【魔界帰りの劣等能力者 5.謀略の呪術師】 たすろう/かる HJ文庫

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闇迫る女学院を舞台に 魔神殺しの少年による潜入&調査ミッション開始!!

皆の記憶から消えつつも神獣たちと共にミレマーを救った祐人。
ようやく平穏な日々が戻った……と思いきや、彼の元に緊急依頼が届く。その依頼とは瑞穂の同級生を蝕んでいる呪いについてだった。調査のため、祐人は瑞穂たちの通う女学院に試験生として潜入することになるが、何故か茉莉たちまで一緒で――!?

「祐人……私、祐人のこと……祐人のことが! 」

ついに一堂に会するヒロインたち。祐人を巡ったヒロイン争いも激化する、バトルも恋も詰め込んだ異能アクション第5弾!!

これまで一切交差することのなかった異能者パートのヒロインである瑞穂・マリオンと、日常パートのヒロインである茉莉。それがついに邂逅する事に。修羅場、修羅場必至の事態である!
しかし、この異能・日常の両パートのヒロインが顔を合わせるシチュエーションって、絶対に瑞穂たちの方が祐人の日常の側に乗り込んでくる展開だと思ってたんですよね。瑞穂とマリオンは祐人の日常の方にも興味津々で彼の学校の所在なんかも知る機会を得てましたからね。なんだかんだと理由をつけて、祐人たちの学校に乗り込んでくるのかなあ、と。
まさか、祐人の方が茉莉・一悟・静香の一般人三人を連れて瑞穂たちが通う女学院の方に乗り込む展開になるとは。これは予想もしていなかったので面白い、まさかそう来るとは!
いやだって、瑞穂たちの学校って女子校ですよ。普通、祐人の方が行くとは思わないじゃないですか。祐人だけなら女装して、みたいな展開もあるパターンですけれど、彼の日常を象徴する茉莉たち三人も一緒に、というのは思いもしなかった。
まあ友人に掛けられた呪いの調査のために、瑞穂が強引に祐人を学校に招く裏工作をしたら実家の権力を使ったのが裏目って、茉莉たちも一緒にねじ込まれたわけですから、ある種の瑞穂の自爆でもあったわけですが。
なにしろ、今回の一件をきっかけに茉莉が祐人が異能者である事を知り(いや、前に祐人自身がちゃんと告白したのに茉莉が信じなかったのですが)、祐人が度々周りの人の記憶から消されているという話が真実だと理解することになるのですから。
祐人の仕事の現場を、異能者として戦う姿を見せるきっかけになってしまったわけですからね。それがひいては茉莉自身が気づいていなかった、祐人への恋と自分が一方的に彼に押し付けてきた期待を自覚させてしまう事になったわけですからね。やぶ蛇である。
いや、友達を助けるためという理由があったわけですから仕方ないっちゃ仕方ないのですが。祐人に逢いたいからという邪な気持ちがあったからとはいえ。実際、呪いの件は相当に深刻なもので、呪詛を仕掛けてきている呪術師は並々ならぬ相手だったのですから、祐人に協力を求めたのは大正解だったのですし。
ただ茉莉が祐人への恋心を自覚した事は大きいですよ。今の所、瑞穂もマリオンもなんだかんだと理由をつけて自分の気持ちを正確に把握することは避けて曖昧にしたままにしている段階ですし。
それに、茉莉は一方的にのぼせ上がったのではなく、同時に祐人が周りの人から忘れられる事にどれほど辛い思いをしてきたか。それに自分は気づかずに、彼に自身がどれだけ期待を押し付けてきたか。勝手に自分の理想を押し付けてきたのか。祐人への負債の部分に気づいたのですからね。
自分が相手に対してやってきた事を自覚する、というのはある意味恋を自覚するよりも大事な事なのではないでしょうか。距離感を狭める上で大きな事ではないでしょうか。
おまけに、祐人は茉莉の罪悪感や後悔を丸ごと受け止めて、茉莉がずっと覚えていてくれた事が救いだった、と逆に包み込んでくれたわけですから、茉莉がもうメーター振り切ってしまうのも無理ないですよ。
まあ茉莉の問題は、肝心の祐人が茉莉に対しては以前告白してフラれた件が深く刺さっている上にその後遠征していた魔界の方で新たな恋をした事もあって、茉莉とは終わっているとはっきり割り切っちゃってる所なんですよねえ。まだ、茉莉にはドキドキさせられる事はあっても、一度ケリがついてしまった関係をもう一度進展させるのは、茉莉の方に相当の奮闘が必要なだけに今回得たアドバンテージはそれでようやくハンデを埋めに掛かれた所なのかもしれません。
茉莉は完全に一般人というわけではない、彼女自身知らない実家絡みの背景があるっぽいだけに、異能パートになっても置き去りにされっぱなしでは終わらなそうなので、その意味でもやはり有利はあるのか。

しかし、今回一緒にくっついてきて、祐人の事情を知っている一般人側の人間として多岐にわたってサポートしてくれる事になった親友の一悟が、もうなんていうか完璧な友人キャラっぷりで感動してしまうほどでした。【友人キャラは大変ですか?】の小林少年よ、君が理想とする友人キャラ像を体現するキャラがここにいるぞ!
ムードメーカーとして深刻になりそうな雰囲気をおちゃらけて和ませつつ、主人公の祐人とは軽快なやり取りで場を盛り上げ、一方で縁の下の力持ち的にあれこれと祐人が異能者としての仕事で被る日常での不都合をカバーしてくれたり、色々と辛い思いをする友人を精神面で支えたり、今回は直接異能者関連の事件に一緒に関わることになりながら、一般人の視点から助言したり発破をかけたり、とパーフェクト、パーフェクトな仕事っぷりなんですよね。
祐人に取り付いている神霊たちとも一番深く関わっているのが彼ですし、何気に祐人の事情に一番深く踏み込んでいるんじゃないだろうか、彼。一方で余計な好奇心は抱かずに本当にプライベートな部分にまではズケズケと入ってこないし。
彼がいることで、物語自体がかなり引き締まっているんじゃないだろうか。呪詛の大元が国家規模の国際謀略にまつわるものだとわかって、国際紛争に繋がりかねないと組織の一員として事態の踏み込んだ解決に二の足を踏まざるを得なくなった異能者側の面々に発破をかけつつ、その反応から本当に無理筋なのだという感触を得た途端、即座に自分が無茶を言ってると謝ってのける所なんぞ、此処ぞという時に背中を押すことの重要性と所詮外野からの口出しだという認識の両者をちゃんと理解しているのが見受けられて、ほんと出来物なんだよなあ、彼。

さて、事件の方は状況がだいたい明らかになったところ。相手が用意したワイルドカードが、どうにも本当にヤバい相手みたいなので一方的な蹂躙とはいかないだろうけれど、相手方が知らず虎のしっぽを踏んだのは間違いないわけで。次からはこちらからの逆襲編だ。痛快な展開を期待してしまいます。あと、お留守番を任されて、ついでに身代わり役の大迷惑神霊たちの相手をまたぞろ任されることになった一悟くんの悲喜劇に関しても。ほんとイイやつなので、手加減してやってあげて、ほんとにw