【幼馴染の妹の家庭教師をはじめたら 2.怖かった幼馴染が可愛い】 すかいふぁーむ/ 葛坊 煽 富士見ファンタジア文庫

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じれったくも甘々な幼馴染への「好き」という想い
妹の家庭教師をきっかけに、親密な関係へと近づいていく幼馴染の愛沙と康貴。壊れてしまうなら今のままでいたいという想い、だけど抑えきれない好きという気持ちを抱え、二人は花火デートへ出かけることに。
思春期の男女の性差や同性の友達同士の付き合いもあってすっかり疎遠になっていた幼馴染同士。それを、愛沙の妹のまなみが一生懸命縁を繋いでくれて、色々と機会を作ってくれて、ぎこちない二人の間を取り持ってくれて、なんとか昔みたいな気のおけない幼馴染に戻れたかなー、というくらいの関係になった愛沙と康貴。
ところが二人共、疎遠になっていた時期のダメージが大きいのか、元の幼馴染っぽい所まで関係が戻ったことに大方満足してしまってたんですよね。もう一度、あの頃みたいに戻れたことが嬉しくて、前みたいなやり取りが出来ることが楽しくて、長らく手放してしまっていたものを、しばしじっくりと味わいたい、と言わんばかりに現状に浸ってしまう二人。
ところが、それを許さないのが妹のまなみである。姉と兄貴分の仲が昔に近いものになった!? だからどうした! と言わんばかりに休みもせず間髪入れず、プッシュプッシュ倍プッシュ!!てな勢いでさらに二人を急き立てていくまなみ。家庭教師抜きにして理由を作って康貴を家に招いて姉と一緒に過ごさせるわ、一緒に買い物をさせるわ、デートまで企画して準備してアドバイスしてメンタルサポートまで健気にこなして、至れり尽くせりのサポート三昧。
本来なら夏休みというのは、毎日通う学校と違って強制的に顔を合わせない分、どうしても会う回数も減るし一緒にいる時間も減ってしまうはずなんだけれど、まなみの尽力によってむしろ学校に通っている時よりも密度濃く一緒に過ごす機会が増えちゃってるんですよね。そこに家族ぐるみでの付き合いや愛沙たちの母親の影の支援もあって、お互いの家に入り浸ることになるし、学校の友人達も何だかんだと二人のことを見守って応援してくれるものだから、二人をくっつけるためのあれこれとイベントを用意し誘ってくれて、と本当に機会に関してはこれでもかというくらいの物量作戦だったんですよね。
さすがにそうまでされては、昔から康貴の事が好きなまま此処まできている愛沙だけじゃなく、康貴の方だって意識してしまいます。疎遠になっていた時期は嫌われていると思っていた事もあって無意識にか心理的な距離を置いていたところのある康貴ですけれど、元の幼馴染づきあいが再びスタートしたことで、段々と昔みたいに彼女の考えている事がわかるようになってきて、彼女の怖い顔も刺々しい言動もそのとおりに受け取るんじゃなく、その表に出せない意図を汲むことが出来るようになってきたんですね。そうなってくると、昔抱いていた彼女への好意が再び頭をもたげてくる。
そうなってくると、まなみの目論見通りなわけですわ。
普通に考えたら、ゆっくりゆっくりと進展していっただろう康貴と愛沙の関係ですが、手押し台車に乗せてダッシュしたかのように早送りでこの夏休み中でカタがついてしまったのでした。
いやもう、ここまで畳み掛けられると愛沙たちもテンション戻らないままだったでしょう。普通なら振幅があるはずの気持ちの盛り上がりも、ひたすら冷めないまま上がり続けたんじゃないでしょうか。それだけ、まなみが彼らに冷静になる余裕を当てなかった作戦勝ち、と言ったところかもしれません。まさに電撃作戦、指揮系統をズタズタにする一気呵成の侵攻でした。
あまりに捲くりすぎたせいか、作戦を主導したまなみの心もすらテンション上がったまま色々と自分の気持ちなど整理してる間も無く、最後まで行き着いてしまったのが、まなみ的にも誤算だったのかもしれません。或いは、彼女自身冷静になってしまうことで立ち止まって動けなくなってしまう前に一気呵成にやってしまわなければ、と心のどこかで思っていたのかもしれないんですよね。
だって、まなみも康貴の事が好きだったんだから。この子、姉の好きな人を自分も好きだったんだよ。にも関わらず、姉のことが大好きだから、頑張ったのだ。自分の好きな二人が一緒にいるのが好きだから、頑張ったのだ。
そんな二人と一緒に自分も居られる事が幸せだから。でも、二人が本当に付き合いだしたら、自分はいったいどうなってしまうのか。どんな距離感で、二人と過ごせばいいのか。自分のこの兄代わりの彼が好きな気持ちはどうしたらいいのか。
そんな様々な思いをちゃんと考える暇もないまま、どうやって整理して決着つければいいか考える余裕もないまま、この子は姉と兄と自分を追い立てて本当に疎遠だった二人を結ばせてしまったわけだ。
大したものである。
いやほんとに、もう康貴も愛沙もこの子には一生頭あがんないですよ。どれだけ彼女におんぶに抱っこだったかは、嫌というほど理解しているみたいだし痛感しているみたいだし。まなみが間にいなければ、まともにコミュニケーション取れるかも怪しい所だったんだから。
ちゃんとそれをわかって、まなみに対してこの上ない感謝と恐縮と申し訳無さをちゃんと二人が感じていたことには安心した。そこ、無神経だといただけないですものね。
まあ痛感しているからこそ、まなみの事はもう放っておけないでしょう。その意味では、この妹ちゃんは見事に二人の間に自分の居場所を作ってみせたわけだ。なにをどうしても邪魔者扱いされないし出来ないポディションを、築いてみせたわけだ。
別に企んでたわけじゃなあないのだろうけれど、策士である。愛沙としては、まなみにこれ以上はダメ、というラインをもう引けなくなったんじゃないだろうか、これ。まあ無理押しするような子では妹ちゃんないだろうけど。

さて、兎にも角にも幼馴染に戻った二人はさらにもう一歩先に進んで正式に恋人になれたわけですし、その間に堂々と妹ちゃんも居座ることが出来て、ある意味ゴールテープを切ったようにも見えるのですけれど、ここからさらにもうひとり幼馴染参戦するの? さすがにここから延長線は難しくない?
この高難易度になるだろう続きの展開、どう進めていくのかは非常に興味あります。もう一度、愛沙と康貴の関係を差し戻しで拗れさせるのもどうかと思うだけに、さて果たして新たなキャラの参戦をどう転がしていくのやら。