【終焉ノ花嫁】 綾里 けいし/村 カルキ  MF文庫J

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拘束を、隷属を、信頼を、貴方に――約束しよう、貴方のために全てを殺すと

突如出現した脅威【キヘイ】が世界を蹂躙して幾百年。人類は対抗手段として魔導学園・黄昏院を設立し、日夜戦闘が繰り返されていた。
運命の日、魔導研究科所属のカグロ・コウは【キヘイ】の死骸回収のため、とある遺跡に出向き、不運にもその命を散らした……はずだった。【キヘイ】の少女に救われるまでは――。
「初めまして、愛しき人よ――我が名は【白姫】。これより先、私は永遠に貴方と共にあります」
物語の中の騎士のように、御伽噺の中の姫のように、目覚めた少女は告げる。それが終わらない地獄の始まりになろうとも知らず――。
『異世界拷問姫』の綾里けいしが贈る、希望と絶望が織りなす、感動のダークファンタジー!

「キヘイ」なる存在と結ばれた特別な唯一無二の一組、というわけじゃないんだ、主人公と白姫のカップル。秘されているとは言え、丸々一クラス分の人数、キヘイと「結婚」した人間がいるわけね。それも、白姫のような喋れる人と変わらぬ姿のキヘイのみならず、魔獣型としか言いようのない甲型・乙型・特殊型のキヘイとも「結婚」している生徒たちが、二十数人。
なので、コウと白姫がただ二人きりの特別な存在として孤独な戦いを繰り広げるのではなく、ちゃんと同じ境遇の仲間たちと一緒に戦い、一緒に学校生活を送る学園モノとしての体も整っている。
同時に過酷な絶滅戦争の只中、その最前線を担う最強のクラスのメンバーとして、全員戦う覚悟と死ぬ覚悟が決まっている子たちでもあるのだ。だから、彼らは穏やかで朗らかに日常を謳歌し、その上で戦うことを厭わない。その末に死ぬことすらも受け入れている。
そんな仲間たちなので、白姫と出会いこのクラスに配されるまで、周囲から白面と侮蔑されるほど感情の動きが鈍い主人公でも全然浮かずに馴染んでいる。彼をありのまま受け入れる彼らキヘイとの婚姻者だけで編成された特殊部隊「百鬼夜行」の面々の精神性は、やはり普通の生徒たちからは逸脱しているのだろう。主人公カグロ・コウのように。だからこそ、仲間意識もまた強く結びついているのだろうけど。
コウとパーティーを組む面々もまた個性的なんですよね。ミレイさんだけは、個性的の方向性が一人だけ明後日の方向にいっちゃってる気もしますけれど、彼らとは日々の訓練と日常生活を共に過ごすうちに掛け替えのない友人となっていくのである。みんなの兄ちゃんという感じのヒカミと、ミレイのなんか幼馴染み感のある距離感は、本人たちは全くその気ないようなのだけれど傍から見てると間に入れない雰囲気があって、ちょっとこれどうにかなるんじゃないかしらと期待してしまうくらいでして。
ただ、全体的に話の展開に余裕がなくてイベントがとにかくギュウギュウに詰め込まれてしまっていた感がある。コウと百鬼夜行のクラスメイトたち、特にヒカミたちと交流を深めて得難い友人たちとなっていく描写こそ丁寧に描かれていたものの、その中の個人個人と人間関係を深めていくだけの猶予はなかったので、ほとんど掘り下げるまでいかなかったんですよね。ヤグルマくんが変な道に目覚めそうになってたり、と気になる要素はタップリあったのに。
それどころか、肝心の白姫との描写もコウと二人の関係の深さを実感として感じられるだけの積み重ねが、ちと物足りなかった気がする。ほぼはじめから、お互いが絶対という密度の濃い所からスタートしていて、それは全然構わないのだけれどその関係の深さを色付けする様々なエピソードを体験する間もなく、クライマックスに突入してしまったような。
なので、二人の関係を核として物語の根幹に横たわる真実や、様々な謎が怒涛のように明らかになり、それまでの前提などがひっくり返った時も、ひっくり返す台の上に乗った事実に重みを感じるだけの積み重ねが少なかったので、衝撃が軽く済んでしまった所がある。永遠のような地獄、もその地獄の辛さを痛切に感じるまでの削れていく失う痛みが、軽かったんですよね。
その意味では、この内容を一巻に詰め込んだのはちょっとバタバタしてしまった感があります。もしこれ、3巻とか5巻とかの重ねを経て、それだけ人間関係に想いを重ねてしまっていたら、衝撃にのた打ち回るはめになっていたかも。
ササエと紅姫とか一番割食って、ほとんど最強という以外どういうキャラかも見せて貰えなかったし。紅姫チャンなんぞ、ほとんど喋らんかったもんなあ。ちなみに、超寡黙なはずのササエはわりと喋ってたぞw
とはいえ、ここまでを全部プロローグにして、本格的にスタートするのは次から、というのであればとんでもないところまで突っ走って行きそうなだけに、まだまだ期待はしていきたい。
すでに2巻も9月に準備されているようですし。