【クラスメイトが使い魔になりまして 4】 鶴城 東/なたーしゃ ガガガ文庫

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最悪改変の世界。俺は千影を振り向かせる!

落ちこぼれの芦屋想太には藤原千影という分不相応な使い魔がいた。
紆余曲折あった末に、晴れて恋人同士となったはずだった。
しかし、ソフィアとの対決で瀕死となった千影を救うために、想太は「神様」を頼ってしまう。
そして、その対価は……千影から想太を取り上げることだった。
最低最悪に性悪な「神様」はまたも世界を改変し、千影との日々の記憶をなきものとした。
改変されたこの世界での想太の恋人は、よりによって「あいつ」……!!
千影、旭、美砂、そしてソフィア。4人の想太への想いが激しく交錯する最終巻。
想太と千影の運命が決する、「険悪なのに相思相愛」主従ラブコメ、ここに完結!!
ああ、神様を喚んだ時点で勝負は終了ではなくて、ちゃんと約束の期日までは勝負続行だったのか。
世界を改変して想太の記憶含めて全部消し去ってしまったとはいえ、神様も律儀なことである。
いや、確かに美沙神がやってる事ってアコギもいい所で相手の気持ち無視してやりたい放題酷い事は間違いないのだけれど、勝負に関しては絶対にルールは遵守していたし、もっと自分に都合の良い状況は設定できたと思うんですよね。
記憶さえ戻ってしまえば、一気に美沙が窮地に陥ってしまうほどのアドバンテージだったわけですし。対策も取ってたというけれど、かなり脳筋というか力任せの対処療法でもっとエゲツないどうやっても抗えないようなドス黒い陰険な罠だって張れただろうに、そういうやり方はしてなかったんだよなあ。
じゃあ美沙が本気じゃなかったのか、というとそんな事はなくて、もうみっともない程ジタバタして八つ当たりするわ泣き喚くわ地団駄を踏んで転げ回ってしがみつくように勝利にこだわっていたように、本気も本気、これ以上無いくらい想太に執着しまくっていたのが彼女だったんですよね。
いやもう、あそこまでみっともなく無様に醜く本性をさらけ出してでも本音で叫んでむしゃぶりついてくる美沙の姿、その突き抜けっぷりを見せられるとなんか絆されてしまいますよ。ひでえ奴なんだけど、人間ちっさいし心狭いし性根曲がってるし根性悪いしなんかもう醜いんだけど、そうなってしまうほど本気だったのは伝わってきた。想太の事が好きで好きで何としてでも離したくなかった、というのは伝わってきた。本当に好きだからこそ、どれだけ卑怯な真似をしても手に入れたかった。でも、本当に好きだからこそ最後の一線は守って勝負にこだわってしまった、というあたりこの神様は人間そのものだったんですよねえ。
まあそれでも、千影のほうが良い、という想太の気持ちに関しては、うんまあそうだろうね、とうなずいてしまうのだけれど。どれだけ絆されても、可愛げを感じても、それはそれこれはこれ、こいつの人間の器が極めてちっちゃくてやべえやつ、というのは変わりませんからね。
ただ想太が彼女に記憶を弄ばれ、人生を奪われ、好き勝手されていた事に嫌悪と憤怒を感じていた事に関しては、気持ちはわかるが美沙の気持ちもわからないでもない、という塩梅に収まってしまったんですよね。それだけ、美沙に絆されてしまった、という事なのでしょう。
だいたいさ、確かに美沙のやってる事はひでえの一言で相手のことなんにも考えてなくて自分本位、自分が優先、自己満足のために想太を含めて全員を振り回して踏み躙ってきた事は間違いないですよ
でもね、それはそのまま想太たち他の面々にも多かれ少なかれ当てはまることでもあるんですよね。
想太がソフィアにした仕打ち見てみなさいよ。あれは本当にドン引きでしたぜ。それでなくても、想太の言動ってかなり無神経な所があってそこまで言うか、そこまでするか、というような結構相手をざっくり傷つけるようなものがあったりするんですよね。それは想太に限らず、千影も似た者同士で同じようなことをやってますし、ソフィアなんかは自分優先自分本位の権化みたいなもの。マリ姉こと三条茉莉花もこの人はかなりマトモな側な人で、美沙に誘導されていたのだけれど、彼女も千影相手にかなりやばいことしてますしねえ。
そもそも発端は想太の自己満足の勝手な行動だったわけで、この巻で最後まで拗れたのは千影の同じベクトルの自己満足だったわけで。ほんと、面倒くさいのしかいないのか。
いや、面倒くさいのしかいないからこそ、この物語が成立してしまったのですけどね。
誰も悪くないのに運命の悪戯で劇的に状況が悪化してしまう、なんて展開は結構見ますけど、本作でいうと誰も彼もが悪いので、案の定シッチャカメッチャカ酷い事になりました、てなもんである。全員ギルティ。
千影に相手にされない事で、かつて記憶のない自分に一生懸命アプローチしていた千影を素気なくあしらっていた事を今我が身に似た仕打ちを受けることで強く後悔し反省している想太だけど、ほんともっと色々と反省した方がいいと思うぞ。これまでの世界改変で受けた苦難でもだいぶ報いは受けたと思うけれど、少なくともソフィア案件については殆どなんにも返せていないですしねえ。
神様に対抗するには大魔王に縋るしかなかったとはいえ、あれほど狂乱していたソフィアがこうもマトモになっちゃって協力的になってしまうとは、意外なんてもんじゃなかったです。
ある意味この人が一番純真に自分本位を貫いていた、とも言えるのでしょうけれど、ソフィアってもう想太からなにか貰おうとは微塵も思ってないんでしょうね、これ。あくまで自分で奪い取る、自分から想太にさせる、ことが前提で。それはもう潔い自分本位なんですよね。自儘に振る舞うのなら、相手に何も期待しない、一方的に自分の望むようにさせるのみ、というある意味の一途。
まあ、一度期待して相手からナニカしてもらおうとして、そりゃもう凄まじい裏切られ方、捨てられ方しましたからねえ。
……あれ、魔神相手でなくても、普通の女の子だろうと背中からナイフでグサリっとやっても何も不思議でないヤリステっぷりだったもんなあ。むしろ、ソフィアは狂乱したまま発狂したままだったからこそ、狂気が狂気として突き抜けてしまったからこそ想太を我が物にしようとして神に全部持っていかれそうな局面ゆえに全面協力してくれた、と見た方が安心できるんですよね。正気に戻ったら絶対殺すだろう、惨殺するだろう、あれだけの事されたんだから。マトモなら、ぶち殺さずにはいられないだろうし。
とまあ、登場人物の人間性について、こいつら酷くね?というコメントを綴ってきてしまったわけですけれど、不思議とみんな嫌悪感とか忌避感は感じないんですよね。いや、想太については折々ドン引きしてたけど。とはいえ、そういう剥き出しの生臭いほどの自分本意さが妙な人間味を感じさせて、愛着が湧くというか可愛げを感じるみたいな感覚を抱いてしまったわけです。美沙に絆されたのもその一環で。好き、というのはなんか違うか。親しみ、というのが一番近いか。だからまあ、想太と千影が想い通じ合って結ばれたのも良かったなあ、と思うし、なおもジタバタしてみっともなくあがいている美沙にも微苦笑とともにまあ頑張れ、なんて思ってしまうわけで。
そんな風にこのキャラたちに想いを持たされた時点で「やられた」んでしょうね。うん、面白かったです。