
同時に、そんな世界でユウと伊集院、研究所仲間のハーフエルフのアリアとエルフクローンのアインの四人で、サバイバルしながら逞しくなんだかんだと賑やかに生きていく姿がなんとも心惹かれるものがありました。
この四人の関係、ここにあとで波多野なつきという姉御が加わるのですが、この仲間たちの一蓮托生で運命共同体でこの亡びかかった世界で一緒に生きていこうというパーティーとも家族とも取れる関係は、なんか凄く好みでした。不思議と誰かがリーダーシップとるわけではなく、みんなで色んな意見出し合いながら方針決め合うのとか、下手すればグダグダになるし人間関係も難しくなるパターンもあるのかもしれませんけれど、この子たちはある意味現状や生き死にに腹が据わっている分、結束が強く自然なんですよね。
彼らのこの黙示録後の世界での旅は、あまりに絶望的なんですけれど同時に生きるために前に前にぐんぐんと歩いていく冒険譚でもあって、うんなんか好きだったなあ。
とはいえ、ここからは本格的に異世界側の勢力との対決になっていくのでしょうけれど。えらいところで次回に続く、となってしまっているけれど、2巻は速攻来月刊行みたいなので待たされずに済みそう。