【悪役令嬢になったウチのお嬢様がヤクザ令嬢だった件。2】  翅田 大介/珠梨 やすゆき 電撃の新文芸

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ケジメを付けろ!? 型破り悪役令嬢の破滅フラグ粉砕ストーリー、第二弾

「……ちっ。胸クソが悪くなるね」
『悪役令嬢』に転生した元ヤクザのキリハだったが、持ち前の度胸で婚約破棄も乗り越え、周囲からの評価を高めていた。これを疎ましく思ったもう一人の転生者ユリアナは、キリハを破滅させるため陰謀を巡らせる。暗殺に反乱画策、更には戦争まで!?より大きくなった破滅フラグを打ち破る、痛快活劇ファンタジー、第二弾!
この女、ユリアナ、ここまでやっておいて自分がクズという自覚が一切なかったのか。それはそれで凄いな。自分のやっている人を陥れて相手の取り分を奪って他人の尊厳を踏み躙って、高みから優越に浸る、なんて事はみんながやっている事。
そんな風に思っていたのか。
この女にとって、世界はどんな風に見えていたのだろう。
クズは決して幸せになれない。ユリアナと一時的に組んでいた暗殺ギルドの頭目が、彼女に語った一言は、その内実とともに深くうなずかされるものでした。因果応報、とは言い切れない話なんですよね。別に善が報われ、悪もまた報いを受ける、って話でもない。いや、本質においてはそういう事なのか。
クズはどれだけ穏やかな幸せを手に入れても、それに決して満足できない。自らの幸せをも炎に焚べて、他人の不幸に酔い知れるからこそクズなのであって、決して自分の幸せに満たされない存在なのだと。
その暗殺ギルドのクズは自らをよく理解していた。だから、彼は幸せにはならなくても、不幸にはならなかったし、破滅もしなかった。
ユリアナは、自らをクズだとはまったく思っていなかったからこそ、破滅へと一直線に滑落していってしまったのか。
相手が悪かった、とも言える。ユリアナという毒婦は、その毒のあまりの強さ故に自らの破滅に周りすべてを巻き込むほどだった。国王陛下は強かな政治家として、国主として、ユリアナの毒を利用して国内を掃除するつもりだったみたいだけれど、これ結果として大失敗してるんですよね。
この毒は発見次第、患部ごと切除しなくては全身に回る毒だったのに、その判断を間違えてしまった。もし、キリハが居なければこれもうエラいことになっていたわけですから。
逆に言うと、国王陛下が目論んでいた形とは違うことになりましたけれど、キリハという毒を持ってユリアナが撒き散らした毒ごと国内の不良債権を一掃出来た、とも言えるわけだ。けれど、キリハに便宜図ったというほど支援もしてなくて、ほぼキリハが勝手にやった事だもんなあ。
まあいずれにしても、ユリアナとは役者が違いすぎた。
これがキリハがただのヤクザの組長の娘、とかだったらともかく、ヤクザの女大親分として表では企業群を仕切り、裏では全国津々浦々支配下に収めるような器だったわけですから、経験値が違いすぎる。
……そりゃ、こっちの世界でも裏社会には首突っ込みますよね。キリハにとって自分のフィールドというのは貴族世界や冒険者稼業よりも、裏稼業を仕切るマフィアの方なのですから。本業ですし。
むしろ、やり方、筋の通り方に関しては表稼業よりも通じてるわけで。前世でヤクザものたちを心から心酔させたその心意気は、そりゃあ任侠者ならこれ以上なく琴線に触れるものだったでしょう。
姐御呼びが、レイハには一番似合うよな。

一番面白かったのは、ユリアナの謀略によって正式に公爵家を引き継いだ上で、継承した途端に荒廃しすぎて革命が起こり反乱軍によって支配された領地を取り戻さなくてはならなくなったパートでしたけれど。
どうやっても詰み。あまりにも盤面に乗り込んだ時期が遅すぎて、挽回の目が完全に失せている、というゲームオーバーの状況で彼女が取った、盤そのものをクルリとひっくり返す手管が面白すぎました。これ、ここのパートは一冊くらいかけてじっくりやってくれても良かったのに、と思えるほどで、ダイジェスト展開みたいになっていたのはちょっともったいなかった気すらします。革命軍のリーダーも、もう少しちゃんと相手してほしかったでしょうし。
これは本作全般に言えるところかもしれませんけれど、ちょっと全体に急ぎ足でバタバタとストーリーを進めてるきらいがあったんですよね。それぞれのエピソード、もうちょっとじっくりと足を止めて当事者となるキャラたちを掘り下げつつ話を広げてくれてたら、もっと良かったんじゃないかな、と。話のスピード感は痛快でしたけれど、豪勢で味わい深いだろう品の良い料理を、早食いみたくガーッと掻き込んで食べてしまったような、もったいなさがありました。
この1巻で話を終わらせないといけない、という所もあったのでしょうけど。話を巻いていた、というほど性急さがあったわけではなく、ヤクザ令嬢一代記の「ざまぁ」キメるまでの物語としてはしっかり以上にガツンと威力たっぷりに書かれていたとは思うのですが。
キャラクターにしても、物語にしても、2巻で終わらせるには内包してるポテンシャルが凄く高かったのでしょう。まあ相手があのユリアナだと、あんまりじっくり腰を据えてやるには格が足りなかったのもあるでしょうけれど。彼女は毒が強いと言っても格としては小物であったのも確かですから、そう長いシリーズ続けて持つほどの悪役ではありませんでしたからねえ。
ともあれ、粋な気っ風と心意気が痛快な女任侠一代記であり、これ以上無くクズを踏み潰し切って捨てる見事な「ざまぁ」でありました。