【今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。2.先輩、ふたりで楽しい思い出つくりましょう! 】 涼暮 皐/あやみ MF文庫J

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天ヶ瀬まなつ。同じ学校の一年生で、幼馴染の妹・双原灯火のクラスメイトでもある。同級生曰く、天真爛漫な完璧美少女。上級生曰く、守ってあげたくなる正統派。そして「うちの高校で彼女にしたい後輩No.1」でもある。そんな学校の人気者である彼女と、学校の不人気者である僕は恋人同士というわけだ。つくづく幸せ者だな。
「いおりん先輩! 遊びに行きましょう! 楽しみにしてたんですからっ!」
つまりは僕は、僕だけが知っている。いつも明るく振る舞う彼女がふとした瞬間に見せる儚げな表情や、少し油断してぼーっとしている瞬間を。望まれる「美少女」を演じるのが上手い、素の彼女の魅力は僕にしか見せないことも。けれど――今の僕は、何か大事なことを忘れてないだろうか。

前回のお話の感想で、自分はこんな風に〆たんですよ。
それは辛いけれど、酷い話かも知れないけれど、きっと悪くないことだったのだ。
悪くないということは多分、良かったね、で良いんだよ、と。これはだから、そんなお話。
そしたらさ、この2巻は
「これっぽっちも良いわけあるか、このボケがーー!!」
とばかりに新ヒロイン・天ヶ瀬まなつが飛び蹴り食らわしに来たお話だった。いや本当に。
まあそれがわかるのは終盤も終盤、最後も最後なわけですけれど。
前回の灯火もそうでしたけれど、そもそもこれって彼女達との交流から、ヒロインの抱えている思惑や意図を読み取り、その真意を解き明かしていくという構図になっているんですよね。
そうやって彼女達の秘めたる目的を暴いてようやく、彼女達と対峙する事が叶うようになっている。
灯火にしてもまなつにしても、本来なら伊織にはそれを知られぬまま事態が完結してしまえば目的達成だったのに、この男ときたら目ざとく違和感に気づいてえげつないくらいにグイグイとこっちの懐に踏み込んでくる。彼女達としては目的の内容からしてどうしても伊織とは絡み続けないといけないわけで、伊織の関与しない所で勝手にすすめるというわけにはいかないから、攻めているようで実際は無闇矢鱈に距離詰められて仰け反って顔赤くしてアップアップになりながら、それでもワタワタと手を振り回してリミットまで押し切ろう、と必死こいて頑張ってるという状況で。
なんだか可哀想になってくるな。
でもまあ、余計と言えば余計な茶々を伊織に入れようとしてしまったのは彼女達の方なのだからこれは自業自得の部類になるのか。
飛び蹴り食らわしにきたまなつも、その蹴り足を掴まれて逆にぶん回されて放り投げられるような末路を辿ってしまったわけですし。
うん、それ自爆特攻でしたね。目にぐるぐる渦巻き浮かべながらの。だから、灯火といいどうしてこの作品のヒロインはそんな自爆特攻してくるんだよ。
献身と言えば献身なんだろうけれど。自分自身を引き換えにして代償にして、というと美しいのかもしれないけれど、なぜか彼女達の場合そういう綺麗で儚い絵図じゃなくて、腹にダイナマイト巻きつけて、死んだらーとドタバタ突っ込んでくるように見えてしまう不思議。
そしてそれを容赦なく叩き潰してゲシゲシと踏みつける伊織くんの図、という感じ。いや、良いこと言って彼女達の献身を受け止めつつ、自分を犠牲にするのは否定して、という定番の形だとは思うのだけれど。
うん、これも灯火がこの巻に至って、どうしようもないレベルのクソ雑魚ヒロインになってしまったのが悪いのだ、うん。お陰で、この作品のヒロインはゲシゲシと踏みつけると嬉しそうにゲヘゲヘ笑いそう、というイメージが湧いてしまった。ぞんざいに扱えば扱うほどクソ雑魚キャラ的に輝く、みたいな。まなつさん、完全に巻き込まれである。
やー、でも伊織ってSっ気の塊風味なところあるので、ヒロインの思惑を挫く際の説得のやり方が散々弄り倒してもう勘弁してくださいと屈した所に、盛大に飴くれまくって甘い言葉囁いて陥落させる、みたいな……こいつ完全にジゴロだよな、的なやり方するので、彼女らMっ気引っ張り出されたあとで調教されましたー、みたいなイメージががが。元々、灯火にしてもまなつにしても尽くす系を重くして拗らせて、自爆特攻!というアレな感じで、ある意味受けの文化圏の人たちでしたし。
そして、ついには釣った魚には餌は絶対やらんとばかりに放置プレイでのたうち回る前回ヒロインの灯火ちゃん。
この娘、確か前回では献身的で健気の局地みたいなヒロインムーヴしてたはずで、凄くちゃんとメインヒロインしてた覚えがあるのですけれど、記憶の彼方に消えてしまいましたね。凄いぞ、灯火ちゃん。素のキャラだけで、かつてヒロインであった歴史を星の涙なしで消し飛ばしに掛かってるぞ。
まなつはまだイイ性格している方なので、次回灯火とおなじ末路を辿るハメにはならないと思うのだけれど。灯火はこのままクソザコ系を前面に押し出していくんだろうか。ちょっと見事なくらいクソザコキャラがハマってしまって、ここまでハマると本気でヒロインとして大丈夫かと心配になるのですけれど。

この二人に比べると、3人目は強度高そうだがさて、肝心の星の涙に纏わる謎はまなつの話を介在してさらに複雑化してきた感がある。時系列もちょっと錯綜している部分があるし、まだ記憶から消されている所が大きい部分を占めてるんでしょうね、これ。次回はそこに大きく踏み込んでいく話になりそう。
しかし、てっきり自分、まなつもタイトルの「幼馴染の妹」の範疇に入ってるのかと穿ってみていたのですが、さすがに違ったのか。病室にいる認識できない親友、のお見舞いにまなつ連れて行ったの、最初は実は関係者だった、という顛末を予想していたので。実際は全く違う形で彼女をお見舞いに連れて行った事が別の因果に絡むことになるのですが。
いやそうなると、次回の娘がやっぱり「幼馴染の妹」という可能性も無きにしもあらずかしら。