【お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件 3】 佐伯さん/はねこと GA文庫

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皆さん周くんと仲良くしてるのに、私だけのけ者みたいです」
二年に進級し、同じクラスになった真昼と周。徐々に学校でも距離を近づけようとする真昼とは裏腹に、周は“天使様”への遠慮からなかなか踏み込めずにいる。
千歳らの気さくな振る舞いをきっかけに、クラスメイトたちとの間の壁も少しずつなくなりつつある真昼の姿を眺めながら、周は治りかけの古傷をそっと思い返していた……。
Webにて絶大な支持を集める、可愛らしい隣人との甘く焦れったい恋の物語、第三弾。

ぶぁああー、もう焦れったい!! 面倒くさい、周が面倒くさいぞこの男。
前巻でも相当に周のあの真昼の気持ちを勝手に決めつけて予防線を張る考え方には眉を顰めてしまったのですが、本当に頑なに真昼が自分に好意を抱いていることを認めないのだ、この男。
一方で、真昼のことを好きであるという自分の感情はもう無視できなくなって受け入れている。彼女に好きになってもらいたいという気持ちもある。彼女と本当の恋人になりたいという願望もある。彼女を自分の手で幸せに出来るのならしてあげたい、と思うようになっている。
それは現状維持にしがみつこうとする姿勢よりも余程立派だ。そう考えられるようになっただけ成長なのかもしれない。
でも、また予防線を引くのだこの男。自分の気持ちをぶつけて好きになってもらう、のではなくなんかしらこう真昼に自分のことを好きになって貰ったら、そうしたら告白する、って。好きでもない男に告白されるのは嫌だろうって。
そりゃね、間近でやたらと告白されて断るのに苦労している彼女を見てたら、安易に踏み込めないのもわからなくはない。
でも、躊躇している理由の大半は彼女じゃなくて、周自身にあるんですよね。ヘタレめ、このヘタレめ。彼女を幸せにするのは自分じゃなくてもいい? それこそ予防線だ、言い訳だ。
嫌われるのを怖がるのはいい、今の関係が壊れてしまう事にビビって腰が引けてしまうのだってそりゃ当然だ、仕方ない。ヘタレにだって人権はあるさ。でも、言い訳して相手に理由をおしつけるのは格好良くないぞ。真昼が自分を好きになってくれたら? 
だいたい君、真昼に好きになってもらうと自覚的に自分で考えてなにか具体的な行動を取っただろうか。
無自覚に自然に真昼に対しての言動で、真昼の好感度はガンガン稼いでますよ、そりゃ。素でイケメンな性格で優しくて、何も考えて無くても普通に親身に真昼に接することで、彼女の事を考えて彼女のために色々と身を粉にして心を砕いて真昼に寄り添っている、そりゃ幾らでも好きになって貰えますよ。
でも、それは周くんが自分で考えて、積極的に彼女に好きになってもらうために何かをしたものじゃないんですよね。素でそれをやれているという時点で、まあアレなんですけど、でもそれはあくまで自然体での行動だ。自分から告白するに足る何かを手に入れるための努力を、試行錯誤を、模索を、彼はしていただろうか。
いや、いいんですよ? 別にそんなものしなくても、本来なら。相手を好きになり、相手の娘が自分を好きになってくれたのなら、それで気持ちを通じあわせて想いを告げて、そうやって結ばれるのはふつうのコトです、当然のことです。
でも、周はそれを受け入れられず、認めず、自分のことを好きになって貰えたらそこでようやく告白する権利を得られるのだ、と考えている。
なら、その権利を得られるように頑張りなさいな。自分でルールを作り、ハードルを置いたのならそれに向き合いなさいな。現状の二人の関係は既に同棲カップルか新婚夫婦みたいなダダ甘空間空間を形成しているような状態だ。すでに今の状態で満足度は満たされてしまっていても不思議ではないくらいナチュラルにイチャイチャしてるんですよね。だから、今のままでいいや、と何もする気にならないのは仕方ないのかも知れないけれど、それこそダメ人間だからね! なんか、別の方向でこの青年、タイトル通りに駄目人間に成り果てようとしていやがる。

だいたい、女の子が好きでもない男に髪触らせたり膝枕したり添い寝してりデートしたり抱擁したりとかするか。乙女舐めるな。真昼のことをなんだと思ってるのだ、この男は。周くんだけです、と彼女が何度繰り返しているか。
しかし彼は認めないのである。真昼が自分を好きだとは決して認めない。いや、あんた好きになってもらいたいと言いながら、なんで認めないの? どうやったら認めるの? 
作中でも指摘されているけれど、完全に意固地になってるんですよね、彼。頑なになってしまっている。友人の言葉は聞き入れないし、自分の感覚も信じない。繰り返し繰り返し自分に言い聞かせて、自己評価をハンマーで叩き潰すことに勤しみ続けている。真昼がどれだけ叱っても、卑下するなと怒っても、一番根底のところで頑なに耳をふさいでいるのである。
こりゃあだめだ、ここまで言って聞かせて態度で示して周りから諭しても頑として受け入れないのなら、もうどうやっても無理だ。周の側から自力で自助努力で翻意させるのはもう無理だろう。
こっそりと部屋の中だけで、外ではコソコソと変装して出かけるだけの閉じた関係では我慢できなくなった真昼が、学校でも疎外感を感じて寂しい思いを募らせた真昼が、ついに痺れを切らして公にも周との関係をもっと近しいものであると周知しようと動き出したのは、この場合正解だったのだろう。
天使様と呼ばれて特別な扱いを受ける真昼は、自分の取り扱いに関して非常に慎重だし、それに周を巻き込んで彼に迷惑をかけることは本意ではないだけに、不用意に二人の関係が露呈するような真似こそ安易にしないけれど、ついに積極的に距離を詰めだしたことは寿ぐべき事なのでしょう。もうね、真昼側から周のこと崩してくれないことには二進も三進も行かなくなってしまっている。
いっそ、世間は関係なしに二人の間の事に関してはもっともっと積極的に一気呵成にいってしまってもいいんじゃないか、と思うくらい。この男は匂わせたり示唆したり、では見ても目をそらすし聞いても耳をふさぐし、意識させてもそれを否定してしまうから、言い訳しようのないくらい真昼の方からズバッと斬り込んでしまうしかないのだ、もう。
その意味では、ラストの真昼の発言は。学校での公の発言ということもあって本気も本気、気合い入りまくったある意味告白とも言える決意表明で、宣戦布告で、これはもう痛快ですらありました。
本人に直接言うよりも、大胆不敵でいやあ格好良かった。
どうだ藤宮周くんよ、しかと聞いたかね? 受け止められたかね?
こいつこそ、天使様の「throw down the gauntlet」だぜ?