【ストライク・ザ・ブラッド 22.暁の凱旋】 三雲 岳斗/マニャ子 電撃文庫

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世界最強の吸血鬼と監視役の少女の物語 ついに完結!

異境(ノド)を制圧し、咎神(きゅうしん)カインの真の遺産である六千四百五十二発の眷獣弾頭を手に入れたシャフリヤル・レン。眷獣弾頭の圧倒的な威力の前に聖域条約機構軍の艦隊は壊滅し、三真祖たちも沈黙する。
日本政府は異境への『門(ゲート)』を閉じるために絃神島の破壊を決断。雪菜と那月を要石のあるキーストーンゲート最下層に派遣する。自らの手で絃神島を沈めることに苦悩しつつも、忠実に任務を果たそうとする雪菜。そんな雪菜の前に吸血鬼の力を取り戻した古城が立ちはだかる。
そのころ異境では、謎の仮想空間に囚われたアヴローラが、モグワイと名乗る怪しいぬいぐるみと接触していた―― !
世界最強の吸血鬼が、常夏の人工島で繰り広げる学園アクションファンタジー、ついに堂々の本篇完結!

いきなり雪菜の夜這いからはじまるという最終巻。この中学生すけべえすぎる。さすがに夜偲んできて襲いかかってくるようなヒロインは……あれ? わりと過半数に達しているような。
というわけで、長く続いたこのシリーズもついに完結。第四真祖の誕生の真実、咎神カインとは。三人の真祖たちの意図とは。などなど、シリーズ通して紡がれてきた物語や世界観の根底を担う設定や伏線などもほぼほぼキッチリと明かされたんじゃないでしょうか。総じてカインと彼を殺す為に生み出された初代第四真祖との友情の物語であり、その後始末を現代で古城くんが一生懸命に頑張るはめになった、と。まあ彼に言わせれば、こいつは自分の戦争(ケンカ)だっ、てなもんなのでしょうが。
しかし、モグワイはただのAIじゃない、とは最初期から感じてはいたんだけれど、彼を作った浅葱が天才すぎるもんだから、浅葱が作ったAIなら妙に浅葱からすら独立した個性や意志を感じてもおかしくはないよね、という微妙なライン上を走ってたんでどうにも判断つかなかったんですよね。最後まで。
その御蔭か、なんかあるかもとは思いつつも正体云々にまで想像が及んでいなかったんですよね。なので、アヴローラの前に出てきた段階でようやく「あれ?もしかして」と思ったくらいで、結構素直に驚きましたよ。そうなると浅葱のカインの巫女って思いの外直接的な意味でもあったのか。

ラストという事で総力戦であり、シリーズ通して最初のヒロインであり最後のヒロインでもあったアヴローラ、囚われの姫君との再会でもありました。って、折角のアヴローラとの再会シーン、そんなんでええんかい! いやもう古城らしいと言えば古城らしく、アヴローラらしいと言えばアヴローラらしいんだけど、もっとこう感動の再会とは行かなかったんだろうか。ほんと、長きにわたる別離からの邂逅だったというのに、唯里のツッコミも冴え渡りますわ。何気にヒロインの中で随一のツッコミ役になってしまった感のある唯里さんである。普段は一番温厚でツッコミとかには程遠い人格者のはずなのに、こんな子に何をさせるんだか。
しかし、唯里さんは仄かに古城に対して「イイなあ」という淡い気持ちを抱いていたからいいものの、むしろ父親の方の牙城の方に惹かれていた志緒や、古城に対しては特になんにも思ってなさそうな妃崎霧葉まで血の伴侶にしてしまってよかったんだろうか。霧葉さん、あれはツンデレ、てわけでもないだろうし。
というわけで、正式な12人の花嫁は叶瀬夏音、江口結瞳、ラ・フォリア・リハヴァインに仙都木優麻、藍羽浅葱、煌坂紗矢華、香管谷雫梨・カスティエラ、羽波唯里、斐川志緒、妃崎霧葉。んで、アヴローラ・フロレスティーナと姫柊雪菜。これでちゃんと12人。自前の眷獣を持っているアスタルッテは血の伴侶には慣れないものの、魔力連結はしているので事実婚状態。十三人居る!?
一度、暴走した古城を元に戻すために招集された12人の花嫁たちだけど、あの時は結局血の伴侶を集めて儀式して、という通常の流れにならなくて、暴れる眷獣ヒロインたちがぶん殴って正気に戻すというそれどうなの? 嫁怖い、というかなり力づくな流れで片が付いてしまったので折角の花嫁設定ががが、という所があったのですけれど、この最終盤になってもう一度仕切り直して血の伴侶たち12人の想いと力が合わさって、古城復活、という王道の流れが来るとは思いませんでした。ベタだけど、この整えられた流れは美しさすらあるよなあ。
そしてメインヒロインが12人いて誰一人として個性埋没していない、というのが何気に凄い。この中では煌坂とカス子が圧倒的イジラレ役になってしまいましたなあ。まあ最初からですけど。
煌坂がもう、チョロ坂さん、チョロいさんの面目躍如とイイますか、結瞳の夢魔の力にアテられてたからといって本音ダダ漏れすぎでしょう。どれだけ古城のこと好きなのを拗らせてるんだ、この愛人体質娘。おまけに、相手が最強の夢魔だからといって簡単に操られすぎである煌坂さん。魅了かけた結瞳ですらちょっと引くくらい完璧に洗脳されちゃってたし。普段よりスペック発揮してるし。なんかもう、あらゆる方向にチョロいよねこの人w
そして、古城だけじゃなくて多方面からも変なあだ名や呼び名つけられてキャンキャン鳴くはめになってるカス子さん。那月ちゃんにパッパラ修女騎士(パラディネス)とか呼ばれたのにはこっちまで吹いてしまった。なんかもう誰も雫梨とか呼んでくれてないんですけどw
浅葱はもう女帝としての貫禄が根付いてしまっていて、今回何気に一番ヒロイン的な活躍をしていたのって妹の凪沙だったんじゃないだろうか。結局、凪沙こそがアヴローラをはじめとした人造吸血鬼たちを救うための鍵となる存在だったわけですし、巫女としての役割をいかんなく発揮して本来手の届かない場所から、アヴローラに手を差し伸べる姿なんぞは美しさすらありました。この子、現在はやかましい中学生の小娘なんですが、将来美人になるんだろうなあ。父親と母親がアレなので、あんなふうにはなってほしくないですけど。
そして、本命の雪菜はというと。結構今回置いてけぼりというか仲間はずれというか。獅子王機関のエージェントという立場もあったので、一連の危機の中で絃神島の住人として動く古城たちとどうしても距離を置かないといけない、という所もあったのですけれど。
下手にどっちかを選べ、みたいな選択肢を突きつけるのではなく、監視役という雪菜のアイデンティティを最後まで尊重してあげたのは、古城くんらしいなあ、と思いつつ、そこはもっとグイグイと押して本当の意味で自分のものになれ、みたいな事もちょっとは言って欲しかった所もあります。
彼の朴念仁は結局最後までゆるぎもしませんでしたからね。いや、案外雪菜含めてかわいいかわいいは連呼していたような気もしますけれど、恋愛的な意味で古城がデレたかというと……最後まで変わらんかったもんなあ。個人的にはもう一声、古城くんの方から恋愛感情に目覚めた所を見せてほしくはありました。というか、責任取るところ?
まだまだ古城くんの長い物語は続くようで、この天部編は序の口、みたいなことを未来から来たあの子たちがこぼしてましたけれど、ほんと全部片付いて終わったー、という感じは全然しないんですよね。
わりと今までと同じような感覚で一つの事件が幕を下ろした、んですぐにまた新たな事件が……と続きそうな感じで、あんまり最終巻という感じしないんですよね。そのお陰で、長く長く親しみ楽しんだシリーズが終わっちゃった、という寂寥感も味わわずに済んでいる、とも言えるのですけれど、もうちょっと区切りの感覚も欲しいので、後日談的とかスピンオフ的なものは出して欲しいなあ。
ともあれ、9年近くにも渡って長らくお疲れさまでした。うん、ひたすら楽しかったなあ。