【失格から始める成り上がり魔導師道! ~呪文開発ときどき戦記~ 2】 樋辻臥命/ふしみさいか   GCノベルズ

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現代知識と様々な工夫をもとにアークスが作り上げた「魔力計」は、これまで不可能とされていた「魔力の正確な測定」を可能としたことで、医療や軍事の分野に革新をもたらすことが明らかであった。自らの知らぬところで、王国上層部の間で存在感を増していくアークス。やがてひとつの発明が―世界、そしてアークスの運命を少しずつ変えていく…!現代知識×魔法=無敵!!!!爽快異世界ファンタジー!!

魔力計って地味なように見えるけれど、産業構造を根本からひっくり返すという意味でまさに世界を変えてしまう発明なんですよね。下手をすると中世から近世に時代を進める可能性すらある発明なわけだ。軍事や医療という限定された分野への革新どころじゃないよなあ、これ。
当然、国の上層部や国定魔導師たちはその重要性を正確に把握していて、瞬く間にこれを発明したアークスは時の人に……、とはならず。あまりに重要すぎて、大々的に発表なんて出来ない状況に。
それでも、アークスの功績は魔導師なら誰でも評価するもの。彼の名は知る人ぞ知る超重要人物となっていく。
こうなると、なんでこんな天才児を廃嫡なんてしたんだ、という話になるわけで。これ、魔力計の件が最重要国家機密となり公には伏せられたことで、アークスの父であるジョシュアは首の皮一枚つながった、という事なんだろうか。まあそれも公表されるまでのこと、となりそうだけれど。
ただジョシュアも決して無能な人物ではないんですよね。それどころか、軍関係者の中では一目置かれるほど有能な人物であるし、彼の兄である溶鉄との兄弟関係を見ると情の薄い人間でもないように見える。それだけに、彼があれほど意固地になって魔力量が足りないというだけでアークスを目の敵にして廃嫡した頑なな姿勢には違和感があるんですよね。それが、レイセフト家の家訓だったとしても。
ジョシュアがそこに必要以上にこだわっているのは、弟である彼自身がレイセフト家の当主となり、兄が家を出ている事も大きく関係しているのだろう。これで兄弟いがみ合っているかというと、むしろ仲が良いという風にすら見える関係なんですよね。この複雑な兄弟関係の結果、ジョシュアが当主についているという事実そのものが、彼を何らかの形で縛り付けているようにも見えるのである。
今となってはジョシュアとアークスの父子関係は完全に決裂し、アークスは父への恨みを隠すことなく、父は息子への憎しみを抑えようともしていない。この親子関係が今更和解へとこぎつける事はないように見えるのだけれど、何らかの形でお互い納得する決着を迎えてほしいものである。
不幸中の幸いは、レイセフトの次期当主として育てられている妹のリーシャが今なお兄アークスに絶大な信頼と尊敬を抱いて、彼の真の実力を誰よりも信じているということか。
それがアークスをレイセフト家から完全に離れることを防いでいるとも言えるし、普通に見たら稀代の天才魔導師の道を順調に歩んでいるリーシャに、慢心や増長を許さず常に兄を意識して研鑽を怠らないというパワーアップ要素にもなってるんですよねえ。
その意味では、アークスが廃嫡されたお陰で婚約が破棄されてしまったシャーロットが一番割を食ってしまっているのか。とはいえ、廃嫡されたあとに助けられて親しくなったのだから、もし婚約者のままならと歯噛みするのも可哀想だけど仕方ない。でも、アークスの功績を考えると新しく家を起こせる可能性も高いみたいだし、改めて婚約という道もあるんですねえ。その前に王族の嫁がねじ込まれそうなのだけど、完全にそれに該当する娘さんがいますねえ、はい。

しかし、下手にえらいもんを作ってしまったお陰でその製作に追われるハメになるアークスくん12歳。現代日本なら義務教育の年齢で既に書類に埋もれて悲鳴を上げるブラック環境でのお仕事三昧である。まだまだ背伸びしたくて子供じゃないと言い張る年頃にも関わらず、アークスくんは自分子供だからアピールに余念がなく、そして誰も子供扱いしてくれなくて涙にくれる日々。
そんな時に、精霊ガウンから名指しで仕事のお手伝いをたのまれ、夜の王都を走り回ることになる。死の精霊であるガウンがアークスにああいう親しい態度を取るのは、アークスが転生者であり一度死を経験していることからなのだろうか。明らかに他の人とは接し方違いますもんね。見知った人には親しい態度をみせるガウンですけれど、アークスへのそれはちょっと種類が違う感じでしたし。
ガウンの依頼はちょうど、アークスの作った魔力計にも関わる事件だっただけにアークスも積極的に、って結果的にそうだとわかっただけで最初から積極的に協力はしていたのですけれど、スゥにシャーロットにリーシャとヒロインが全員出揃う今まで何気になかった展開でしたね。やっぱりこの三人がメインヒロインなんだなあ。
魔力計の開発や、それを狙う海外勢力との防諜戦で辣腕を見せたアークスに、否応なく国内外を問わず注目が集まり始める。魔力計とその開発者については入念な秘匿がされているものの、知る人は知っているし海外の要人も抜け目なくその優秀さを見逃さずに目をつけだしている。
これだけ存在感を示してしまうと、ただ茫洋と才能を垂れ流しにしているだけでは済まなくなってくる。今までは自分を無能扱いし、家族であるにも関わらず無慈悲に切り捨てた両親を見返すために奮起してきたわけだけれど、こうなってくると具体的な目標を先々に立てないと進むべき道を迷い出すはめになる。真剣に自分の将来像を考える時期が訪れようとしているのだろう。ただ、今の所は親を見返す手段というだけではなく、ただ好きなこととして魔法の開発を嬉々として勤しんでいるわけで、そこに明確な目的意識を持たすにはまだ彼には体験スべきことがたくさんあるのだろう。
それは、先々に波乱が待っている、とも言えるのでしょうけれど。