【探偵くんと鋭い山田さん 2 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる】 玩具堂/悠理なゆた  MF文庫J

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可愛くて鋭い山田さんの学園ミステリー、第二幕!

山田姉妹と戸村に今日も奇妙な事件(相談事)が寄せられる。我が校の卒業生でもある副担任のさぁや先生の依頼は、彼女が高校生のときに起きた「原稿消失事件」。文芸部の部誌に載るはずだった直前に消えた状況は、確かに不可解で……?あいかわらず平常運転で絡んでくる雨恵と雪音の山田姉妹につつかれながら、またも俺は矢面に立たされるのだった。
だんだん雨恵と雪音の性格も把握してきた2人の距離感は……やっぱ、近すぎるよね!? そして赤面してるよね!? 可愛くて鋭い2人の山田さんと俺とで解き明かす、ちょっと甘めの学園ミステリーラブコメ、第二幕!「よし! プールで推理しよう!」ええっ!?

この作者さんって、ほんと女の子の「素足」好きですよねえ。玩具堂さんの描く作品の歴代ヒロイン、みんな学校でも靴下脱いで素足で足ブラブラさせてるんですから。この二巻ではカラー口絵で机の上に素足で腰掛ける雨恵のイラストが。戸村くん、結構がっつり生足見てるのですけど、たしかにこれは思わず目が言ってしまう脚線美。
さて、今回探偵三人組に持ち込まれてきた3件の事件。ネットゲームの中の人を特定して欲しいという依頼。先生が高校生の文学部時代に消えてしまった小説原稿消失事件の真相を探れという依頼。そして、SNS上での素性も知らない友人を現実で見つけてくれ、という依頼。
どれも、手がかりらしい手がかりもない所から、僅かな情報を頼りに山田姉妹と戸村くんとで顔を突き合わせてワイワイガヤガヤと大騒ぎしながら真相を解き明かしていく、これがまた面白い。いや本当に面白い。
どれもこれも、あるのは断片的な情報だけなんですよね。
ネットゲームの中の人当てなんか、オフ会で実際に顔を合わしているものの、そのオフ会の様子も依頼者からの又聞きな上に大した情報なんて全然ないように見えるんですよね。
先生の原稿探しも、事件自体はもう何年も前に終わってしまっていて、原稿がなくなった状況とその失われた短編小説について書かれた先輩方の評論しか手がかりがない。
最後のSNSの依頼に至っては、SNSにアップされた風景写真くらいが手がかりだ。
これを三人協力して、というよりも役割分担なんですよね。雨恵、雪音、戸村と三人ともこなす役割が違っていて、それが謎をとき、説いた謎をもとに事件を解決して、大団円という所まで持っていく形になっている。ろくに情報もない所からジグソーパズルを組み上げるみたいに真実を見出すこと自体は天才肌の雨恵が拾い上げるのだけれど、その説いた謎をもとにちゃんと関係者みんなが納得する形で事件を解決する、或いは着地させるのって戸村くんであり、その筋道を準備するのが雪音なんですよね。これ、1人でも欠けると事件が解決しました、ってことにはならないんだよなあ。
うん、この三人というのがいいんですよね。
山田姉妹が両隣の席にいて、戸村くんは挟まれた二人の間の席にいる。ただそれだけなら、仲の良い姉妹はどちらかの席まで回って移動しておしゃべりしてればいいのです。でも、この双子は間に戸村くんを挟んだまま喧々諤々喧嘩したり仲良く会話したり、と戸村くんの頭越しに、或いはその目の前でコミュニケーションを取って、その中に自然と戸村くんを巻き込んでいくのである。
間に挟まれて喧嘩されて、困り顔で仰け反る戸村くんの顔が容易に思い浮かぶほどに毎度のごとく。
ついでに、この二人、わりと遠慮なしに戸村くんと距離詰めるんですよね。近い近い、と言いたくなるほど。特に顕著なのが雨恵の方で、靴下脱いだ素足で戸村くんの膝をグリグリと踏んでみたり、肩の上にぽんと顎を乗っけてみたり、人が喋ってる間に顔を突っ込んできて間近で覗き込んできたり。距離が、近い!
一方の雪音こと雪さんも雨恵ほど露骨でないけれど、むしろ余計無自覚な所があって無防備にグイグイと顔を近づけてきたり、雨恵と掴み合い取っ組み合いしてる最中に身体押し付けてきたり、とだから距離近いってw
年頃の男の子からすると、この二人の物理的距離感の近さはなんかもう仰け反ってしまうものがあると思うんですよね。片方は言うと余計に面白がりそうだし、もう片方は言ってしまうと赤面してでもしばらくするとさっぱり忘れて同じことを繰り返しそうな無防備さだし。悩ましい、嬉しいけど悩ましい、という感じになっている戸村くんが何とも微笑ましいばかりなのです。
決して明確な台詞で語られることはないのだけれど、うんこれ毎回玩具堂さんの作品では語ってしまうのだけれど、言葉ではなくて仕草で心の動き、心理描写、その時の感情が伝わってくるんですよね。一話目なんかでも、PC画面を見るのにこの双子、同じ椅子に仲良くちょこんと二人で座ったりするのですけれど、話が進んでいく過程で会話内容とは別に最初は仲良く寄り添ってたのが、途中からお互い尻を押し合って相手押しのけようと押し合ってたり、とほんと落ち着かないわけですよ。特に雨恵なんかいつもグデーっとしてるのだけれど、一瞬たりとも落ち着いていなくて、いろんな動きを会話とは別の所でしているわけです。それは同時に、その瞬間瞬間の彼女の気分も示していて、それが雪音たち他の人たちも同様に細かく仕草とか態度が描写されているものだから、台詞なくても掛け合いがなくても、その場の空気感の変化がリアルタイムで感じ取れる。
まさに、目に浮かぶように彼らの姿が見えるんですよね。
これだけ細かく、ただのおしゃべりのシーンで個々の人物の仕草とか表情の変化とか些細な動き、目線なんかを描写する作品というのは決して多くはないのではないでしょうか。少なくない作品が、会話は会話だけでそのシーンを描写しきろうとしてしまう。情景描写は舞台というだけで、登場人物の内面まで表現するものではないからでしょう。
でも、本作はまさに細部に神が宿っている。ほんの小さな表情の変化や、雨恵の突拍子もない動きや、雪さんの何気ない仕草が、キャラに生気を帯びさせるのである。その場の空気に風を感じさせてくれるのである。そうして伝わる心の動きが、この子たちをより生き生きとさせてくれて、そこから伝わってくる彼ら自身言葉にし切れない感情の弾みが、たまらなく彼らを可愛らしくみせてくれる。
ほんと、瞬間瞬間にたまんねー、と悶絶してしまうシーンがあるんですよねえ。
そうして浮かび上がってくるのは、山田姉妹が戸村くんに抱く彼女ら自身がまだ理解していない特別な気持ちである。それは姉妹への対抗心も相まって、複雑怪奇に入り組んで、思わぬ仕草となって発露するのである。それを実に細かく鮮やかに、でも囁かにさり気なく描いてくれるから、すぅっと空気感として染み込んでくるんですよねえ。
いや、ほんと好きだなあ、この作品は。
雪さん、たけのこを戸村くんの口に押し込んだ雨恵に対抗心燃やすのはいいけど、手ずからキノコチョコをあーんと彼の口に放り込むのは、相当に大胆だと思いますよ。
プールで三人、熱い夏に頭を冷やして推理するためと称して水被せ合いながら遊んでるのなんて、そりゃまあ三人でイチャイチャしてるようにしか見えんわなあ。山田姉妹、水着にシャツという凶悪装備でしたし。
でも、そんな山田姉妹にもそれぞれ抱えているコンプレックスみたいなものがあり、周りと馴染めないものを抱えている。そういう自覚しているウィークポイントを、この戸村くんはさり気なく包み込んでくれるわけですから、双子ともこの隣の席の男の子に対してなんかこう言いようのない特別感を抱いてしまうのも無理ないわなあ。
雪さんの方はこれ、わりとストレートに男の子として意識しだしているようにも見えるけれど、雨恵の方だって特殊な性癖……と言ってしまうとあれだけれど、お気に入りと言って憚らないようですし。
その戸村くんも、探偵というお仕事に対して思う所ありながら、いや嫌悪に近いものを感じていたものの、山田姉妹と探偵をやっているうちにそれを楽しいと思い始めていたことへのもやもやをずっと抱えていたわけですけれど、三件目の事件、あれはだいぶセンシティブ、繊細な心の機微に踏み込む事件であったけれど、それを通じて仕事としての誰かの秘密を暴き出す探偵業ではなく、知恵を出し合い人の複雑な関係が織りなす謎を楽しむ、さぁや先生が保障してくれた言葉をもとに、そしてこれまでの探偵してきた体験を胸に、彼なりに探偵するということへの答えが出たことは、さて、さて、うん、うん。

さても、偶然席替えによって成立した双子と戸村の奇妙な共有空間、共有時間。でもそれは次の席替えによって必然的に終わってしまうもの。偶然は続かない。
もし、それでもその席が、この構図が続くのなら、それは必然だ。みんなが望み、本人たちが望んだものだから。
皆が探偵を欲し、本人たちも探偵を楽しむことを選んだから。
三人一緒に、三人で。双子と彼で探偵だから。