【異世界迷宮の最深部を目指そう 14】 割内タリサ/ 鵜飼沙樹 オーバーラップ文庫

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『告白』の末、晴れてラスティアラと恋人同士になったカナミ。マリアとリーパーに再会し、ノスフィーとの決着をつけるため、一行は『本土』の大聖都フーズヤーズに辿り着く。訪れた冒険者ギルドにて『世界樹汚染問題』という依頼を発見したカナミ。なんでも、鮮血属性の魔法を得意とする男が世界樹を真っ赤に染めているという。その男は、七十層の『理を盗むもの』で―。そしてノスフィーは、自身の記憶を呼び起こす。『光の理を盗むもの』として生まれた日を。―愛を知ったあの日を。

挿絵の鵜飼沙樹さんのツイッターで目撃したアリ得たかもしれないもう一つの14巻表紙絵「血の海と太陽と空で、水遊びするカナミファフナー」が、見たときは意味不明だったのだけれど、読み終わってみると概ね間違ってなかった事を理解したときの思わず遠い目になる自分w
というわけで、70層「血の理を盗むもの」ファフナー・ヘルヴィルシャインの登場である。いやもう、なんだろうねこの人。今までで一番イージーモードを自分から進呈しているような人なんだけど、どう判断したらいいんだろう。実は地雷とか、裏があるとかは絶対ないようで信頼できる人物なのは確か。結局面倒くさいことになるにしても、彼の協力的な姿勢がまがることはないんだろうけど、ノスフィー次第になるのか。
そのノスフィーはというと、案の定仕掛けてきたのだけれど、準備万端であらゆる展開に備えた網を張っている、というふうでもなく、なんか「その話聞いてないんですけどー!?」というような反応を度々見せていて、彼女の企みって穴だらけなんじゃないの実は? と思わされてポンコツ属性があるんですかもしかして。洗脳して手駒にした戦力たちも、なんかさっぱり思う通りに動いてくれなくて、洗脳しているはずなのにみんな各々好き勝手に動いていて、ノスフィー振り回されてる感あるし。カナミとライナーへの嫌味っぽい言動はともすれば子供っぽくすらあって、もっとクールビューティーというか底冷えするような怨念で駆動しているのかと前は思っていたのだけれど、ちょっとイメージがわからなくなってきたぞ。
カナミとライナーは多分、自分と前まで自分が抱いていたような印象をノスフィーに持っていたからこそあそこまで警戒しているのだろうけれど、今の姿しか知らない女性陣が彼女をあまり危険視している様子がないのもわかるんですよね。別に仮面をかぶっている、という風でもないんだよなあ。
とは言え、カナミたちと敵対していて彼らを陥れるために動いているというのは確かで、まあ最終目的がどうなっているかはともかく。
それに今のノスフィーは、ラスティアラの皆仲良く思想に激しく反発している様子なので、むしろみんな仲良くの反証を成立させる方を重視しての、あの仕掛けだったのかしら。事前に仕掛けてた事はないのだろうけど、結局カナミのパーティーを壊滅させるためには仲間割れが一番ではあるんですよね。
ただ、うーん。ノスフィーがありえないと、心の奥底では許せないと思っているに違いない、という主張は今のカナミパーティーの女性陣に対して周回遅れな感じはあるんですよね。
数年前の、みんな一緒に船で旅に出たあたり。全員集合で漏れなくカナミが修羅場で頓死しそうな時期だったら、当てはまりそうではあるのだけれど。今となってはみんな多かれ少なかれ、精神面の不安定さの原因だった部分を解消して成長しているだけに、ノスフィーの指摘もそれって何時のこと? みたいな的外れ感があったんだけど。実はやっぱり内に、ラスティアラと結ばれたカナミという関係を認められない受け入れられない許せないという感情を滾らせていたのだろうか。皆無ではないのだから、それをアルフィーの魔法で無理やり掘り起こされた、という事なんだろうけど。正直になったくらいで、今の彼女達がそんな仲違いするまでになるんだろうか。現場を見れていないので、実際の所はまだ判断がつかない。

でも、ラスティアラのみんな一緒思想がないと、現状でもカナミが生命途絶の危機の警告が自動発令してしまうほどのヤバいバランスで保たれていたのはまあ間違いないんですよね。スノウとかディアとか見事に爆弾が破裂しそうにはなってたわけですし。
そう考えるとカナミの愛する人は唯一一人だけ。一人だけを永遠に愛するのが正しい姿、という思想は見事に起爆スイッチでもあるんですよね。
どうしてそこまで頑なに、そう思い込んでいるんだろう。いや、愛する人は一人という考え方自体は不思議でも不自然でもないのですけれど、ラスティアラの趣味嗜好と比べると、カナミのそれはある一線を超えると激烈に拒否反応を示していて、妙に自動的なところがあるんですよね。
それに、永遠、とかいくらカナミがロマンティストで厨二病気味でも、ちょっと彼のキャラクターからはズレている気がするんですよね。その考え方は、彼らしくない。
という違和感を補強するような情報が次々と舞い込んでくる。というか、明らかに外からの誘導じゃないか、というもろな話が色々と。わーい、ラスボス確定じゃないですかこれー。ってかラスボスもほぼ作中で明言指摘されてますもんね。
となると、カナミがなんか妙にせかせかと、或いは視野を固定しているようにゴールを妹ちゃんを起こす事に定めているのも、封印を解くように意識誘導されているように見えてきてしまうわけで。
なるほど、今ラスティアラが座っている椅子、座す人物を入れ替えるのはわりと簡単そうだ。
いやこうなってくると、ノスフィーの立ち位置ってどこにあるんだろう。彼女の過去にしても回想はまだ生まれてからしばらくのものだけで、カナミと結婚したという経緯もわからないし、今現在の真意がまだわからないので、判断が難しい。いや、「素直」になったノスフィーの本音からして、愛されなかったと思って拗らせまくったネガティブな感情の賜物なんだろうけどさ。それだけなのかしら。
それに、今回新たに名前が明らかになった80階層、90階層の理を盗むもの、たち。こうなってくると、むしろラスボス戦を前にした味方、なんだろうか。
なんにせよ、判断材料がまだ出揃わない状態なので、兎にも角にもノスフィーとの決着がつかないと目の前は開けないように思える。
しかし、洗脳されてるはずのグレンさんや、世界樹の前に立ちふさがっているファフナーといい、敵対しているわりに協力的な人がやたらと多くて、変な感じだ。悪意や敵意がほぼノスフィーだけに集中していて他の人からはおおむね好意しか向けられていないんだもんなあ。ノスフィーにしても、好意の裏返しみたいな所が見受けられるし。
じゃあ状況はヌルいのかというと、順調に最悪な方に転がっているようにも見えるし、いやでも大丈夫なのか? ともかく、混沌だなあこりゃ。

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