【『おっぱい揉みたい』って叫んだら、妹の友達と付き合うことになりました。】  凪木 エコ/白クマシェイク 角川スニーカー文庫

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全てのおっぱいフレンズに捧ぐ――理想のバカップルラブコメ!!

「おっぱい揉みたい!」俺の魂の叫びに答えたのは天使のような女の子、未仔ちゃんだった。
「お、おっぱい揉ませたら、私と付き合ってくれますか……?」
甘々でイチャイチャな理想の毎日。彼女がいるって素晴らしい!

【お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。】(富士見ファンタジア文庫)の凪木エコさんによる新作ラブコメディは、バカップルによるバカップルのためのひたすらバカップルするバカップルラブコメディ。
バカップル事始め、である。
自分の虚しい欲望を叫んで発散していたら、「おっぱい揉みたい!」というドン引きの叫びでありながら、むしろそれを取っ掛かりにして突然後輩の女の子に告白され、そのままお付き合いをはじめてしまう主人公夏彦。
いいのか、それで、と思う所だけれど、馬鹿は深く考えない。まあ、相手が妹の友達で以前からの知り合いだった、というのも大きいのだろうけれど、難しく考えないというのは時として大きな武器である。なんでどうして? などと考える前に付き合ってください、とお願いされたんだから、相手可愛いし知り合いだし、彼女欲しかったし、となにか秘められた理由とか妖しい企みがあるんじゃないか、などと考えずに脊髄反射で応えられるのはこの際長所なのでしょう。
まあ普通はイタズラでもなければ、告白に企みなんぞありませんからねー。
実際、変な謀略なんかもなく、普通に好きが高じて未仔も告白してきたのですから、何の問題も障害もなくカップルが成立してしまうのである。
始まったその時からもう既にバカップルである。
いやこの作品ね……起! 承転は飛ばして、結!な気がするんですけど、どうですか?
バカップル誕生! めでたし! 終わり! あとはずっとバカップルがイチャイチャイチャするだけ! みたいな。
いやだって、波乱とか特にないじゃないですか。別に付き合い出したこと秘密にするわけではなく、仲の良い友達にはすぐに伝えますし、未仔ちゃんがクラスまで顔を出しにくることで顔見せもすぐに済みましたし、あとは初めて付き合い出した初々しいカップルが仲睦まじく一つ一つ定番の恋人ムーブを重ねていくばかり。
突然出来た恋人ばかりに構って友達との付き合いが激減して友達との仲が微妙になる、なんてことにもならずにちゃんと友達付き合いの方も蔑ろにせず、かと言って女友達と変にベタベタして折角付き合い出した恋人を不安にさせたり、なんてのも巧いこと回避して。
交際でわからないところがあれば、ちゃんと彼女居る親友に相談して、女の子の事がわからなかったら女友達の琥珀に相談して、未仔ちゃん個人のことについては友達である妹にちゃんと話聞いて……この主人公、アホの子のように見えてなかなか卒なく初交際こなしてるんじゃないのか、侮れないぞ!?
かと言って冷静にクールに女の子に接しているなんてことは一切なく、告白された時から浮かれっぱなしでテンション上がりっぱなし。初めて出来た恋人に夢中で彼女のことで頭がいっぱい、という様子を漲らせているので、同じく浮かれてテンションあがって夢中になってる未仔ちゃんの方とガッチリとギアが噛み合うのである。
なので、ひたすら最初から安定してイチャイチャイチャイチャイチャイチャ。特に問題らしい問題も起こらずに順調にイチャイチャ交際を進めていくのを見守るのみ。いやもうほんとに、イチャイチャしてるのを見てるだけなんですよね。

……いったい、自分は何を見せられているんだろう。

なんだかこう、遠い目になって彼方をぼんやりと見上げていたい透明な気分になっていく、というトラブル……これはトラブルなんだろうか、ともかく色んな意味で悟りを開けそうな作品でした。
冷静に考えると、先輩と一緒の学校に通いたいがためにエスカレーター式だった中学から夏彦と同じ学校を受けて入学してきた、というのはかなり重たい理由で、そういう風に迫られるとプレッシャーも一入だと思うのですけれど、良い意味で馬鹿なのかこの主人公、それを重たいというふうにはまったく感じていないようでしたしねえ。
未仔のお父さんも、随分前に娘には好きな人がいると教えられていたようなのに、いまさらグジグジ言っても仕方ないでしょうにねえ。そりゃ反発もされますよ。いやまあ、未仔ちゃんの方ももう少し隠すかオブラートに包んで伝えてあげないと、お父さんとしてもそこまではっきり言われてしまうと流せない、というのもあったのかもしれませんが。
なにしろ、この娘と来たら父親の前でキスするわ、胸揉ませるわ、主人公とは別の意味でバカですものねえ。だが強い。一途さもここまで振り切っていると強い。下手に反対すると容易に家飛び出して帰ってこない、というのは速攻で証明してしまいましたし。こりゃ、お父さん勝てませんわ。
幸い、交際相手はちゃんと筋通しに来る人間であり、まあ娘を大切することは疑いようがない人物であることは間違いなさそうなので、諦めなさいな。

凪木エコ・作品感想