前回、10月前半の注目作品のピックアップ記事です。


【現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変 1】 二日市とふろう(オーバーラップノベルス)

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うおおーーー。この作品を、いやこの作者さんの作品をオススメ出来る日が来るとは、感動!!
デビューにあたって「二日市とふろう」と改名なさっていますが、それまで活動なさっていた際のペンネームは「北部九州在住」。と、聞けばご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
代表作は【大友の姫巫女】。戦国系仮想戦記では傑作中の傑作であります。この作品の特筆スべき点は幾つもあるのだが、その中で今回の作品と特に関わりある所をあげるなら、経済面での観点が他の戦国モノとまるで違った事でしょう。
その際立った経済に対するアプローチはこの【現代社会で〜】で見事にスポットを当てられることになる。本作は、言わば現代を舞台にした仮想戦記。昭和時代の改変、どころか平成を舞台に歴史改変が繰り広げられるのである。バブル崩壊からの「失われた十年」をはじまりに、かつて歴史の闇に葬り去られることになった悪役令嬢が、二度目の人生を賭けて1990年代日本経済の再生に挑むことになる。
既に歴史へと変わってしまった過去ではなく、体験として覚えている事件や社会を揺るがした出来事がひっくり返されていく感覚には、度肝を抜かれること必定。まさか、現代社会で仮想戦記めいた改変が出来るのか、というあの驚きは忘れられません。経済史とか社会情勢なんかに詳しくなくても全然大丈夫、現代の日本がひっくり返されていく痛快感は、たとえあの時代を知らなくてもたっぷりと味わえること間違いなし。
そして、何気に現代日本そのままではなく……佐藤大輔御大の名作【征途】の日本を彷彿とさせる、かつて北日本というWW兇砲茲辰特太犬靴進裂国家が存在し、そして統一されたという経緯を持つ異なる日本、北の闇を抱える日本、でもあるのです。
てか、「北海道開拓銀行を買収するわ」で始まるあらすじが他のライトノベルとまるで違うの、笑うしかないんですけどw


【探偵くんと鋭い山田さん 2 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる】 玩具堂(MF文庫J)

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いきなりぶっちゃけると、この間の【このライトノベルがすごい】の投票で二位に投票したのがこのシリーズでした。
この人の作品って、もうこれ以上無いくらい自分のストライクゾーンのど真ん中なんですよね。情景描写の神、とでも言ってしまいたくなるくらい。正直、この玩具堂さんほど情景描写や登場人物の仕草、表情なんかで心理描写を代替できる人を知りません。何も語られていないのに、その描かれる場の様子を見せられているだけで、鮮やかなほどに登場人物の心の動きが浮かび上がってくる様子はもう凄えの一言なんですよね。そうして描かれる日常シーンのなんと芳醇なことか。そうやって繰り広げられるラブコメのなんと濃厚で爽やかなことか。
今まさに淡く湧き立ちはじめた山田姉妹の恋心の行方、なんとも擽ったい戸村くんとのやり取り、そしてグイグイと引き込んでくる鮮やかな日常ミステリーの妙。
今自分が一番オススメしたい作品の一つが、これです。
これ、なのです!!
文句なしに最高なんですからね!


【魔女と猟犬】 カミツキレイニー(ガガガ文庫)

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今でこそ青春ラブコメの梁山泊として猛威を振るうレーベル「ガガガ文庫」でありますが、かのレーベルのもう一つの特色は、「異端」であり「怪異」であり「傷だらけの青春」でありました。
ガガガ文庫ならではの独特の雰囲気。他に類を見ない独自の空気感。それがガガガ文庫というレーベルをその誕生から疾走加速させてきたと言えるでしょう。そうしたレーベルの特色を担ってきた代表的な作家の1人こそ、このカミツキレイニーさん。他の誰にも書けない自分の世界を持っているその上で、それを見事にエンターテインメントとして仕上げることの出来る稀有な1人。
そんな彼の人が新たに描く、それは異世界ファンタジー。或いは異世界を舞台にした怪異譚。これは濃厚な人の闇と光を描き尽くすダークファンタジーになりそうだ。