【ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~ 2】  ハム男/藻 アーススターノベル

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貴族の従僕となったアレンの、新たな冒険が始まる! ! 開拓村の農奴からグランヴェル家の従僕となったアレンは、ワガママお嬢様のセシルに振り回されながらも、自由に街の外に出れるようになったことでモンスター狩りに熱中していく。 召喚獣たちとともにストイックにレベル上げに勤しむアレン。ゴブリンやオークを狩り続け、召喚獣もアレンもどんどん成長していく。 一方グランヴェル家の従僕としてもアレンは順調に信頼を獲得していた。従僕生活も順調かと思われたが、男爵家を狙う隣領の子爵の暗躍により、不穏な空気が流れ始める。 男爵の娘であるセシルを狙う魔の手に対し、アレンは 「セシルお嬢様を必ず守ると約束しました。約束は守りますよ」 自らのスキルと召喚獣をフル活用し、巨悪へと挑むのだった。

うわぁ、これはこれは。一巻の感想ではアレンに課せられたレベルアップの上限が取っ払われた代わりに、必要経験値が意味不明なほど必要、という成長リスクはヘルモードだけれど、彼の置かれた環境は農奴という最下層がはじまりだけれど、全然ヘルモードじゃないですよね、という風に書いたんですよね。
実際、家族はみんな素晴らしい人でしたし、同じ村の農奴たちもいい人ばかり。農奴という立場も思ったより悪くなく、色々と自由は制限されているものの本来農奴という身分からイメージするよりも相当に権利も保障されていて、領主やその配下の騎士たちからも相応に尊重されて扱われていたように見えました。また、領主の屋敷に仕えるようになってからもお嬢様のセシルこそわがまま気味ですけれど、子供の無邪気さの範疇でしたし、領主含めて上役の人たちもアレンを粗雑に扱うことなく、世界は平和で戦争も起こってないというし、これ生きる環境としてはむしろイージーだよなあ、と思ったものです。
本気でヘルモードだと、知り合いは全員クズで、ダイスは常にファンブル。親しくなった人は裏切るか悲惨な死を迎え、プレイヤーのメンタルをガリガリと掘削していく。運命ヘルモード、みたいなのが自分のイメージする地獄だったので、まあぬるいよねえ、と。
これ、領主のグランヴェル家がダイスでクリティカルの当たりだったんだなあ。ここまで領民に優しくしっかりした領主は、どうやらむしろ相当に珍しいみたいで。領民の負担を減らすために、自分の家から持ち出ししていたみたいですし。アレンがスキルあげるために狩りを、屋敷での仕事の合間に行おうとしようとしたときもかなり便宜図ってくれた上に、賃金とは別に彼があげた成果にはちゃんと報酬出してるんですよね。財政苦しいのに。ミスリル鉱脈を発見した際も、何も知らないアレンにちゃんと発見者には権利が発生する旨を申告して、従僕にすぎない彼に権利与えてますしねえ、立派すぎるだろうこの領主様。権力者としては良い意味でも悪い意味でも立派すぎる、と言えるのかも知れない。そのために、随分とあくどい近隣の他の領主には利権を奪われ利用されて痛い目を見てきたみたいだし。
でも、アレンにとっては最高の主家だったんですよね。
この地にアレンが生まれたのも、神様の配剤だったんだろうか。
間違いなく、周辺環境については配慮が行き届いたイージーモードだったのでしょう。
ただし、もっと視点を広げて世界そのものを俯瞰して見てみた場合……なるほど、世界情勢そのものがヘルモードだったのか。

王国中央の学園に通っているというグアンヴェル家の長男に纏わる話で、妙に不穏な空気が時々挟まれるなー、とは思ってたんですよね。なんぞ、王国上層部に闇の部分があって辺境の木っ端貴族は金銭面以外で人的な負担を、相当ヤバいレベルで負わされているんじゃないか、というのはまあ想定していたのですが。
なんかダンジョンかなにかがあって、そこに毎年一定数貴族家から選出されたメンバーが強制的にぶち込まれる、とか。
うん、一国の問題じゃなかったよ。それも、国が欲を拗らせて無理を押しているなどといった方向性ではなく。
人類、滅びかかってるじゃないか。もうこれ人類絶滅戦争じゃないか。
そして、実質赤札徴兵じゃないですか。え、これ貴族とか王族、才能アリの方が地雷なのか。ただでさえ高貴な身分の人間って、才能の格式は低いものしか発現しないようになっているらしいのに。

アレンの元々の身分である農奴は、毎日毎日を生きるのに精一杯で、自分たちの村のことしか見る余裕がなく、国どころか自分のところの領主の領地の様子ですら全然知らないようなものでした。
だから、国の上の方の様子なんてのも、たまに来る商人から話を聞くくらいでアレンも漠然としか知らなかったんですよね。まあこいつ、レベルあげとスキルの検証にばかり夢中なタイプで、世界観の設定とか興味なさそうだったもんなあ。
それでも、地方貴族とはいえ領主家の従僕という相応の身分になったにも関わらず、世界の様子については戦争してないよー、とか隣国とは平和、くらいしか知ることなかったんですよね。
これ、上の方で情報統制されてたのか。貴族でも当主と後継者までで情報がせき止められて、一般市民まで降りてこないほどの機密だったのか。
まあ、実際は暗黙で知られていたみたいですけれど。そりゃ、他国と交易している商人なんかは知らないはずないだろうし、そこから幾らでも話は漏れ出てくるでしょうしね。でも、そういう情報は中央近くまでで、辺境地方では文字通り一番上でせき止められていたんですね。

領主様に打ち明けられ、はじめて、世界のおかれていた情勢を知るアレン。
どうして自分が、生まれ変わった時に「ヘルモード」なんてものを受けるかどうか提示されたのかを理解したアレン。
アレンがヘルモードを選んだのは趣味に過ぎなかったのだけれど。それはアレンの理由にすぎない。
ちゃんと、神様がヘルモードという異質な条件を用意するだけの理由はあったわけだ。

これまで、アレンは人間に対してはちゃんと情を抱いて、心を寄せて、親しみ愛情を抱くようになっています。それは、家族の影響も大きいでしょうし、幼馴染と過ごした日々も人掛け替えのないものとして彼を構成するものになっているからでしょう。
でも、同時に彼はどうもこの「世界」に関してはゲーム感覚にどっぷりハマったままな感じもあるんですよね。レベル上げのため障害になるなら、グアンヴェル家に仕えることを辞めるのを本気で検討してますし、結構無神経に自分の我を通そうとするところがあったんですよね。この世界は、自分がレベル上げをするのを楽しむために存在している、みたいな感覚を抱いているんじゃないか、というところが。
一方で、親しい人への親愛は本物でしたので、そのあたりアンバランスではあったんですよね。自分優先か、というとそうでもないですしね。家族については常に気にかけていますし、お世話になってるグアンヴェル家にも、自分の中で条件区切っていますけれど、不都合を呑み込んで義理は通そうとしてますし、グアンヴェル家の長男がアレンに遺した妹を守ってくれ、という遺言となった頼みをずっと忘れずに抱えていたり。情や恩や義理は蔑ろにはしてないんですよねえ。
つまるところ、人に対しては現実に沿って向き合っているのに、世界そのものに関してはゲーム感覚、という感じに感性が分離しているのかなあ、などと思ったり。
しかし、領主さまから世界の有様を打ち明けられ、娘を託された時、彼は自分がどうしてヘルモードを与えられたのかを知りました。世界における役割を、自覚したと言えるのでしょう。そして、怯えながらも義務を果たさんと覚悟したお嬢様を、託された約束を守ると決めたアレンは、はたして世界そのものをどう認識したのか。前と変わらないのか、それとも見る景色の色が変わったのか。
そのあたり、次の巻ではどう変わってくるのか変わらないのか。もう優しい世界とはならないだろう学園編に突入しそうな第三巻も楽しみです。