【王女殿下はお怒りのようです 5.邂逅、そして】 八ツ橋皓/凪白みと オーバーラップ文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

明かされる転生の真実――

公爵家の領地において妹のクリスタと対峙したレティシエルは、未だ見ぬ『ドロッセル』の記憶に触れた。
『ドロッセル』の過去とクリスタの抱えていた想いを知ったレティシエルは、彼女へと歩み寄り、二人の関係は新たなものとなる。
だが、黒い霧を巡る謎が解決されたわけではない。ジークと共に、霧についての調査を続けるレティシエルは、自身を幾度となく襲撃した『白の結社』と、それを従える仮面の少年と相対する。
そして少年は、この時代において誰も知らないはずの名を呼んだ――
「君に会えることをずっと待っていたよ、レティシエル」
その邂逅が意味するものとは。
転生王女の最強魔術譚、核心に迫る第5巻!
赤い目を持つ人についてのお話とか前々から出てましたっけ? 寿命の件も含めて、えらい唐突感があったんですが見逃してたのかな。ロシュフォール王子もさることながら、国王陛下もそんな業背負ってたとか全然頭の中に入っていなくて、あれ?そうなの!? と、びっくりしてしまったのですが。
さてもその暗躍する『白の結社』を動かしている幹部たちの姿が見えてくる。と、同時にその黒幕がどうやらレティの前世に関係ある人物である、というのは当初から匂わされてきたのだけれど、正体に関しては明かされてこなかったんですよね。それどころか、レティに執着はしているもののその方向性が正負どっちなのかも、どちらのようにも見て取れる言動を繰り返してきたわけで。
うん、普通に「彼」を想像してしまいますよね。
場合によってはレティシエルは、前世から抱き続けている大切な人への想いと、ドロッセルとして生きる現世で出会った人々との絆との間に板挟みになって苦しむ展開も予想できたわけで。それどころか、前世の旦那と今世の想い人とが違うお陰でドロドロした修羅場に! という仄暗い期待もあったりして。まあ白の結社がどう考えても悪役ムーブな悪いことをしている連中なので、どうあっても対決は避けられなかったのですから、レティシエルがどちらを選ぶかは疑いようのないところではあったものの、それでも良くメンタルを揉まれて苦しむ羽目になるのかな、とは危惧してたんですよね。
どうやら危惧で終わってしまいそうですけど。案外とひねらずに進むのか。
でも黒幕の正体に関しては、ちょっと「え?」と意表を突かれたというかその人は想像していなかったというか。いやだってねえw

まあそっちの可能性はパッと排除できたので、落ち着いて今世でのドロッセルとしての今の立場を振り返ってみると、あれ? 結構男の影があるぞ、この娘さん。
実家の公爵家の失墜によって、身内は貴族位を取り上げられて追放の憂き目にあい、自身も身分を剥奪されたわけだけれど、今の所平民になって困ることはないんですよね。国王陛下は、状況いかんによっては貴族位の復活、もしくは新しい陞爵も考えているようなので、いつでも貴族に戻れるチャンスはあるようですし。
となると、再会なって以来なんだかいい雰囲気になっている幼馴染のエーデルハルトとも身分差ゆえの弊害は最小限で済みそうですし、逆に平民であるジークとの仲も現状身分の壁がなくなった、と言えるわけで、さらに使用人のルヴィクとも何だかんだと自分に前世の記憶があり、昔のドロッセルとしての記憶がなくなってる……最近朧気に思い出してきているけど……という事情を打ち明けて、しばらくギスギスしていた分逆に関係が密接になったきらいもありますし。
どうやら、レティシエルが転生した件については明確な理由があり、それに伴ってかつての旦那も転生している可能性が高まっているのだけれど、この中ではジークがどうにもそれっぽいメモリーを垣間見せているのですが、エーデルハルト王子の寄せはなかなか強烈にも思えるんですよねえ。

さて、件の事件によって明暗別れたフィリアギス公爵家の一族ですけれど、自ら事件の解決に動いたドロッセルは当然として、クリスタが思いの外救済されてるんですよね。ってかロシュフォード王子ヤバい存在として目が覚めたのかと思ったら記憶障害はあるものの当人の意識は保っているのか。彼の側に残れるのなら、クリスタとしてはむしろ良かったという立ち位置なのでしょう。逆により泥沼にハマってしまったのがサリーニャの方で、なんか過去の不始末を隠そうとしてどんどん余計な罪を背負っていっているような。でも本人、いい加減振り切って小悪党でしかなかったのが濃密な悪女めいたキャラになってきて、そんな悪女ムーブ楽しいみたいなのでそれはそれでいいんじゃないだろうか。
あのしょうもない雑魚両親から、三姉妹全員これだけ濃いキャラに育ったというのは何とも面白い事なのかもしれない。

しかし、もうレティシエルは自分がドロッセルであるという事実に疑問も違和感も抱かなくなったのか。最初は、自分をレティシエル以外のなにものでもなくドロッセルって誰? という感じで、自分の肉体だった少女の事は話を聞いても他人事でしかなかったのに、いつの間にかドロッセルという少女に興味をいだき、彼女が何を考えどのように生きてきたのかを追いかけるようになり、それがいつしかドロッセルの記憶が断片的にでも蘇るようになり、いつしかドロッセルもまた自分なのだという同一性が進み始めて……、とここまでじっくりと時間をかけて前世と今世の自分をすり合わせていく展開というのは結構珍しいんじゃないだろうか。ルヴィクやエーデルハルトにレティシエルという前世の記憶がある、と告白するに至ったのは、自分がドロッセルであるという認識あってこそでしょうし。
もし最初の頃なら、自分は本当はレティシエルという違う人間だ、なんて言ってたかもしれませんしねえ。ドロッセルの記憶がもっと沢山戻ってくれば、完全な同一化が進むのだろうか。