【最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 5 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する】  タンバ/夕薙 角川スニーカー文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

次なる暗躍は――最強の結界使い“仙姫”を護衛せよ!

200年ぶりに目覚めた強力モンスター討伐のため招かれた最強の結界使い“仙姫”オリヒメ。彼女に気に入られたアルは護衛(接待)役に任命されてしまい!? シルバー不在の状況で大規模討戦が開始されてしまう!

いい加減もう評判落とすのは不都合の方が増えてくるんじゃないだろうか。侮られている方が動きやすい、なんて言っているけれど、もうここまで色々と動いて実績をあげてしまうと、見る目のある人はアルベルトの資質については見抜いているでしょう。宰相含めて、アルが油断できない人物であると気づいている人の有無については結構触れられるようになりましたし。
そうなってくると、本来油断を誘いたいような抜け目ない人物はアルの事を見抜いていて、そういう人を見る目がない人ほどアルを侮って余計なちょっかいを掛けてくる、という状況に実際なりつつあるようにも見えるんですよね。
ぶっちゃけ、これまでのアルの働きでも彼がぼんくらを装うことで効果あった事ってありましたっけ。何らかの局面を動かす際はアル自身の資質を見せつけ、あるいは証明することで人を動かし局面をひっくり返していたように思うんですよね。
結局、認められないと人も物事も動いてくれないじゃないですか。それどころか、余計な邪魔ばかりが入るようになる事の方が多いんじゃないでしょうか。そうなってくると、アルが自分の評判落とすのってもう害でしかなく、それこそ暗躍するためじゃなくて楽するための方が無意識に目的になってきちゃってないですかね。フィーネと一緒に居たいと思うなら、尚更に自分の立場を確保しなきゃいけないんじゃないだろうか。

皇帝陛下の誕生祭に向けて、賓客の接待役として王族を配するために帝位争いも一旦停止せよ、というお達しもあり、今回は味方を増やし功績を上げ敵勢力を削っていくという争いは鳴りを潜め、その代わりに大型モンスターの復活に伴う冒険者ギルドとシルバーとのいざこざが話のメインとなってくる。
これ、どう考えても冒険者ギルドが大ポカしまくってるんですよね。帝国内に留まらず多国に跨る組織ということで一定以上の権力を持つ冒険者ギルドだけれど、ここまでやらかしたら帝国政府もガンガン詰めて相手の失点論っていきゃあいいのになあ、と思わないでもないのだけれど、今回は皇帝も宰相も、外務大臣の第二王子エリクも動きが鈍いんですよねえ、なんでだろう。
というわけで、シルバーとしての活動が増えるアルだけれど、いい加減親しい人物には正体明かしてもいいんじゃない? と思っていた最中だったので、セバスのお説教にはちょっと考えさせられました。
確かにセバスの言う通り、シルバーとして共闘する事の多いエルナに、自分の正体を明かすのって……別に意味ないっちゃ意味ないんですよね。少なくとも、今の帝位争いにおいてエルナに正体バラすのにメリットがあるかというと……今の所シルバーとしても普通に協力出来ているし、関係ないのかなあ、と。いや、ちゃんと正体明かしていた方がいざという時意思の疎通とかしやすいし、色々と便宜図ってもらったり口裏合わせて貰ったり、変に対抗心抱かせずにコチラの意図を伝えて考えどおり動いてもらったり、とメリットの方が多い気もするんだけれど……。
……いや、やっぱり正体ちゃんとエルナには明かしておいた方がいいんじゃね?
確かに、もうエルナにはばらしていいんじゃないか、とアルが思うに至った理由にはセバスの指摘する通り、エルナに秘密にしている罪悪感から楽になりたい、という気持ちが大半だったんでしょうけれど。
セバスの言うこともわかるんですよね。ただ自分が楽になりたいが為にこれまでやってきた事を投げ出すのは、違うだろうというのも。シルバーというカードを秘密にして帝位争いをやり遂げると決めて、エルナに秘密を作ったのなら最後まで筋を通せ、というのもね。覚悟が問われている、というべきなのでしょう。最も親しいエルナにすら秘密を守り通せなかったら、狡猾なエリク王子にバレずに戦えるものか、というのも。
あれだけ健気に一途に、自分に献身してくれるエルナを目の当たりにしたら、そりゃまあ全部告白したくなるのも、それはそれでわかるんですけどね。
エルナに対しては不義理でもあるのでしょうし。教えて貰えなかったと知ったら、あとで傷つくでしょうしね、エルナも。何しろ、フィーネはシルバーの正体知ってるわけですし。
知ってるフィーネに、アルはそりゃもう色々と頼って精神的にも寄りかかるわけですし。
フィーネに甘えるの、それはそれでだいぶ楽してると思うんですけどね、アルさんや。

ともあれ、今回は概ね冒険者パートで、一番の盛り上がりも霊亀という巨大モンスターとの大規模バトルで。最強の矛である勇者エルナと、最硬の盾と謳われる仙姫オリヒメ、というこれまたお転婆ヤンチャなお姫様の角つき合わせ、額ぶつけ合ってメンチ切り合うような喧嘩するほどなんとやら、なバチバチした関係がメリハリあって良かったですねえ。
オリヒメといい、あの凄腕の面白ぬいぐるみといい、結構新キャラ、濃い人多かったような気がします。ぬいぐるみの方は部下に雇えて、護衛戦力としても盛り上げ役のマスコットとしてもなかなか良いキャラクターを加えられたんじゃないでしょうか。
ゴードンはもうあれダメだなあ。もうどこをどう転がしても、皇帝になる資格全然ないじゃないか。あの軍師の子は、あれでゴードンの元から離脱した、ということでいいんだろうか。
こうなると、当面敵はもう第二王子のエリクのみになりそうなんだけど、彼は彼でまったく動きを見せないし、対抗勢力としてわかりやすかったザンドラやゴードンと違って、どんな風な形で相対するのかよくわからないんですよねえ。
落ち目も落ち目なゴードンは暴発するくらいしか後なさそうですけど、ザンドラの方は直接的には帝位争いから脱落したとはいえ、あれを他国に嫁がせてしまうと余計な火種を外に撒いてしまうようにしか見えないので、もうちゃんと片付けた方がいいと思うんだけどなあ。皇帝陛下だって、愛情なんかないだろうに。