【俺、ツインテールになります。 16】 水沢 夢/ 春日歩 ガガガ文庫

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トゥアールの復讐の旅――ここに終着。

女神ソーラの力を借り、イビルツインテイルズを撃破した総二たち。しかしその戦いの最中にアルティメギル最高科学者マーメイドギルディは、究極の最終闘体・エンジェルギルディへと進化。トゥアールに衝撃の事実を告げる。「あなたはもうすぐ死ぬ」――属性力を自ら捨てた反動で、自覚のないまま生命を削り続けてきたのだと。
トゥアールの心を強く持たせるため、総二はテイルレッドの姿で要求に応え、愛香も発明品で擬似的に幼くなることを渋々了承。仲間たちの献身で元気になったように見えたトゥアールだったが、彼女はすでに、自分が手遅れであることを自覚していた。一方、強大な力を手にしたことで増長したエンジェルギルディは、アルティメギルの意志から外れて己が欲望の赴くままに暴走。自ら作り上げた要塞へとトゥアールを連れ去る。テイルギアの力が通用しない「テイルギアそのもののエレメリアン」を相手に、ツインテイルズに勝機はあるのか!? そして、トゥアールが下した決断とは!?
ツインテールを愛し、孤独に戦い、守り……全てを失った。
悲しみの果てに仲間を得て、恋を知った。
運命に翻弄され続けた少女――トゥアールの復讐の旅が、ここに終着を迎える。

そうか、これがトゥアールの旅の終わり、終着点だったんだ。
自分の世界で最初のツインテイルズとして独り戦い続け、そして破れてツインテール属性を喪ったトゥアール。自分から、そして自分たちの世界からツインテールを奪い去ったエレメリアンに復習するため、自身のツインテール属性を込めたテイルギアを手に、この世界を訪れて総二たちにツインテイルズとして戦う手段を与えてくれた彼女。以来、総二たちの頭脳として軍師として博士としてずっとサポートし続けてくれた。仲間として、ツインテイルズにこそなれないものの一緒に戦ってくれていたトゥアール。
でも、彼女の旅はずっと今まで続いていたのか。彼女にとって、ここは帰るべきホームではなかったのか。エレメリアンと戦うために訪れた異邦の地だったのだ。
普段、その人類の域を遥かに超えた頭脳を反転させたようなバカ極まる言動で、シモネタで、エレメリアンをすら上回る変態性で、場を盛り上げ続けてくれていたトゥアールが、この巻ではほとんどいつものような元気を出せずに、辛さを表に出さないように笑顔で心を隠して空元気で振る舞う姿は痛々しいばかりで、この作品の陽気さというのはホントにトゥアールに支えられていたんだなあ、と痛感させられた。
一方のエレメリアンも、今までは変態ながらも矜持と誇りを持ち尊敬でき親しむとが出来、そのおバカさと健気さに愛おしさを感じるばかりだった歴代のボスキャラたちと違って、マーメイドギルディ改めエンジェルギルディは、正真正銘のゲス野郎。魔道に堕ちたツインテール。友情も愛情もエレメリアンたちを成り立たせる属性への想いも踏みにじる、敬することの出来ない敵。ただの敵。
これが思いの外辛かった。まさに、この作品のもう一方の主役であり主人公は、エレメリアンたちでありましたからね。そして、話をギャグでもコメディでもシリアスでも熱さでも盛り上げてくれたのが、彼らでありましたから。
片や味方のトゥアールと、片や敵側のエンジェルギルディ双方ともがこんな調子だと、話そのものが重苦しくなるばかりでしたから。

トゥアールの、本当の意味でツインテイルズと一緒に戦えない悔しさ、どれだけ望んでも自分の中から喪われたツインテールは取り戻せず、自分の髪を2つに結えない苦しさは度々描写されてきましたけれど、そのどうしようもな事実がどれほど彼女を傷つけてきたか。
それどころか、今度はその自分の中からツインテール属性を抽出してしまった事が、自身の生命を文字通り縮めてしまってたこと。そして寿命が今間近に潰えようとしている事実を前に、怯え苦しむ彼女。どれほど覚悟していたからと言って、怖くないわけがない。未練がなくなるわけじゃない。どれほど絶望的だろうと諦めずに自分を救おうとしてくれている仲間たちへの愛情が、そのまま離れがたい気持ちとなって余計に未練を募らせていく、もっともっとこの人たちと一緒に居たいという乞い願う想いの強まりを加速させ、だからこそ余計にトゥアールを苦しめていく。ここの彼女の苦悩はそのままダイレクトに伝わってきて、本当に辛かった。
彼女を勇気づけるために、「幼女喫茶!」とかみんなで幼女になってトゥアールを饗そう、とか、「並々ならぬ幼さを漲らせ」とか「よし、幼い!」とか、人類言語として本来なら存在していない領域の文章が当たり前に文脈の中に混入しているあたりは、毎度の本作らしくて相変わらずだなあ、と菩薩の如きほほ笑みを浮かべながら遠い目になったものですが。
まだ早い、人類にはまだ早い。
しかし、燃え盛るツインテールはどれほど遠くに追いやられようとも容易に追いついてくる。
今回はほんと、あの変態性こそがアイデンティティで、もう存在自体が下ネタヨゴレ芸人で「ヒロイン枠」ではなく、蛮族系ヒロインに毎回壁のシミにされるボコられ役の座をほしいままにしていたあのトゥアールが、あのトゥアールが、あのトゥアールが、三回言いました、あのトゥアールが、最初から最後までまさかの正統派ヒロインとして振る舞い踊り通してみせた奇跡の回でありました。
そしてついに、ついに、シリーズ16巻目にしてついに今まで見ることのできなかったトゥアールのツインテイルズとしての姿が、バトルフォームが、2つに結ばれた神の型のお披露目となったのでした。
トゥアールのくせに、トゥアールのくせに、ちくしょう、うつくしい……。
本当にこれまでどうやってもツインテールを結べなかった彼女。16巻もの積み重ねです。重く長く本当に遠かった。絶対不可能を可能とするものこと愛と友情とツインテールの奇跡であることは間違いない事なのでしょうけれど、それが仲間たちツインテイルズの、ライバルであり掛け替えのない親友である愛香の、誰よりも愛した総二のそれだけではなく、スワンギルディの侠気であり、そして誰よりもトゥアールを認め励ました帝王ティラノギルディの遺し託したツインテール属性だった、敵であるエレメリアンたちの後押しだった、というのはこの【俺、ツインテールになります。】という作品らしくて、本当に好き、もう大好き。
何よりもエレメリアンたちが尊び求めたツインテール属性ですら、道具へと貶めてしまったエンジェルギルディ。まさにツインテールでありながら、ツインテールの闇を内包してしまった魔道に堕ちたツインテール。
そんな彼女と相対することで、エンジェルギルディに追い詰められ、絶望を突きつけられ、誘惑の手を差し伸べられたトゥアール。この世の何よりもツインテールを愛する総二にとって、ツインテールを結べない自分の価値はどうなのか。あのエンジェルギルディのツインテールに目を奪われる総二の姿に、どうしようもなくツインテールでない自分を突きつけられ、それをエンジェルギルディに煽られ、心揺らがされたトゥアール。
自分にとってツインテールとは何なのか。自分のツインテールを喪っても、エレメリアンに復讐しようと世界を渡った根本の理由とは何なのか。自分の根源を振り返り、そしてこの世界に来て出会った総二たち、そして戦いの果てに心通じ合わせたエレメリアンたちの事を思い出した時、トゥアールはついに答えにたどり着く。
自分にとってのツインテールの真理を、掴み取る。自分が戦う本当の理由、本当に成したかったものを見つけるのだ。

<愛>のツインテール戦士・テイルホワイト爆誕!!

彼女の復讐の旅は、ここに終わりを迎えた。
彼女は、帰るべきホームを本当の意味で今、手に入れたのだ。

水沢夢・作品感想