【Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 02】 之 貫紀/ttl KADOKAWA

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2018年。ダンジョン攻略が当たり前になった世界。
元社畜の脱サラリーマン芳村は不幸?な事故によって最強スキルを手に入れる。
のんびり生活を求めて金稼ぎのためにダンジョン探索をするが
気づけば国際レベルの要注意人物に!
憧れのスローライフが遠のくなか、幻のスキル「異界言語理解」採取を依頼され
ついに芳村はダンジョンの深層に潜入。しかし、それが世界にさらなる波紋を生む結果に!?
うおお、なんじゃあのでっかい犬わ、と表紙見てビビってたら本編にちゃんと登場しましたよ、ワンコ。ワンコーズ。いや犬じゃなくてヘルハウンドですが。三好命名のアルスルズ。このカヴァスを筆頭にしたワンコたちが実にかわいいのだ。デカイけど可愛いのだ。言葉は喋らないけど此方の言葉はちゃんと解して意思疎通できるし、反応がまた知性と愛嬌とウィットに富んでいてなんていうんだろう、キュート? そうキュートなんですよ。でもただマスコットなだけではなく、力が強いのは当然として凄く頭がいいんですよね。頭がいいなんて頭悪そうな言い方はあれかしら。一つの命令というかこれしといて、というお願いに対してただ従順に言われた通りに従うのではなく、ちゃんと自分達で色々と試行錯誤してよりうまくその命令をこなせるように工夫したり、なんなら新しい魔術を生み出してより洗練されたやり方でやってくれる。今回は大雑把に番犬しておいて、という類……には収まらないか、狙われている前提での身辺警護を彼らに頼んだのだけれど、言われた以上の緊密さで完璧にガードしてくれたんですよね。こういう賢さはほんと頼もしいし、賢さそのものが愛嬌に繋がっている。いやもうこのワンコたち凄く好きですわー。
検証のために彼らの個体を一度殺したりして再召喚とかしたら三好怒るかなー、とか平然と動物実験的な思考を当然のように脳内で繰り広げている芳村さん、マジ鬼畜です。いや、実際言わないだけまだマシなのでしょうけれど。

いやしかし、これアルスルズがちょっと強力すぎる。こんなんがガードしてたら無敵じゃないですか。ダンジョンの話じゃなく、実世界の方でも。
今回芳村たちDパワーズは、国際情勢のバランスを覆すような重要なファクターを内包したスキル「異世界言語理解」というスキルオーブをオークションにかけると表沙汰にしたお陰で、世界各国から狙われるはめに。ただでさえ、色々と今までの常識からするとあり得ないスキルの売買方法を行ったために目をつけられていたのに、今回は各国本気になって自国の情報機関の実働部隊の精鋭を動かすことに。お陰で、芳村たちがダンジョンに潜ればぞろぞろと尾行の部隊が後をつけてくるわ、Dパワーズの事務所周辺は世界中の情報機関の関係者で大渋滞を引き起こすわ、というとんでもない状況に。
さらにさらに、この一件で特にババを引くことになるロシアはより短絡的な方法、いわゆる暗殺処理という行動に打って出たおかげで、芳村たちは日本の街中で命を狙われるはめに。
いやこれ、何気にロシアが予想以上に強引な手に打ってでたために芳村たちが想定した状況を上回っちゃってたんですよね。アルスルズがいなかったら、実際アウトだったんじゃないだろうか、という場面が幾つか。
にして、これはいくら何でも日本のダンジョン協会(JDA)の判断がお粗末すぎる、と思ったんですが斎賀課長の暗躍があったとは。本来なら彼程度の立場でそこまで考える責任はないはずなのですが、自分の組織の益、自分が所属するセクションの益ではなく日本の国益を考えての暗躍であり、ある意味国の方針そのものの行方を導く行動なわけで、それを部下に命令するとか上司に進言するというやり方ではなく、ちょっとした行動で本来彼の指示などでは動かないはずの上司や、Dパワーズの言動を誘導して望む形に持っていったわけですから、さり気なくとんでもない事してるよなあ、この人。しかも独断w いや別に表立って彼は何もしていないのですし、咎めだてられる理由も一切ないわけですから、何も問題ないですよねとしれっとしているあたり、相当の食わせ者だぞこの人。

ダンジョン探索のお話でありながら、舞台はあくまで現代社会。ダンジョンの中ではなく、社会の中のお話になっているのがまた面白いんですね。ダンジョンでやったことがダイレクトに現代社会に影響を与え、各国の動向を激化させ、国際情勢を揺り動かす。直接国に関わっていない人でも、国家の中枢に影響を及ぼすような教団や富豪など、キープレイヤーとなる人物がどんどん関わってくる。
あくまで本舞台はダンジョンの外、というのが他のダンジョン探索ものと異なる部分でそそられる面白さなんですよね。それらを嬉々としてかき回す芳村と三好のコンビ。ほんと、いい面の皮の厚さしてますわ、ふたりとも。世界の大国を向こうに回してビビって萎縮することもなく、振り回しているわけですから。あれだけ凄まじい大金を稼ぐに至っているのに、その金に振り回されてもいませんしね。あくまで彼らの目的は実験、検証、実証、というところにあってお金は手段、だからというのもあるんだろうけど、人物として変人であり真っ当であるがゆえ、なんでしょうね。
あの最後の、モニカという国に縛られることになる少女への芳村の助言なんざ、その最たるものでしたし。
しかし今回目次みたら、プロローグとエピローグの間に第三章「異世界言語理解」という項目だけがどーんと一つだけ並べてあって、目次の意味殆どなくw しかし中身も濃く勢いもたっぷりでページも厚いたった一章でありました。
なんか特典小説もあるらしく、それもかなりの分量らしいので後ほど読んでみたいと思います。2020年11月一杯までしか見られないみたいだから、後回しにしすぎるとやばいぞ。
あと電子書籍版では、その特典小説へのURLは巻末近くにQRコードと共に記載されているのでお見逃しのないよう。