【転生したらスライムだった件 17】 伏瀬/みっつばー GCノベルズ

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本編では見られないあのキャラたちの活躍が詰まった『転スラ』初の短編集!

魔国連邦の幹部では珍しくも人間であるミョルマイルが西方諸国で暗躍する
――『ミョルマイルの野望』

愛する人の残滓を求め世界を旅するヴェルグリンドが関わった、とある国の物語
――『遠い記憶』

帝国再建に向けて動き出すカリギュリオは、己の過去とも向き合い始める
――『激動の日々』

魔王ギィ・クリムゾンのメイドにして原初の青レイン。そんな彼女も周りが異常ならボヤキたくもなるよね
――『青い悪魔のひとり言』

他、特別収録の1本を加えた『転スラ』本編とは違った視点で描かれる珠玉のSS集!
短編集ということで個々のキャラクターにスポットを当てて、というのは想像できたのだけれど、そのキャラのチョイスがまたぞろメイン級から遠く遠く離れてるあたり、大好きですわー。
特に特筆すべきが帝国の将軍だったカリギュリオ。この人なんてホントちょい役だし、小悪党のヤラレ役以外何者でもないにも関わらず、短編の主人公として描かれてここまで掘り下げてもらえるとか。
元々本作って最初期のベスターに代表されるように、この手の本来なら適当に使い捨てられるような別に強くもないし立派な人物でもない俗物の小悪党でも、結構大切に扱われて汚名返上するような立ち回りをして、ベスターのように後々まで重要人物として活躍することが多いんですよね。他にも何人も居ますし。
それも圧倒的な力にやられて感服して改心しました、という単純な心変わりじゃなくて、俗物だったそれぞれにも実際は人生の積み重ねがあり秘めたる思いがあり、時として道を外れていたりしたとしても、そこに至るまでには努力や奮起があり、それだけ頑張れる背景があり、としっかりと人物像を作り込んだ上で、心変わりというよりも敗北を気に初心を取り戻すような形で、それぞれが一番心輝いていた時期に立ち戻るような、そんな再出発を見せてくれるのでこういう小悪党たちの躍進はほんと嬉しくなるんですよね。
このカリギュリオも、将軍へと出世するまでの紆余曲折の人生には挫折と苦渋が刻み込まれていたのである。ただの野心家じゃなかったんですよね。そして、ただ利用し合うだけだった同僚と本当の意味で同志になり、友情が結ばれ、そこから過去に失ってしまった一番大切だったものを取り戻していく流れは、ちょっとした感動ですらありました。ああいうおっさん同志の多くを語らぬ心配りの友情はやっぱりいいよなあ。そして一番大切なものに裏切られた傷心を乗り越えて、真実に向き合ってもう一度それを取り戻そうとするおっさんの勇気、あれこそ勇気でありますよ。
カリギュリオのこれからに幸あれ、と心から思える短編でありました。

ミョルマイルも最初から強欲商人に見えてその心根が善人そのもの、という登場シーンから好きだったのですけど、この人を早々に取り込んで魔国の最重要人物に取り立てたのは、ただ強いだけが基準じゃない国造りの土台になってて、何気にキープレイヤーだったと思うんですよね。
そのミョルマイルの表舞台裏舞台もひっくるめての大活躍。実質、裏社会も牛耳るはめになったのか。その立場その仕事からどんどん金が懐に入ってくるにも関わらず、それどころじゃない忙しさに仕事の楽しさに、とこの人も人生謳歌してるよなあ。しかしテスタロッサ、もっと豪腕で交渉取りまとめているのかと思ったけれど、本当に繊手を持って丁寧にやってるんだなあ。これはほんと、他の悪魔には出来ない仕事だわ。いや、マジで彼女以外に出来るやついないんじゃないの? 他、色んな意味でバカばっかりだし。ギィのところのレインも澄ました顔して中身おばか、というのがこの短編で明らかになってしまいましたし。ミザリーの方はまだだいぶしっかりしてるんだろうか、これ見ていると。

ヴェルグリンドの話は、ルドラの魂の欠片を追いかけていろんな世界を駆け巡っていた頃のお話。世界が妖魔の謀略によって破滅しかけていて人類滅亡のピンチというさなかにヴェルグリンドが現れるという完全に異世界転移無双のお話じゃないですかー。まさかの近藤少佐のいた世界。あの人、地球の戦中の頃の人間、というわけじゃなかったのか。
ヴェルグリンドがもう圧倒的なんだけれど、彼女が無双する話というわけでもなく、彼女が色々と導くのだけれど基本的に現地の人間たちが頑張るお話になっていて、ヴェルグリンドこれ普通に救世の女神様じゃないですか。ルドラ以外どうでもいい、という態度を見せつつ結構世話好きというか親切にあれこれと手配りしてくれるし助言やフォローや、彼らが手が届かない所では手助けして、といたれりつくせりだったような。ヴェルグリンドも丸くなったものである。
いや、異世界のお話で実質別作品みたいになっているのだけれど、だからこその面白さがあった。この世界でも覚醒した連中は、頑張って転スラの世界まで来るつもりもあるみたいだし、彼らの再登場があったらそれはそれで楽しみ。

しかし、これだけちょい役のキャラですらこういう短編かけるのだから、それこそ登場キャラの分だけ主人公にして話を書けるんじゃないだろうか。長編の続きではなかったですけれど、満足度の高い短編集でありました。