【クロの戦記 3 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです 】 サイトウアユム/むつみまさと  HJ文庫

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領地改革がようやく軌道に乗り始めたころ、突如皇女ティリアから舞踏会へのお誘いが届く。クロノは王都へ向かう準備を始めるが、ネグリジェ姿のエレナが夜這いを仕掛けてきて―「ご奉仕します。だから、帝都に連れて行って下さい」これまでの功績から徐々に注目を集め始めたクロノ。彼を王都で待っていたのは、異世界での養父、クロノを狙う騎士団長、渦巻く権謀術数、そして、レイラによるメイド姿のご奉仕だった!!シリアス&エロスな、大人気エロティック王道戦記、第3弾!!
義父となる親父さん、クロード・クロフォード卿がまた濃いキャラだなあ。名前似てるんで転生モノかと思ってしまう所なんですが、クロノって転生じゃなくて転移してこの世界に来てるんですよね。他の作品と被るだろうそのあたりの描写ばっさり省いているのですけれど。
そして異世界転移して右往左往している所をクロードに拾われて、紆余曲折あってクロフォード家の嫡子となっているのである。義父と地の文では表現しているけれど、公的には本当の息子と偽装してるし、何よりクロノも今となっては本当の父親のように思っているし、クロードの側もクロノの事を実の息子同然に可愛がってる。クロードのこと、濃いキャラと称したけれど、それ以上に現国王の即位時に起こった反乱で活躍し、蛮族の侵攻にも多大な戦功をあげた英雄であり、今や辺境を開拓して一大穀物地帯を築き上げた名領主であり、ある意味中央と距離を置いた辺境勢力の看板でもあり、何よりクロード本人が豪傑然とした人物で一筋縄ではいかない人なんだけれど、その人と協力関係や利害関係じゃなく、本心からの親子になってしまっているあたりにクロノの資質というか本質が垣間見えるんですよね。
本人、どこか卑屈なところもあるし助平だし決してコミュ力が高いタイプでもない。わりと傍目には侮られるタイプなんじゃないのかな。
でも、彼と深く関わった人たちはクロノに大きな信頼を寄せることになるのである。軍学校時代、仲の良いわけじゃなかった同級生たちとも何だかんだと今となっては打ち解けているし。学校では落ちこぼれだったのに、今や侯爵なんて立場になってるクロノにも壁を作ることもありませんでしたし。あれはよほどクロノの事をちゃんと認めてなかったら出来ない姿勢ですよ。
クロノのちゃらんぽらんにすら見えるやる気のない態度の奥にある責任感の強さを知れば知るほど、彼がどれだけ信頼できる人物かというのは自ずとわかってくるし、一方では英雄とかとは程遠いどこか頼りない姿は自分がなんとかしてやらないと、という気分にさせられる。でも、時々ゾッとするような冷徹な目で人を見て、物事を見下ろす姿を見ると侮るなんて真似は決して出来ない。
こうしてみると信頼され親しまれながら畏怖されるクロノの周りからの評価がよくわかる。
あの冷たい目に関してはクロノはまったく自覚ないみたいですけどね。滅多に他人に怒らない彼が怒ってると相当怖いみたいなんですよね。ただ怒る時の理由が馬鹿で愚かな考えで周りに被害を出しそうに為った時、が大概なのでその意味では指導者向きの怒り方なのですが。反省しないで同じことを繰り返すようなら無言で切り捨てる、みたいな怖さが確かにある。
なので、クロノの部下ってリラックスはしていても気が緩んだり好き勝手はまずしないのよねえ。フェイは今回、その洗礼を思いっきり食らってしまった、と。どれほど腕が立っても、馬鹿のままでは切り捨てられますよっと。まあ一度のやらかしではいお終い、とせずにフォローするあたりが優しいのですが。それ以前に、部下に配慮できる気の利いた面々をつけたり、と最初から最大限お膳立てしてあげてるんだから、これで失敗したらフェイの方が悪いですよねえ。いや、失敗するのは構わないけど、自分からぶち壊しちゃーそりゃ評価も下がるわなあ。

さて、ティリアの招待をうけて帝都で行わるという舞踏会に参加することになったクロノ。皇位継承者であるティリアが開く舞踏会なんだから、そりゃもう盛り上がる、のかと思ったらなんか内実が色々と残念だぞ!?
もうティリア自体がどこか残念皇女なところがあるので仕方ないのですが。色々と優れた面はあってもポンコツで考えなしの部分の方が多かったりするからなあ、ティリアって。
だからこそ、このタイミングで起こった政変でティリアがああなってしまったのは一概に悪いことではなかったと思うんですよね。ちゃんとした後ろ盾もなく、本人も短慮な面が強くあるティリアである。彼女が順当に皇位を継いだとして、果たして国の運営がうまくいったかというと相当疑わしい気がするんですよね。
貴族の腐敗や軍の機能劣化はかなり進んでしまっていますし、帝国という国そのものがそろそろ老朽化しているんじゃないか、という感じすらするわけで。この段階でティリアが女帝になったとして立て直せたか、というと。
今度の政変も、別に前から計画されていた策謀陰謀とかではなく偶然の産物でしたし。機会に乗じて動いた人たちが居たのは確かですが、それも悪意や個人的な野心からというわけでもなく。
宰相アルコルが積極的に動いてこの情勢を作り出していましたけれど、彼が黒幕や悪役というわけではなかったですからね。決まった黒幕がいるのではなく、ある種の警戒心や過去から精算出来ていなかった負債が反応してというもののようですし、その意味では個人や特定の勢力の思惑によるものではなく「時勢の流れ」によって起こってしまった、というのがよくある陰謀劇と違っていてちょっと面白いなあ、と思ったり。
まあ本作って、主人公であるクロノに限らず誰も彼もが思う通りにいかなくて、もがきながら泥沼に沈んでいく、というような全体的に何もかもが上手く行かないのを必死にあがく人たちを描く物語、という風情もありますし。
その意味では、物語そのものの泥沼化はまさにここから始まったと言えるのかなあ。

鮮烈な登場の仕方をして、強烈な存在感を見せた近衛騎士団のリオ・ケイロンも、まあヤンデレ系の人なんですけれど、この人も何もかも上手く行かないまま苦しみ足掻いていた所にクロノに出会って、彼に希望と救いを見た娘なんですよね。それで単純に救われるには、この娘の歪みは大きすぎてティリアにすげえ寝取ってやったムーブとかかましてるわけですけれど。
リオに限らずティリアも拗らせてますし、エレナはもう元から性格歪んでますし、その意味ではレイラがやはり一番献身的でクロノの責任を一緒に負おうとしてくれる娘に見えるよなあ。
メイドプレイ含む。
ただ、レイラには戦争の時クロノは負い目あるのがやや引っかかってるみたいだけど、まだ外に出していないクロノの内心だけでのことなのに、未だに引きずっているあたりにクロノの性格を感じるんですよね。それも含めてわかって受け入れている感が、レイラにはあるのでやはり一番感があるんですよねえ。

さあ、様々な思惑が複雑に絡んでの事とは言え、とばっちりはは現場に飛んでくるのが常の常。その一番前の方にいるクロノに訪れるのは、当然のように再びあの血と泥にまみれた戦争の季節だ。