【終焉ノ花嫁 2】 綾里けいし/村 カルキ MF文庫J

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魔導学園×主従バトル×ダークファンタジー、祭華夢幻の第二弾!

人類の敵【キヘイ】が世界を蹂躙して幾年。
魔導学園・黄昏院を設立し、人々はその脅威に抗戦を続けていた。
キヘイと婚姻し、【百鬼夜行】に転科・入隊したカグロコウは、一万五千回の試算の上にキヘイの大進行【逢魔ヶ時】を越える。
束の間の日常を謳歌するコウたちの前に――予想だにせぬ転科生が現れる。
時を同じくして【逢魔ヶ時】打破記念の祝祭が行われ、コウたちも出し物をすることに。
だが、祭りの最中、唐突にコウが殺される。
何度も何度も。
何度繰り返しても――。
さらには【戦闘科】最強の学徒で構成された【傀儡衆】の少女に襲撃されてしまい……?

ササノエ先輩、見事にミレイさんに洗脳されてお化け屋敷の脅かし役で動員されてるじゃん! 孤高の戦士を地で行ってるササノエ先輩だけど不思議と孤立はしていないどころか慕われていて、わりとイジられる事も多い気がするぞこの人。でも何より格好いい。最強の幻級の人は他にも二人いて頼りにされているけれど、百鬼夜行の支柱的存在というのはやっぱりササノエ先輩なんだよな。
百鬼夜行そのものが陥れられハメられたときに、切ってみせた啖呵には奮い立たずには居られなかった。
彼に限らず百鬼夜行の面々は気持ちが涼やかで本当に気持ちの良い人たちなんですよね。黒姫が転入生として教室に現れた時も、事情も何も説明せずともコウが真摯にお願いすることでキヘイの女王だった彼女を受け入れてくれた時も、コウを信頼して気持ちを汲んでくれたからこそ、なんですよね。
また時間遡行の繰り返しで、傍目には奇行に見える行動を起こし、また突然前触れもなく感情を爆発させたような不審極まる場面でも、状況のおかしさや異常さよりもまずコウが見せている感情を、泣きじゃくる彼の悲しみや安堵というものを優先して見てくれて、コウのどうしようもない気持ちの擾乱を皆して受け止め見守ってくれるのだ。こういうシーンを見せられると、本当に百鬼夜行の面々がみんな生き残れたという事が嬉しく思えてくる。この気持ちの良い涼やかな人達が、優しく強い人たちが生きてくれた、という事実にコウの一万五千回もの繰り返しが確かに価値あるものだった、この人たちを喪わずに済んだことがどれだけ掛け替えのない事だったのかが実感できるのだ。

だからこそ、コウが掴み取ったこの未来を否定し、貶めて、百鬼夜行が生き残った事実そのものを台無しにしようとする外部の人間の悪意に強い憤りを覚えるのだ。
敵はキヘイか、はたまたヒトか。
だからこそ、ササノエ先輩の一般の生徒は自分達の排斥に回るのは仕方ないが、これを企んだ連中は生かしておかん、という啖呵が沁み入るのである。怒りのみに染まらず、しかし怒りを留めず、敵と守るべき人たちを明確に区分けして斬り込もうというその姿に、この仮面の先輩の誇りを、百鬼夜行クラスの強さの意味を垣間見ることが出来るのである。
この人たちには幸せになってほしいなあ。
白姫との閉ざされた二人だけの愛の縁にとどまらず、こうして白から分たれた黒姫とも繋がり、百鬼夜行クラスというこれ以上ない仲間たちと出会い、そして途切れたはずの一般クラスの友人たちも、今もなおコウの事を想ってくれていた事を知れて、世界は捨てたもんじゃなくヒトは素晴らしいともっと思えるようになってくる。
だからこそ、余計にヒトの良き部分を塗りつぶすようなヒトの醜悪な悪意が際立ってくるのだけれど。
傀儡衆というのはこれ名前、結局ミスリードだったのか。直接対面してみると、いわゆる暗部な連中にも関わらずこの人たちも何だかんだと裏表のない気持ちの良い人たちだったんですよね。あくまで、彼らは意思を無視して使われる側であったのか。
しかし驚きだったのが、コウの時間遡行って即死した場合その時点で終わりだったのか。いや、これよくまあ一万五千回も即死せずに繰り返せたなあ。本人気付かずに流れ弾とかで頭吹き飛ばされて即死、とかいうケース決して珍しくないだろうに。精神がゴリゴリ削られていく以外は万能に思えたコウの能力だけど、これ詳細を知られた場合かなり容易に排除されかねないぞ。
今の段階では担任教師の二人以外には知られずに済んでいるのだけど。百鬼夜行の面々は知ろうともしていない、ほんとイイ連中なんだけど、敵サイドが全く気づいていないというのは大きいなあ。

ともあれ、学園祭の最中、いやその学祭の終わり際に突然脈絡もなく知人からナイフで刺されて殺されるという自体が続く中で、誰かが生徒たちを操ってコウに攻撃を仕掛けてきている、と察知するのですけれど、最初の案件、一般クラスで仲の良かったアサギリと再会して、話しているときにいきなりナイフで脇腹刺された時には瞬発型ヤンデレだー! と大いに興奮してしまったわけですけど……。
いやうん、ファーストインプレッションは侮れませんね、うん。

さて、今回からさらっと転入生としてクラスに加わってしまった一巻のラスボスである千年黒姫。無理にラスボスする必要なくなったというのもあるけど、ちょっと内気で周りの反応にビクビクしながらでも好奇心を隠しきれずにキョロキョロしつつ、コウの裾つまんで影に隠れてる、みたいなイメージのキャラがめちゃめちゃ愛らしくて、なんだこの新興マスコットは。コウよりもむしろ白姫の方がテンションあがって甲斐甲斐しく世話しだしているあたりは、なんとも微笑ましい光景でした。姉妹みたい、と言いたくなるけど姉妹どころかこの二人アレなんだよなあ。でも白姫よりも黒姫の方が経験も実体験も上のはずなのに、白姫の方がお姉さん風吹かせているのはふたりとも可愛いなあ。
そして、なんか作中で一番ラブコメしているヒカミとミレイのお二人さん。この二人が一番学生生活の青春真っ盛りじゃないですかー。ヒカミの方まったく無自覚にも関わらず、愛が深い、深い。そして薄々察してソワソワしてるミレイさん、乙女ですよ乙女。
そんな二人をみんなで隠れて出歯亀しながら見守る百鬼夜行クラス。こいつら、ほんとあらゆる意味で仲良いよなあ。そして、学園の最後の盾であり最強の矛、他の生徒たちから秘されし影の存在でありながら、わりとちゃんと生徒として青春してるんですよねえ。学園祭も何気に毎年参加してるそうですし。
そんな中に、コウも加わって最終的にちゃんと学園祭を全部回れてよかった。途中経過で、結局参加出来ずに終わるのではないかというちょっと寂しい予感があっただけに、ほんと良かった。
と、良かった良かったなんて言っていられないラストの驚きの展開。そうかー、そうきたかー。
さても、人の敵はやはりヒトか。