【ワールドエンドの探索指南(あるきかた)2】 夏海 公司/ぼや野  電撃文庫

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“学園”を脱出したボクとヤヒロは、ミハシラを目指し、無人の街を進んでいた。しかし、進むにつれて凶暴さを増すミサキの出現や、物資の消耗に2人だけでの探索へ限界を感じ始める。そんな中、旧い前線基地の“工場”が近いと知り、補給のためにかつて“学園”が放棄したその施設へと向かうことに。そこで待ち受けていたのは、別拠点“教会”の遠征隊のメンバー、ツクシだった。たった一人で“工場”に立てこもるツクシに、敵対心を露わにするヤヒロ。他の探索メンバーの有無や、一人で見張りに立つツクシに不信感を持ったボクは、一計を案じ―。

こっれっはっ、気づかんわー! 分からんて!
視覚情報に完全に騙された。いやこれはちょっとズルくないですか? もう何も信じられないw
いやでも凄いのはタイキですよ、これは。ツクシとの出会いから合流までを再確認してみたのですが、こうしてみるとヤヒロの反応は正しい、というか普通のものだったんですよね。一巻では性格的には大雑把というか鷹揚で、他人から信用されていない事この上なかったタイキの事も端から信じて命預けてくれるような娘だったわけですよ。それが、この二巻ではやたらと刺々しいし、ツクシに対して警戒しまくるし、ああも他人を寄せ付けまいとするヤヒロはこれまでの印象とはまったく別だったので、キャラ変わった? と思うほどだったのですが……。いやこれは、ヤヒロでもそう反応するよね。むしろ、よくタイキの言うことを聞いてくれたというか、それだけタイキの事を信頼していたという事なのか。読んでいる最中は言うこと聞いてくれないなあ、とすら思っていたのだけれど逆じゃないか、実際は。
だいたいこの場面、反応というか対応がおかしいのは絶対タイキの方である。ってか、ナンナのコイツ? あの段階のあの場面で、あの咄嗟の状況でなんであんな冷静な対応が出来るの?
あれは、もう最初から可能性としてそれが「ある」と頭のどこかで考えを据え置いていなければ出来ない反応ですよ。だから、読んでいるこっちはまったく違和感に気づかなかったし、ツクシもまた微塵も気づかなかったわけだ。
あれ、タイキが当たり前のような顔しているから、ヤヒロの過敏な反応が単なるよそ者、一度攻撃してきた見知らぬ謎の人物、に対する警戒にしか見えなかったんですよね。
ヤヒロがそういうタイプの人間ではない、と知らないツクシからしたら、むしろヤヒロの方が当然の態度に見えたかも知れない。
しかし、そう考えるとタイキはほぼこの段階で、自分たちの目の前に聳えている「工場」の正体についてある程度当たりをつけたんじゃなかろうか。
さすがに中で何が起こっていたかについては、ツクシに聞くまでは知らなかっただろうけれど。
でも、それも聞いた段階で起こっている状況の大まかなところ、或いは原因の一番根っこの部分は気づいたんじゃなかろうか。
ヤヒロがぶっ倒れたあとのツクシが語ってくれたこれまでの体験は、その結論を補強し想定を具体化するための材料になったのだろう。でなければあれだけすぐに、教団側の探索チームが壊滅した、もうホラーじゃね?というようなSAN値直葬なケースへの対策を、お披露目出来るとは思えない。
いやほんとこいつどこまで見えてるんだ? ツクシに対しては勘働きを間違えたヤヒロですけれど、まず外さないその感性がタイキに対して全幅の信頼を寄せているの、よくわかったわ。
ヤヒロに関しても、一度ツクシに助けられてからのあのツクシへの打ち解けっぷりは、あれはあれで凄いのですけれど。いや、あれこそが本来のヤヒロというべきなのでしょう。

冒頭では、拠点を持たず流離うしかない二人きりでの探索に限界を感じているようでしたけれど、こうしてみるとこの二人と一緒に行動するというのは、能力云々とはまた別にこの二人の感性というか価値観というか、それについていける人でないと無理なんじゃなかろうか。
その意味では、ツクシという少女はついていけるか云々じゃなくて付いていってしまうというか、二人のハズレた所をわざわざ気にする余裕がないタイプだった気がするので、案外相性も良かったんじゃないだろうか。あの手先の器用さや雑務能力はヤヒロとタイキの二人にはない能力でしたしね。打ち解けてからのヤヒロのツクシへの可愛がりっぷりも、かなりお気に入りみたいでしたし。

これはツクシという少女の意地とも誓いとも取れる戦いの跡に、タイキとヤヒロが訪れたお話であり、その意志の強さにあらゆる意味でタイキたちが救われた話でもありました。タイキが作中でツクシに語っていたことですが、彼女が居なければまず間違いなく二人は教団の探索班と同じ末路を辿ったでしょう。あ、いやどうだろう。ああ言ってますけれど、タイキなら致命的になる前の段階で踏み抜かずに後ろに下がれたような気もしますけれど。
でも、ツクシが語ってくれた情報がなければ、彼女の存在がなければ、まずこの「工場」で何が起こっていたかの全貌はつかめなかったでしょうし、ひいてはこの世界の真実の一端を捕まえる事も叶わなかったでしょう。
そうこれ、この終わりを迎えたような世界の正体に、深く踏み込む展開でもあったんですよね。タイキは表に出ている部分は氷山の一角で、まだ相当の想定から推測からを既に頭の中で広げているんだろうな。
最後の最後で湧き出るが如くまた謎が吹き出てきましたけれど、次回でその深奥にたどり着けるのか。……道連れが、増えてくれると思ったんだけどなあ。


シリーズ感想