【失格から始める成り上がり魔導師道! 〜呪文開発ときどき戦記〜 3】 樋辻臥命/ふしみさいか GCノベルズ

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アークスが発明した「魔力計」はライノール王国の各所で大きな成果を上げ始めていた。
しかし魔力計の増産に必要な物資「魔法銀」――その原料となる「銀」が不足してるという。
事態を解決するため、アークスはノア、カズィと共に王国の西に位置するラスティネル領を目指し旅立つのだが――

待ち受けるのは新たなる出会い、
張り巡らされた策謀で……?
魔力計の生産、国家機密の塊でその存在も伏せられ、製造についても秘されている以上、その秘匿にはよほど気を使わないといけないとはいえ、原材料不足を作成者のアークス自ら調達しないといけない、というのは大変というか負担大きすぎやしないですかね? と、思ってしまう。まあ国家事業とは言え、余計な横槍なしにアークスが魔力計関連については一切を取り仕切っているからこそ、なんだろうけど。
これまでも、諸外国の諜報の手は伸びていたものの、魔力計の存在についてもその詳細についてもなんとか防諜は出来ていたものの、ここに来て国境地帯が不穏になってきたか。
アークスが自ら調達に動かなくならなくなった国内における銀の流通の不安定化に加えて、小麦や塩といった必需物資までが各地領主の介入を越えて値上がりし、とここまで市場が不自然に動いていたらよっぽどぼんくらでなかったら王国中枢も絶対気づいているでしょう。一般生活に支障が出るくらい急激に市場を動かしてしまったら、拡声器使ってなにかやってます、て言ってるようなものですし。
一応、その動きの根本については隠していたようだけれど、それまでに某伯爵家が銀をかき集めていた、という事実がある以上はまず疑いはそこに向けられるのは自然なわけで。
実際、セイラン王太子による査察が入ろうとしていたわけですしね。ただ、伯爵側が戦争も辞さず、という覚悟で物資を掻き集めていただけに、王太子が領内に入るのは飛んで火に入る夏の虫だったとも言えるので、ちょっと危うい状況でもあったのか。
でも、伯爵が表で買い集められなく為った銀を、謀略使ってさらに集積しようとした際に雇ったメンツの質の悪さを考えると、伯爵もぼんくらではないんだろうけれど指し手としては脇が甘すぎて、所詮使う側じゃなくて使われる側だよなあ、これは。
ただ、ラスティネル側も本来この伯爵を監視する立場にある以上、彼の裏切りを見逃していたのみならず、領内での活動を許してしまっていた、というのは失態ではあるんですよね、確かに。
流通や相場の動きの不自然さには気づいてもその目的や根本まで辿れずにいた、というのはさすがに辺境領主に求めすぎだろうか。ルイーズさんは、見た目からしてまずぶん殴るタイプだしなあ。文治に疎いわけではなく、領内の経済をちゃんと把握し領主として統治もしっかりしているようなので、脳筋一辺倒というわけではないのでしょうけれど、それでも情報戦や諜報戦が得意なタイプとは間違っても言えないでしょうし。
しかし、ルイーズ・ラスティネル。ほんと見た目が凄い。ここまで歴然と女山賊然とした格好してる女領主はここまで来ると逆に珍しいぞ。しかもお母ちゃん。旦那さん、どんな人なんだろうと逆に気になってしまうくらい。
いや、こうしてみると全然貴族っぽくないんですよね。彼女だけではなく、領内の領主格の殆どが最前線を担う武門の豪壮さを垣間見せている。まあ、王都の貴族もあんまり貴族貴族していなくて、軍人や官僚という側面を強く見せていただけに、ライノール王国の貴族というのは貴種というよりも代々続く武家の一門、などという専門職の気風が強いんでしょうね。アークスの家も軍家として名高いわけですし。
さても、辺境の騒乱、ひいては国境地帯でせめぎ合う帝国との不穏な情勢の最前線に飛び込むことになったアークス。まさにここでタイトルの「ときどき戦記」のパートに入ったわけですな。
巻き込まれただけ、と言いたい所だけれど、この自体が起こる遠因となったのはアークスの魔力計の開発が深く関わっている上に、今起こってる激しいアンダーグラウンドでの鬩ぎ合いの中心はまさに魔力計の情報に関することだけに、アークスが無関係に巻き込まれたとは言えないんですよねえ。
まあ魔力計の開発者がアークスだという事は未だほぼ秘匿されているだけに、巻き込まれたのは偶然は偶然なのでしょうけれど。
しかしここで国王陛下と師である伯父と深い因縁を持つ歴戦の魔導師と出会うことで、アークスは今までで最大の敵と対決する事になるのである。
ノアとカズィと三人がかりですら圧倒できず、という格上と戦ったのはこれが初めてだったんじゃないだろうか。威力と革新性を、技量と経験値で払われたという感じで、本物の歴戦の魔導師相手の魔術戦はここまで深い読み合いと捌きあいになるのか。今までここまである意味噛み合った魔術戦が成立することがなかっただけに、彼との一戦は非常に見応えのあるものでした。
でも、お互いまだ命がけでの殺意コメての戦い、というわけではなく様子見の段階でもあっただけに、さてお互い退けない状態での戦いとなればどこまでのものになったのやら。

ここに来て、アークスも初めて同世代の男の子の友人、みたいなものと出会ったわけですけれど……男ですよね? 見た目じゃわかんないんだよなあ。性格的にも快活でわんぱく真っ盛りといった元気な男の子なのですけれど、その母親があの女山賊だけにわっかんないんだよなあw