【メイデーア転生物語 3.扉の向こうの魔法使い(上)】 友麻碧/ 雨壱 絵穹 富士見L文庫

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戦いに備え動き出すメイデーアの国々。落第王子の秘めた想いは誰がために?

『何度生まれ変わっても、俺はお前を必ず殺す』かつてそう告げて“前世”の自分を殺した金髪の男と、巡り会うマキア。フレジール皇国の将軍カノンと名乗る、その男の転生を恐れるマキアをよそに、救世主アイリと守護者の旅立ちに向けて、ルスキア王国に同盟諸国の王たちが集おうとしていた。
いっぽう魔法学校では、第一学年最後の班課題が発表される。マキアたちの班も高評価を目指して活動をはじめるのだが、留年生のフレイがいつになく上の空で……?
落第王子の想いが解かれたとき、“メイデーア”の運命の扉が開く。

シャトマ姫、いや女王陛下だから姫じゃないんだけれど、作中でもちょっと触れられているけれど、この人って陛下じゃなくて姫なんですよねえ、なんでか。いやそれ以前に、シャトマ姫というよりも最初から藤姫なんですよ、この人って。なぜか「藤姫」の方が前面に出ている感じで、ついついこの人の事は藤姫と頭の中でも呼んでしまう。
ともあれ、前世の地球でマキアとトールを殺した男、カノン将軍の登場である。そりゃマキアも怖がるわさ、自分殺人犯ですよ。それがしれっと現れるのですから。これで、カノンの方が殺した記憶がない、とかならまだこう対等な立場から記憶が戻るまで交友を深めて、いざ記憶が戻る時に殺人の記憶に苦しんでー、とかいう展開になるのですけれど、このカノン将軍と来たらズケズケとマキナに近づいてきて真顔で、お前を殺す、また殺す。何度でも殺す。という殺人予告までかましてくるわけですから、怖いよ、そりゃ怖いよ。
これで感情的に憎悪や怒りが含まれていたなら、マキナの方も自分なんかしただろうか、と思う所なんだろうけど、無表情に淡々と必要だから殺す、という機械的な感じですからね。殺すというよりも、食肉処理される、みたいな感じですし理由もわからない以上どないせいっちゅうねん、てなもんですよ。
トールの方は前世覚えてないですし。自分だけでその恐怖を抱え込まないといけない。でも、覚えてなくてもマキナが怖がっているのを察してくれたトールが、庇ってくれるのは女の子としてはもうたまらんくらい嬉しいんでしょうけどね、このナチュラルイケメンめー。
しかしカノンの方も殺す予告をしておきながら、決してマキナたちの歩みを止める存在ではないのである。立ちふさがる壁でも追いかけてくる断罪者でもなく、進む道を途絶させる者でもない。
それどころか、彼こそが導く者であるということは、マキナに殺すと言いながらその前にたどり着くべき真実があると告げて、そのために行かねばならない場所がある、と指し示してくれるわけである。
このあたりの複雑な立ち位置が、通り一遍のキャラデザインじゃあないんですよね。

明確な敵として暗躍し、優しい人たちを陥れて、多くの者を不幸にしているのが「青の道化師」と呼ばれる謎の存在。それに比べたら、カノン将軍というのはかつてマキナたちを殺した存在にも関わらず、そして今も殺すと言ってはばからないにも関わらず、決して敵ではないんですよね。
そして、カノン将軍を伴って現れたシャトマ姫こと藤姫さま。藤姫という存在は数百年前に存在した大魔術師の名前でもあるのだけれど、そういう過去の大英雄、大魔術師を彷彿とさせる存在が今また一人また一人と現れ、集結しつつある。過去が、今に追いついてきているように。
一方で、今現在ここで生まれ生きている人々にとっても、差し迫る戦争の影は暗い影を落としつつあるのだけれど、今現在の人々の希望である救世主アイリは、さてそろそろ馬脚を現してしまった、というかどうしてあんなドリーム小説ばりの妄想抱いていたんだろう。ともあれ、夢から覚めてしまえばこの異世界だとてただの現実だ。すべてが都合よく転がっていく夢の世界なんかではない。だからといって不貞腐れるのはどうしようもない選択だと思うのだけれど。
それはそれとして、ギルバート王子の扉越しのプロポーズはまー女性陣には大不評だったご様子で。プロポーズするのに顔も見ずに外から一方的に、なんてのは言語道断、ぶっちゃけあり得ない、ものらしい。いやギルバート王子としては、アイリが救世主扱いされなくなっても、自分は味方ですよ、と伝えたかったんでしょうけど、うんまあプロポーズまではやりすぎですよね、うん。
彼が対人能力あんまり高くない、というのもこの一事をもって伝わるのかもしれない。ここから、ギルバートとフレイの兄弟の仲が拗れている要因にも飛び火していくんですね。
元々、異母兄弟ながらギルバートの母である正妃に実質育てられたフレイは、正妃とギルのことを慕い敬愛していて、幼い頃は特にギルとは仲良かった、というのはなかなかの驚きの情報でした。
それがまあ、正妃さまの死と前後してえらいこじれるはめに。これ、正妃殿下は意図的にこじれさせてるっぽいんですよね。亡くなる寸前にフレイにそんな言い方して突き放したら、そりゃフレイだって傷ついてグレるのも当然じゃないですか。その上、ギルバートにはフレイの事を頼むなんて言い残して。実の息子としては思う所あるでしょう、これ。なんかギルの婚約者だったベアトリーチェにも、こっそりギルバートの事をお願い、と託していたみたいで、彼女が変にギルにべったりするようになって仲拗れちゃったのって、それが原因じゃないんだろうか。
ともかく、なにやら各方面に歪みを生じさせてしまった正妃さまの所業なのですが、この人限定的ながら未来視の能力を持っていたそうで、やっぱり意図的にこういう構図になる事も了解した上でのこのだったんでしょうかね。実際、グレたおかげでフレイはマキアたちと同じ班になる事になったわけですし。
マキアが中心にフレイとギルバートの和解に奔走することになって、それが叶うというのもある程度見越していた、という事なんでしょうか。それはそれで結構ひどいなあ、と思うのですけど。フレイ、随分長い間傷ついてましたし、愛する家族から嫌われ憎まれていたと思って苦しんでいたわけですし。
あと、自分のために奔走してくれたマキアのこと、めっちゃ気にしちゃいだしてますよね。それも予定の範疇ですか? なんか、トールに対して牽制しだしているんですけど。それは道ならぬ、ってやつだよフレイくん。

ちょっと予想外だったのが、ネロの人間関係のほうで。まさかのカノン将軍の身内だったのか。いや、旧作ではネロという子は居なかったですし、確か。カノンは極めて孤独な存在で、そこに寄り添う形のキャラクターは見当たらなかっただけに、ネロがどう絡んでくるのか予測が難しくてかなり気になる立ち位置なんですよね。ラピスもそう遠くない未来にその血の因縁が明らかになってくるでしょうし、マキアのチーム誰も彼も一筋縄ではいかないメンバー揃いだなあ、これ。

かくいうそのマキア当人とトールの方も、いい加減自分達の真実に首まで浸からないといけない時期に差し掛かっているのでしょうけれど。なにしろ、ユリウスが積極的に画策しているからなあ。覚醒の時は近し。そして、アイリが実は斎藤くん推しじゃなくて、むしろ小田さん推しだったとは。
アイリがすべてを理解するきっかけが「ツナマヨ」というのは、なんというかさすがはマキナ、やっぱりマキナ、というべきなのかしらこれ。