【ホラー女優が天才子役に転生しました 〜今度こそハリウッドを目指します!〜】 鉄箱/きのこ姫 ガガガ文庫

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ホラー女優が碧眼ハーフの天才子役に転生!

貧乏育ちの苦労人ホラー女優の鶫(30歳。努力の甲斐あって演技力はピカイチ)が、自動車事故で即死。
転生した先は碧眼ハーフの超美少女つぐみ(5歳)で、ドのつくお金持ち令嬢だった!!
つぐみの両親はつぐみに「注入された」演技の才能をすぐさま見抜き、テレビドラマの子役オーディションへ飛び入り参加させる。
天使そのもののつぐみの身体を得た実力派ホラー女優鶫は、その奇跡に感謝し、そして誓った。

「今度こそハリウッドを目指します!」

3人の仲良し子役美少女、凛、珠里阿、美海と出会い、幼女の友情を育む。信じられない演技力でドラマの監督、脚本家、大ベテラン俳優を、驚愕させる。
妖艶すぎる5歳の演技で、大の男を骨抜きに。
世界がひれ伏す大天才女優(5歳)がここに誕生!!
おおおっ、面白かった! これは滅茶苦茶面白かっったッ!
面白すぎて、途中で止められずに寝る時間削りまくってしまった。おかげで今日は死にそうになってたわけですけれど。もう若くないんだから。
しかしてこちらは若すぎる肉体に転生してしまったホラー女優の桐王鶫さんである。
あまりに怖すぎる演技から、観客視聴者のみならず共演者たちをすら阿鼻叫喚へと叩き込んだ稀代のホラー女優、恐怖の申し子。
その彼女が事故死のあと20年後に生まれ変わって、もう一度俳優の世界を目指すお話。いや、目指すというよりも、蹂躙するというべきか、或いは降臨するというべきか。
はまり役ということでホラー映画やドラマなどを中心に活躍していた鶫だけれど、それが不本意というわけではなく、元々ホラー好きだし好んでホラー女優やってたんですね。
ホラー作品にばかり呼ばれる事に不満を感じていたり、不自由を感じていてもっと違う役をやりたい、なんて思っていて生まれ変わったのを期に本当にやりたかった主役ヒロインを演じるのだ、なんて事は毛頭考えていなかったわけだ。
それどころか、忌避される悪役を、そんなおもしろそうな役、やらないなんてもったいない、と嬉々として挑む、或いはかぶりつく演じるという事を何よりも好み、飢え餓えた役者だった。
そんな彼女だからこそ、生まれ変わっても望んで役者の世界に飛び込んでいく。何よりも、演じることに魅入られているから。まさに文字通り、彼女は生まれながらの女優だったのだ。
彼女の中には、前世で培われた経験がある、感性がある。並々ならぬ努力で身につけたそれは、才能というのだろう。彼女が生まれながらに持っていた才は、叩き上げで最低の環境から這い上がり積み上げてきた鍛造の才能だ。演じることの出来る喜びを知る才能だ。その場に立つまでの困難を知る才能だ。苦労を知らぬ挫折を知らぬ脆いガラスの才能とはわけが違う。
そうして培われた人造の天才だ。人々の心を恐怖で震え上がらせ、同じ役者たちの、ドラマ映画に本気で関わる人間たちの魂を鷲掴みにした、人造にして本物へと至った天才女優のそれである。
そして、死んでも治らなかった女優魂の塊だ。

尋常ならざる天才子役の出現、その演技を目撃した、或いは実際に演じてみて彼女の「世界」に飲み込まれた現役の役者たちに衝撃を与え、その衝撃は波紋となって界隈へと音速で広がっていく。
ここに出てくる名優と呼ばれる人たちは「本物」である。役者という職業に人生を賭け、生き様として刻んでいる人たちだ。ドラマの番組プロデューサーも、監督も、より良い作品を作らんと気を吐く「本物」だ。だからこそ、彼女の、つぐみの存在に衝撃を受け、刺激を与えられ、彼女が紛れもない本物で、なおかつ「怪物」である事を否応なく肌で感じ取り、歓喜する。
役に入り込んだつぐみの演技は、まさに「世界の降臨」である。ただの練習でも、オーディションでも演技テストでも、その場限りの即興劇ですら、相手の共演者まで現実と演技の境目を見失って自分の役へと没入してしまう。まさに魔性の演技、と言わんばかりの演出に、背筋がゾクゾクしてしまった。さらに外側に居る読者であるはずの自分まで魅入られてしまうような、圧巻の存在感。一瞬にして塗り替わる世界。
いやあ、すごかった。

一方でつぐみという子はプロ魂こそキマっているものの、かつてホラー女優であったと言っても性格は温厚で孤高というわけでもなく、共演者や制作スタッフにもよく気を遣って結構親しまれ、尊敬されていたようなんですよね。
両親から半ば捨てられたような家庭環境で、下積み時代には極まった貧乏生活に耐えながら役者を志し、底辺から這い上がってきた苦労人。だからこそ、人にも優しく出来る、というタイプの人だったのだろう。
それは今世にも引き継がれていて、オーディションを通じて知り合い友達になった同じ世代の子役たちとも、前世の分の経験があるからと上から目線にならず、あくまで役者仲間として対等の視点で見ているようなんですよね。逆に言うと年長だろうと先輩だろうと、役者として対等に、尊重はしても譲りはしない、という穏やかながらプロらしいふてぶてしさを兼ね備えているのですが。
この前世で事故死してから二十年後に生まれ変わった、という二十年という年月が結構重要なキーポイントでもあるようで。
二十年、って充分知り合いが亡くなったりせず業界で現役で居続けているけれど、立場やなんかがそれぞれ変わっていたりする年月なんですよね。かつて自分よりも年下の子役だった人たちも、それなりの年齢になっていたりする。かつての役者仲間たちの現在に思いを馳せ、思わぬ再会が待っていたり、という展開もあり、また新たな世代が台頭してきていたり、と。
そんな中で二十年前に夭折した天才ホラー女優の存在感は、今業界の重鎮となっているかつての同世代の仲間たちの中でしっかりと根づいていて、だからこそ余計にその天才女優の面影を演技から彷彿とさせる新たな天才の出現に、誰も彼もが平静で居られなかったのでしょう。
とまあ、二十年のギャップというのは他にも色々あって。うん、二十年前にはスマホなんて想像しなかったよね。あんなん、二十年前だとSFのアイテムですもん。まさかパソコンと同等の機能を持つ機材が携帯電話の中に集約されるとか、100年後の世界の超科学アイテムでしたもんね。
VHSもビデオデッキ連結して一生懸命ダビングして。うんうん、わかるわかる、わかってしまう。
まだ連続して時代の変化の中にいたからこそついていけてるけど(ついていけてるか?)、二十年の空白があって現代に降り立ったら、ちょっと技術レベルのギャップは訳わからんことになってるよなあ。
というわけで、5歳にしてなんかおばさんくさい、と同世代の幼女に評されるつぐみちゃんでありました。
ってか、今どきって5,6歳の小学生にあがるかという子にまでスマホ持たせてるの珍しくないんですよねえ。
早速両親から与えて貰ったスマホを扱いきれてないつぐみちゃん。それ、5歳の幼児だからではなくて、おばさんだから謎機械にあっぷあっぷ、なんですよね、つぐみさん。スマホを買い与えた際のうちの母(70)の反応とよく似ているぞ、つぐみさんw

とまあ、この時代に生まれ変わったつぐみちゃんは、頼めばスマホを買ってもらえる、どころか演じる事が好きだと知ればすぐにオーディションに参加させてくれたり、付き人も自前で用意してくれたり、というか所属事務所まで自分たちの会社で立ち上げたり、と超お金持ちの家で美男美女、パパの方は外国人という両親にこの上なく愛情を注がれる、衣食住全てに満たされている幸せ一杯の環境にある。望めば、すべて与えて貰える環境だ。
それは、前世の何も持ち得なくて自分ですべて掴み取っていった環境とは真反対の、恵まれたとしか言いようがない環境。光だけに包まれた世界だ。
それが、つぐみの中でわずかに齟齬をうみだしている。
これに気づいているのが、同じ天才子役と謳われている夜旗虹、というのがまた面白い。この生意気兄ちゃんもまた、本物の天才なのか。
同じ天才だからこそ気づいた、つぐみの中のちぐはぐさ。ハングリー精神など全く必要とされない現在の環境と、つぐみの中で息づいている鶫の時代から培われた役者魂のあの獰猛なほどの情熱は、どこかで噛み合っていないのだという。
愛を知らず、だからこそ恋い焦がれるように狂的に愛を演じる事ができた前世と違って、今のつぐみは本当の愛を与えられている。だからこそ、今の自分がどうやって愛に甘えるやり方が分からない。今の自分が鶫のように演じることが出来るのか。鶫のように演じるのが正しいのか。
まだ、彼女の演技は未完成、なのだろう。
今の段階でなお、未完成なのだ。ということは、さらにこの上があるということ。これよりももっと高みが、彼女の前には存在しているということなのだ。
その事実に気づいた時、残念どころかゾクゾクしてしまった。背筋がブルブルと震えてしまった。これより凄いものを見れる可能性がある、という事実に恍惚となってしまったじゃないですか。
この子にはまだ先がある、まだ上がある! 
それに、まだドラマははじまったばかり。彼女の舞台はまだ一度たりとも幕を上げていない。本番ははじまっていないのだ。まだこの段階で前座の前座でしかない。
これはもう本当に、楽しみで仕方ない。続きを読みたくて仕方ない。またぞろ、とんでもねー作品が出てきましたよッ!