【りゅうおうのおしごと! 13】 白鳥士郎/しらび GA文庫

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五人の少女が集う最後の一日。約束の13巻!

三段リーグ最終日の翌日。
『史上初・女性プロ棋士誕生!』の報に日本全土が沸き立つ中、雛鶴あいは関西国際空港を訪れていた。
親友の水越澪が海外へ旅立つのを見送るために……沈みがちになる気持ちを隠して明るく振る舞うあい。
意外な人物との再会をきっかけに、事態は思わぬ方向へと動き出す。

「最後に一つだけお願いがあるんだ」

同じ頃、あいの師匠である八一は東京の病院にいた。満身創痍で眠り続けている銀子の傍らに……。
あい、澪、綾乃、シャル、そして天衣。五人の少女が集う最後の一日を描いた、約束の13巻!!
飛び方を覚えた雛鳥は今、大空へと羽ばたく――
水越澪、この娘まだ小学生なのだけれど、既に一廉の人物よなあ。
ドラマCDなどの特典を小説に書き下ろした短編集であり、JS研の少女たちの別れを描いた13巻。
短編のほうがもう酷くて、なにがって師匠のロリコンがガチすぎて、この竜王ガチでロリコンなんじゃないのか!? と、疑いたくなるのですけれど、よくよく見るとどちらかというとシャルちゃん限定なんですよね。特別扱いはシャルちゃんのみ! つまり、こいつロリを通り越してペドなんじゃないかと。本来なら年齢的にロリ歓迎、のはずのあいちゃんまで真性であるのを垣間見せてしまう師匠に、かなり必死になって矯正を促しにかかってますし。

まあそれはさておき、本編はJS研の仲間でありムードメーカーであり皆をつなぐ鎹でもあった水越澪が、親の仕事の都合で海外に移住する事になり、その見送りにJS研のみんなが空港まで小学生だけで訪れる、というお話。保護者となる面々はちょうど皆、銀子のプロ昇段と八一の帝位戦のために上京することになり、同世代だけで別れを、という塩梅になってたんですね。ある意味、大人の介入を許さずに子供たちだけで彼女らの世界だけで、本心からぶつかりあえる最後の機会だった、という事なのでしょう。
折しも、あいは銀子がプロになるという決定的な差を見せつけられると同時に、どうやら八一と師匠が付き合い始めたことも察していて、落ち込んでいる最中でした。そこにトドメと言っていい親友であった澪との別れが重なって、かなり凹んでたんですよね。
この娘たちはまだ小学生なのですけれど、彼女らの将棋に対するスタンスはもう遊びじゃなくなってる、というのは10巻での彼女らが主役となる話で見せてくれていました。
でも、それからここまで銀子の奨励会での話を中心に描くことで、将棋に生きる棋士たちは真剣とか本気を通り越して、もう魂まで将棋で染め上げられるような人生そのものを将棋で埋め尽くすような、存在自体が将棋のためにあるような、そんな壮絶すぎる生き様を見せつけてくれていました。
果たして、彼女たちはどうなのでしょう。まだ子供だから、小学生だから、というのは将棋に関しては言い訳にならないんですね。将棋という生き方は、既にもう小学生の頃には自分自身で刻み込まなければならない。それをすぎれば、遅いくらい。あいですら、デビューは遅かったと言えるくらいなのですから。
また奨励会では椚 創多が既に小学生でありながら、壮絶な闘争をくぐり抜けて恩人とも尊敬する人とも兄とも慕う人の首を泣いて切り落とすような、棋士としての生き方を体現している。
遅いなんて事はもうないのです。
彼女たちの中で、唯一天ちゃんだけは、最初から既に魂は棋士として完成していました。彼女はもう既に棋士として生きていて、死ぬまで棋士として在り続けるでしょう。
そんな彼女が何気に一番認めていたのが、澪だったんですね。もし、澪以外のJS研の他の誰が旅立とうとしていても、果たして天ちゃんは見送りにきたでしょうか。いや、この娘なんだかんだと優しいから見送りくらいは来るかも知れませんけれど、なんだろうあんな風に相手を対等に認めて、選別を送るような関係になれていたのは、澪だけだったような気がします。
ってか、天ちゃんが小学生の段階で既にイイ女すぎて、この娘相手だとロリコン扱いにはならないんじゃないでしょうか。精神年齢が大人すぎるし、中身がイケ女すぎる。なんなんだこの生き方あり方から尋常じゃなくカッコいい小学生女子は。正直、銀子の抜けた後の女流棋士の界隈を、天ちゃんが席巻を通り越して蹂躙していくの、目に浮かぶようなのですけど。

あとで澪が見せた、将棋に対するスタンスは、本物でした。将棋に生きる、呼吸が出来なければ死ぬように将棋を息を吸い息を吐くように指し続ける。そんなそれ以外のすべてを投げ打つような、将棋へののめり込みをこの娘は見せてくれたんですね。
もうこの娘は、本物の棋士だったのです。たとえ海外に行ったとしても、彼女は何らかの形で女流棋士として戻ってくる、それを感じさせる本物の本気でした。
いや、作中での表現を借りるならば「強烈な努力!」というものでしょうか。

シャルはまだ幼く、綾乃は周囲と比べての自身の才能への疑問を抱き、そしてあいは将棋と出会った時間の短さ、経験の浅さから、まだ「うつつを抜かす」状態だったと言えるでしょう。
あいに関しては、ずっともどかしくもあったんですね。この娘の才能はとびっきりで、完全に人類とは違う将棋星人の構造をしていて、しかしその魂は将棋に染まっていなかった。
これまでも、将棋に対して本気になろう、と思うだけの痺れるような体験を、燃えるような熱量を、死にたくなるような悔しさを、感じてきた経験してきたのは確かです。そのたびに、この娘は将棋に対して深く深く向き合い出していたと思います。真剣だったでしょう、本気だったでしょう。
でも、まだ将棋に魂を侵され切ってはいなかった。才能とは裏腹に、その心根は線引されたコチラ側。まともな「人」の領域の側に立っていた。
そんな彼女に対する澪の見せたくれた生き様は、あいに語りかけてきた別れの一局は、言葉に尽くせないほど沢山の、想いを届けてくれたのでした。これほど強烈な叱咤激励を、他に自分は知りません。小学生の女の子が、同じ小学生の女の子に送る激励としては、あまりにも強烈でした。人生のターニングポイントとすら言えるほどの重さ。生涯の生き方を決定づけるほどの、強い強い意志の付与。
凄いなあ、人間年齢なんて関係ないですよ。心からの叫びは、こんなにも深く強く響くのか。
友情の真髄とは、まさに斯くの如し。

少女たちの、旅立ちの時である。これは彼女たちが一人の棋士として立つ日であり、師匠の庇護からも飛び出す巣立ちの日ともなるのでしょう。


さて今回は感想戦はなく、銀子が眠る病室での一幕である。
とりあえず、お燎と万智さんのナースコスプレは何だかんだとエロすぎやしませんかね?
ただ二人の騒がしさは、あれはあれで清涼剤なんですよね。ライバルとして友人として、この二人は得難い人なんだよなあ。でも、プロになるともう銀子は対戦出来ないのか。
……将棋に関しては、もう八一の存在感ってあの「名人」に勝るとも劣らないようになってるんだなあ。身近な親しい人ですら、将棋に関わるものなら感じざるを得ない「威」。風格が、もうこの青年には備わっている。
それはそれとして、弟として妹として八一と銀子は桂香さんには一生頭あがらんのでしょうね、これ。