【ぼんくら陰陽師の鬼嫁 六】 秋田 みやび/しの とうこ 富士見L文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

廃遊園地を覆う呪詛――嫁のピンチに(ぼんくら)旦那が駆けつける!

“北御門”を狙う呪詛により、廃遊園地へ閉じ込められた芹たち一行は、その現象の主と目されるミステリ作家・鷹雄光弦と対峙する。一方で、急いで芹の元へと向かう皇臥には、光弦との因縁に心当たりがあって……?

作中ではいつもセットで行動している式神の祈里ちゃんと護里ちゃんんだけど、表紙を一緒に飾ったのは初めてですか。いや、白蛇と亀の姿も可愛いのだけれどこの娘たちの人間形態もイラストで見てみたいなあ。
芹に小松菜フルコースを用意するよという餌に、わいろには……ちょっとしかくっしません! と、見事に屈する護里ちゃんとかほんともう可愛すぎるんですけど。ここ、本巻の最萌ポイントでありました。
ちなみに、あとでお姑さんも密かな好物だったという洋食で同じようにわいろに屈しているあたり、お義母さんちびっこと同レベルですよ、と言いたくもあり、とりあえず餌で釣ろうとするこの嫁ってば、と呆れたり。いや、ちゃんと効果覿面なんで食べ物で釣る、は正解なのでしょうけれど。

ともあれ、今回は本間さんに笑ちゃんという一般人も一緒なので、芹ばかりを守っていられず彼らの事も芹から頼まれることで、いつも以上にピリピリとしていた祈里ちゃんと護里ちゃん。本間さんたちには祈里ちゃんたちの事は話していないのと、式神である彼女らは笑ちゃんたちには見えないので祈里ちゃんとのやり取りは八城くん以外の他の二人には内緒にしていたのだけれど、本間さんと笑ちゃんなら祈里ちゃんたちのこと話しても大丈夫そうなんですけどね。

ともあれ、鷹雄光弦によって遊園地の廃墟から出られなくなった一同。遊園地の周囲には浮遊霊の有象無象が集まってきていて容易に出るわけにもいかない、という理由もあるので、とにかく言うだけ言って姿を消してしまった鷹雄を探したり、この遊園地の様子を調べるために歩き回るのだけど。
その間にも、ふとした瞬間観覧車のゴンドラが次々と落ちていくんですよね。遠目にもどこからでも見える観覧車から、ゴンドラが落ちてすごい音が聞こえてくるの、けっこう怖いですよ。
まだ最初の頃は夕方前で明るかったために精神的に余裕があった、逆に夜になるとヤバいかもというのは当人たちのコメントでしたが、そう言えば芹と元々の霊感持ちの八城くんだけじゃなく、本間さんも笑ちゃんもそれぞれ事件で北御門にお世話になった関係でも有り、心霊現象の経験者でもあったんでしたっけ。
それもあってか、変にパニックにならずに意識して明るい雰囲気を欠かさないように皆が振る舞ったお陰で、閉じ込められたとはいうもののそれほど追い詰められたり恐怖にかられたり、という空気にならずに済んだのは幸いでした。いや、努力してのことですから幸いではないのでしょうけれど。
特に笑ちゃんは中学生なのに、むしろ率先してムードメーカーやってくれて明るくしてくれてましたからね。祈里ちゃんと護里ちゃんというガーディアンがいることを知っているのは芹と八城くんだけで、本間さんと笑ちゃんは知らないのを思えば二人共ほんとよく頑張ってくれたものです。
本間さん、こうしてみたら責任感も強いし頼りになるのになあ。
まず腹が減っては戦はできぬとばかりに焼肉パーティーをはじめてしまうあたり、みんな強いですw
しかし、得体の知れない状況に陥っているのも確かで、芹も不安は尽きない。その芹の不安の理由の大半が、側に皇臥がいないということ。陰陽師としてはぼんくらもいい所で、鷹雄光弦が片鱗だけでも垣間見せたその陰陽師としての実力からすると、比べるのもおこがましいくらい。そんなぼんくらな皇臥が来たところで、鷹雄光弦と対決なんて事になっても果たして役に立つのかどうか。それどころか、北御門家そのものを目の敵にしているかのような言動の鷹雄光弦の前に、皇臥が来てしまうのは余計に状況を煽るはめになるかもしれない。
それでも、いつも何かあった時には側にいた皇臥がいないという事が芹にとっては心許ない事のようで、折に触れて皇臥がいないことへの不安がこぼれだしてくるんですね。
普段から気丈、どころか何があっても動じないような肝の太い所をみせる芹としては珍しいくらいの姿で、それだけ日頃から何だかんだと皇臥の事頼りにしてたんだなあ、と。それだけ心寄せてたんだなあ、と。
これもう、皇臥はもっと自信持ってもいいんじゃないでしょうか。鷹雄光弦から皇臥の事を貶されたら、そりゃ実力はぼんくらかもしれないけれど本気で怒って、思いを馳せる芹の帰りたい家はもうあの小煩いけど可愛いお姑さんと式神たちが待つ北御門の家で。
契約婚なんておこがましい、もうほんとの家族じゃないですか。

そんな嫁のピンチに、慌てふためいて必死に幽霊だの呪詛だのが蔓延している遊園地周辺に無理やり突っ込んでいく皇臥が、なんとも可愛らしかったです。この兄ちゃん、いつもない余裕がいつもにも増してなくって、でもその懸命さが、芹を心配する様子が健気だし一杯一杯な様子が可愛げたっぷりで、ほんと可愛い男の人です。今回はよく頑張った。いやなにかして頑張ったかというと慌ててすっ飛んできただけのような気もするけれど、そのすっ飛んでくる一生懸命さがこの際は大事なのである。

しかし、すべての黒幕だと思われた鷹雄光弦が、なんか思ってたのとは全然違ったどんでん返しの展開は、まったく予想外でした。いやだって、完全にそっち系のムーブかましてたじゃないですかー。八城くんが喧嘩腰になるのも仕方ないですよ。祈里ちゃんと護里ちゃんも普段以上にピリピリして、鷹雄光弦には敵愾心剥き出しでしたし。
まさかそういう因縁だったとは。なんかこう、無闇に攻撃的に見せてしまうところとか母親似な所あるんじゃないですか、この人w

とはいえ、すべてがまるっと解決したわけではなく、むしろ余計に闇と謎が深まった感もあり、芹の身にまだ何か秘められたものがある事が発覚したわけで、本番はむしろこれからなのかもしれない。
すでに、芹の身に何かが起こり始めているわけですし。今回なんだかんだと何もしてない皇臥くん、いや駆けつけてきてくれただけで芹としては好感度アップ、なのかもしれないけれど。ともかく次からはつきっきりで芹の側にいて、旦那らしく嫁のために頑張らないと。