【鬼畜先生の博愛教育】 藤川 恵蔵/小森 くづゆ MF文庫J

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

目には目を、歯には歯を。異能で荒れる学園を異能でねじ伏せ更生させる!

学園島タルタロス――ごくまれに異能を持つ者が産まれるようになった現代において、政府がそういった特殊な能力を持つ者たちを管理・教育するために、いくつもの異能学園をまとめて作り上げた巨大な教育施設である。そこに新任教師として赴任した神永カムイは、異能学生の集まる今の学園がいかに荒れているかを目の当たりにする。ただでさえ異能に対応できる教師が少ない上に、異能によるイジメや喧嘩、果ては異能を狙う外部の悪党たち――荒れ狂う学園を、かつて自らも異能学生として“異能バトル”に明け暮れていたカムイが、学園の問題と真っ向からぶつかり、豪快に力業で解決していくことに――!

鬼畜か? これ鬼畜かしら!? カムイ先生のこれって、脳筋って言うんじゃないの!?
わりと力任せに物事を解決してますけど、結果としてそうなっているだけで、ちゃんとその場その場では対応をよく吟味し思慮しているので何も考えずに暴力に訴えたり、という真似をしてるわけじゃないんですよね。
よく考えた結果、パワーに訴えているだけで。うん、脳筋ですね!
ただ、その能力で残虐ファイトとか……まあ多少蹂躙戦なんかはしていますけれど、必要以上に生徒たちを痛めつけたり傷つけているわけではないですし、そんな「こいつはひでえ」という有様を現出させているわけではないので、鬼畜呼ばわりはちょっと可哀想なんじゃないかな。
カムイ先生、ちゃんと理想をもって先生やろう、生徒時代にかまけていた能力バトルにはもうウツツを抜かさずに生徒を育て導いていこう、とちゃんと真っ当な若き情熱をたぎらせて先生になったんですよ。熱血教師じゃないですか。
鬼畜はむしろ、そんなカムイ先生を騙して呼び寄せ、「先生が一人もいない」という超絶ブラック環境な学校タルタロスに赴任させた白銀校長の方じゃないかな!?
いきなり新任教師、学校唯一の教師になる、である。
まあ授業の方はオンラインで外部から講師が画面を通じてやるので、学業に関してはそんなに問題ないみたいなんだけど。
白銀校長の目論見としては、カムイ先生に期待しているのは教師としてではなく、異能者として学園内の治安維持をはかるための常駐警備員だったんですよね。教師として理想に燃えるカムイ先生に対してそれは、結構な鬼畜だと思うんだけどなあ。
とはいえ、カムイ先生、おおらかというか鷹揚というかあんまり深く悩まない性質なのか、おおむね「まあいいや」という感じで流しちゃうんですよね。そして、構わず先生として日々起こる学園内のトラブルに首を突っ込んでいくのである。というか、向こうから舞い込んでくるんですけどね、トラブル。学校唯一の先生狙い撃ちで。
それは、同時に生徒たちが抱えているそれぞれの問題にも起因していて、カムイ先生も受け身にはならずに、積極的にその問題解決に生徒たちに踏み込んでいくのである。
まあ短気で手が早いカムイ先生であるからして、その解決方法は腕力!のケースが多いだけで。
難しい問題は力づくで、となってしまうだけで。知恵の輪を解くには引きちぎるのが一番早い、ってなってるだけで。
生徒思いの先生なんだよぉ、本当に。
勤務初日に十人以上の生徒に襲われて、返り討ちにボコボコの半殺しにしたりしていますが、本人は暴力反対なのです。力づくで無理やり問題を解決するのはよくない、とちゃんと思っているんです。だいたい力づくになってますけど。
むしろ、物騒な考え方をしているのは年の離れた幼馴染でこの学校の生徒でカムイ先生の助手みたいな役回りを自認している雪姫の方なんですよね。ヤンデレだろう、この娘。先生に振り向いてもらうとか好きになってもらうとかを既に通り越して、既にガチ嫁のつもりで侍ってますしね。思考の方向が超暴力的で、まず先生の邪魔するやつは処す、事情があろうと処す、という考え方の人ですし。やられたら百倍返しだ!(物理)の人なので、何気に先生が赴任してきて再会したときも超ボッチ状態でしたし。いや、ボッチというより孤高、敵も味方も関係なく周辺に人はおらず、という感じで。色んな意味で無敵の人、なんじゃないだろうかこれ。
わりとカムイ先生への当たりは普通でコミュニケーションにも難があるタイプには見えずにカースト上位の友達多そうなキャラに見えたのでしばらく気づきませんでしたけれど。
やばいね、うん。
ただ、振り返ってみるとこの作品のキャラって、大半がヤンデレ気質な気がするので雪姫も別にヤンデレが売りってわけじゃないんですよね。標準装備? 白銀校長も、雪姫曰くカムイ好きを拗らせきった上で、ペットを籠に閉じ込めって好きが高じすぎて弄り殺すタイプみたいですし、数々のトラブルを引き起こしてカムイ先生を犯罪者に仕立て上げて失職させようとしていた都城雅という少女も、正義感の拗らせすぎで相当に思い込みの激しいタイプでこれ惚れられるとヤバい系でしたし、さらのその背後で暗躍し、カムイ先生をトラブルの渦中に放り込んでいたライバルとも旧友とも言える人物も、カムイを憎んでいるんじゃなくてむしろ好きすぎてちょっかいかけるのが高じすぎてちょっとテロリズムになってるだけですし。だけって……。うん、十分ヤンデレしてますよね。
敵も味方も、ヒロインも総じて病んでる気がするんだけどなあ。例外はほんと、常識人の焔ちゃんだけなんじゃないだろうか。
こういう連中に囲まれているので、脳筋なカムイ先生だけど情熱は真っ当だし、生徒時代のやんちゃを反省して大人になった今は何とか立派な大人として生徒たちを導いてあげたい、という考え方は親身に接する姿は博愛とも言えるし、豪快でいい先生なんですよね。
まあ、若干頭のネジ外れている感もありますし。自分に対する敵意とか頓着しない、鈍感というか
精神が鉛という所もありますけど、行動論理もしっかりしてますし倫理観もそれなりにちゃんとした人ですし、鬼畜先生はほんと言い過ぎだと思いますよ。せめて脳筋先生で勘弁してあげてください。

そして、日向くんは確かに登場人物全員がこいつやべえ、というだけあってヤバかったです、いろんな意味でw
いやでも、完全に踏み外して思考回路もズレているようで、時々本質をズバッと突くような事も行っているので、夢の世界だけで生きているわけじゃなさそうなんですよね。悪い子ではないのだ、悪い子では。ヤバいけど。


藤川 恵蔵・作品感想