【異世界、襲来 02.王の帰還】 丈月城/しらび  MF文庫J

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

激化する対異世界革命的戦記。舞台は関西へ――

水上租界《那由多》に辿り着くもその矢先、分断された一行。ユウとアインは大魔術師クアルダルドの《ポータル》に囚われ、伊集院たちは《那由多》を統治している亡命エルフの理事会と接触していた。理事会と国防軍との間に生じる不穏な空気を感じながらも、久々の文化的な生活を満喫する伊集院たち。一方のユウとアインはクアルダルドの歓迎に戸惑いつつ脱出方法の模索を開始する。そんななか、ユウは三号を継承することに対して抵抗を感じていた。皆の希望となって戦うこと、ヒーローとしての資質に対して悩み始めた彼が出した答えは……。丈月城×しらびによるヒーローVS異世界の革命的戦記、怒濤の第2巻! 今、王は帰還する――。


正義のヒーローになんかなれない。国が崩壊してからこっち、人間の、大人の醜い行いに何度も痛い目を見て、嫌な目にあわされ、傷つき続けて。きっと彼は失望していたのだろう。
そんな嫌な人たちまで、なんで身を挺して守らなければならないのか。それは至極当然な気持ちだ。
ユウは今、アスラフレームという誰にも有無を言わせない圧倒的な力を持ってしまった。それを如何ようにも振るえるのが今の彼だ。そして、着装者3号という偶像に人々は期待を重ねヒーローが助けてくれると願い信じている。
その期待に応えることが嫌だからこそ、ユウはずっと不調だったんですよね。そこからどうやって折り合いをつけるのか。
丈月さんの描く物語の主人公は、みんな精神的にタフ、を通り越してどこかしらに突き抜けたメンタルを持つある種の超越者でもあり、自分の行動の芯の部分に不動の揺るぎないものを持っている完成した人間でも有りました。
だから、ユウが普通にこうして悩むというのはいっそ新鮮ですらあるんですよね。分不相応の力を手にしてしまったものの、当たり前の苦悩。
尤も、そこで等身大の少年らしい答えを出してしまうのではなく、ある種の突き抜けた着地点へと到達してしまうところが、さすがというべきなのでしょう。
仮面の英雄、という正体不明で個人の特定がかなわない存在であるからこそ、誰もが望む偶像になり得る。ユウ個人が受け入れられない理不尽も、着装者3号という英雄ならば呑み込んで守ることが出来る。
あれほどの力を得ながら、その力と自分とを分けて考えることにした、という事なのだろうか。その在り方は戦士というよりも、まさに王。個として威を発する存在ではなく、集の意を束ねる王様という座こそが、ユウが継承したものだ。
同じ王……門主たるダルヴァの大魔術師たちとはまったく正反対の在り方なのだろう。
それに着装者3号はユウが身に纏うとは言っても、ドローンなどの運用含めてアインや伊集院などの仲間たちのサポートがあってようやく万全の力を振るえる存在でもある。ユウ個人ではなく、仲間たちとともに着装者3号というヒーローを創り上げ、形成する。そこにはエルフの賢人たちの支援も必要で、国防軍の軍人たちや市民の協力だって必要だ。そうして、バラバラだった衆を束ねて一つの意志に基づく集団となっていく。
今までユウたちが遭遇してきた人々は、国や組織の統制を失い無秩序にバラバラに動き回り、末端の人たちに負担を押し付けながら、バラバラの方向を向いたまま小さく固まって結局千々に砕けて滅びようとしていた。
だからこそのとにかく皆を守るのだというヒーローであり、希望を集めることで皆を束ねる王という偶像だったのだろう。
かつてユースのサッカープレイヤーだったユウが、途中で野良サッカーの試合に参加するシーンがありましたけれど、そのサッカーのシーンこそが示唆でもあったのでしょうね。チームの指令塔として、その意図を理解する者も理解しない者も含めてまとめあげ、誘導していく姿。パス出しに徹するようで、最後に自分でゴールを決める戦術。チームで唯一ユウの意図を理解して支援してくれていた最大の味方であった人物が、現実ではユウたちの今を一番理解しておらずぶち壊そうと動いてる国防軍の佐久間だったというあたりなど。
何事も表裏一体。それをどう呑み込んでいくか。元々の資質ももちろんあったのでしょう。アインが見込んだのもそのあたりでしょうし。しかし、苦悩する少年に道筋をつけてくれたのは、なつきさんなんですよねえ。この傾奇者な女子高生、年齢的にも姉御になるのか。その明るい性格とは裏腹に、あっけらかんと喋ってくれますけれど国家崩壊からこっち彼女がくぐり抜けてきた修羅場は、ただの生き死にの場どころではなく、津波のように押し寄せてくる人間の悪意そのものを切払いながらのすさまじい経験だったはず。ゾンビ映画にたとえてますけれど、相手は生身の人間だったはずですしね。
それでこれだけ明るさと豪快さを保って、ユウたちに対してもどんと構えてくれているのですから、頼もしいなんてものじゃないんだよなあ。女子高生というキャラの枠組みから完全に中身が溢れかえってますよ。
彼女自身、もうヒーローそのままで偶像になりそうなものなんですけれど、敢えてこの娘は戦士の方向に突き進むのか。まさかこんなに早々に強化イベントが来るとは思いませんでしたけど。これ、実質ユウと同格なんですよね。ちょっと特化しすぎではあるんでしょうけど。
アスラフレームって、全部スーツタイプだと思ってたので、これは予想外だった。
アリアも何気に重要なポディションであることが発覚しましたし、アスラフレーム12体が全部揃うのそれほど遠くはないのだろうか。何体かは情報出てますし、最後は別の着装者も出てきましたし。
まあ、全部が味方ってわけじゃないのでしょうけど。一致団結して最強の敵にあたろうか、というシチュエーションで速攻嬉々として同属で潰し合いの内戦はじめたカンピオーネは忘れんぞw