【クラスで一番の彼女、実はボッチの俺の彼女です】 七星 蛍/万冬 しま 角川スニーカー文庫

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私たちの関係は、みんなには内緒。甘酸っぱいドキドキのカレカノラブコメ!

「青春」なんて面倒くさい、自称・選択ボッチの篠宮誠司と、学年トップの成績で現役モデルの高嶺の花・神崎琴音。教室の中では絶対に交わらない2人は、クラスの誰も知らない秘密を持っている。
――この2人、実は皆に隠れた恋人同士なのだ。
頼り方を知らない甘え下手な彼氏と甘えたがりな彼女は、2人きりになった途端、素直な自分になることができる。
文芸部の部室で一緒にお昼を食べたり、豪雨を言い訳に家でお泊まりデートしたり、体育館裏でこっそり抱き合ったり……。

クラスでは遠いのに、2人だとこんなにも近い距離。
もどかしくて焦れったい、内緒のカレカノラブコメディ!
いや、良いよこれ、イイんじゃない!?
この二人、篠宮と神崎琴音の二人って普通のカップルなんですよ。ほんと、この年頃の高校生の彼氏彼女。お互いの事が好きで、一緒に過ごすのが楽しくて、居心地が良くて、まだまだ付き合いはじめて時間も経っていないからお互いの知らない面や趣味嗜好を知っていくのが嬉しくて仕方なくて。まさに彼氏彼女の関係を謳歌していて、浮かれている真っ盛り。かと言って、浮かれて暴走したりもせず、一方的に突っ走ったりもせず、等身大の自分のまま距離感として手を繋いで肩を寄せ合っているような穏やかな甘酸っぱさなんですよね。
これがいいんだ。
なんかタイトル的にも身分違いの秘密の恋、みたいに見えるんだけど、篠宮もボッチとは言え別にコミュ障というわけじゃなく、独りで居るのが平気で楽だからそうしているだけで孤立しているという訳じゃないし、神埼の方も学校の人気者とは言え化け物じみたスペックしてる訳でもカリスマがあるわけでもなく、メンタルお化けというわけでもない。美人で明るくて社交的だけど、普通の女の子だ。だから、二人の様子見ていても普通の彼氏彼女なんですよね。どちらかに比重が偏っているようなバランスの悪いカップルなんかじゃなく。
学校の友達には内緒にしている関係、というのもさほど珍しいものではないだろう。周囲の人間関係に煩わされないように、こっそり付き合っているというケースは良く聞くじゃないですか。彼らの場合、二人の関係は篠宮の妹には知られていて、琴音が篠宮の家に遊びに行く事もあって妹ちゃんとはもう別枠で連絡取り合ってるような仲良しですし、学校でも実のところそこまで神経を尖らせて真剣に隠しているようには見えない。昼休みのたびに、部室で一緒にお昼食べているし、みんなの見ている前では話したりしないけれど、携帯でメッセージは送り合っているし、何かあったら人気のない所で会ったりもしている。学校の行き帰りも、相応の頻度で一緒にしてますしねえ。
こうやってこっそりバレないようにという素振りで仲睦まじくするのが、楽しいというのもあるのだろう。わかります。
当然、他の同級生とあんまり交流を持っていない男子と、琴音が付き合っていると知れ渡ると彼女の広い交友関係から色々と面倒くさい事になるので隠している、という意図もわかるんですけどね。
公の関係になってしまうと、否応なく篠宮の方も琴音の人気者故の交友関係の方に関わることを要求されることになるでしょうし。そうすると、二人だけの関係に集中している訳にいかなくなるだろうし、煩わしいおつきあいも増える事になってしまうだろう。
それが原因で、今の気負いなく等身大で付き合えている関係に余計な負担が増えてしまうのは嫌だろうしねえ。二人の関係を内緒にしておきたいというのは、篠宮の方の希望みたいだけれど、琴音の方の気遣いも多分にあると思われる。ただ、篠宮からするといざ自身の煩わしさか琴音との関係か、と問われたら特に迷うことなく琴音の方を選ぶだろう事は、琴音が見舞われたトラブルで彼が積極的に介入した事からも自明のことだろう。
自分が見舞われたトラブルのお陰で篠宮まで面倒事に巻き込まれる事を嫌った琴音は、自分から距離を置こうとしていたけど、それは篠宮に気遣いすぎというか、あらすじでは篠宮の方が頼り方を知らないとか書いてあるけど、こうして見ると琴音の方が知らないしこういうときこそ甘えればいいのに、と思ってしまう。いや、本当に篠宮の事好きだからこそ、というのが伝わってくるのでありますけど。篠宮の方も、琴音が好きだからこそ此処ぞというときにはあれだけ身を挺して積極的に動き回れるのだろうし。自分が部活のイケメン男子と話していて、それがお似合いに見えた事で嫉妬してしまった、なんて篠宮から正直に吐露された時の琴音の、あの相好を崩すドコロじゃないはしゃぎようは可愛かったしなあ。お互いにホント夢中なんですよねえ。いい雰囲気のカップルなんだよなあ。

だからこそ、中学時代の篠宮の後輩であり、今年改めて入学してきた姫島はご愁傷様ですとしか言いようがない。これ、必死に勉強して篠宮のこと追いかけてきたんだろうしなあ。篠宮と琴音が関係を秘密にしているおかげで、後輩ちゃんは篠宮のことフリーだと思ってるんですよね。おまけに、ボッチだし周りに人もいないし、まさかこの先輩のことを好きになる人がいるわけないだろうと油断じゃないけど、余裕を持っているようにも見える。
まさか、出遅れているどころか既に試合終了しているなんてことは夢にも思うまい。かわいそうに。
ただ、このままだと付き合っているの内緒にしている事自体が、拗れる要因になりそうなんだよなあ。琴音の方は、むしろ人気者であるが故にある種キッパリと交際申し込まれても断れる立ち位置で、なあなあで変に距離感詰められてきたりというのも少ないでしょうし。まあ、今回のようにやたら悪質な手段で絡まれたりする事もあるわけですが。

何にせよ、篠宮と琴音のカップルはまさに等身大の普通の高校生カップルさが、むしろ新鮮で地に足がついているが故の派手じゃないけど力強い仲睦まじさ、甘酸っぱさを感じられて、良かった、実に良かったです。