【進路希望調査に『主夫希望』と書いたら、担任のバツイチ子持ち教師に拾われた件】  yui/サウスのサウス/なたーしゃ ダッシュエックス文庫

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高校三年の春、進路希望調査に『主夫』と書いて提出した少年、巽健斗。
そんな健斗に対して担任の美人教師、黒羽遥香(バツイチ子持ち)は「なら、私の旦那になりな」と笑顔で告げた。
こうして秘密の交際がスタートし、四才になる遥香の娘の千鶴を交えて、不器用ながらも心を通わせて親しくなっていく。
千鶴の保育園のお迎えや3人一緒での晩ご飯。休日には遊園地や観光名所への出掛け。
家事万能で面倒見のいい健斗と私生活がズボラな遥香の相性は抜群で、2人はやがて本当の家族になる未来を意識して――。
進路希望調査からはじまる年の差ハートフルストーリー!

進路面談で主夫になりたい、と譲らぬ想いを告げたら担任の美人教師に、じゃあお前、私の旦那になれ、と男前にプロポーズされてしまった主人公健人。
……ヘッドハンティング? 青田買い? 先生、それは職権乱用? 許されざるよ。
いや男前なカッコいい女の人に、お前を貰ってやるとか言われるの男心の中の乙女な部分にキュンキュンきてしまうかもしれませんけれど。
この時点で二人共、別にお互いの事好きというわけじゃないんですよね。担任とは言っても普段から個人的な付き合いがあったわけでもなさそうですし。先生の方は三年間進路志望に主夫と書き続ける健人に興味をいだいていたようですけれど。
最初はお互いに下心ありだったんじゃないでしょうか。ちゃんとした子育てに限界を感じていた先生と、取り敢えず卒業後の進路として主夫業を執り行う相手を欲していた健人と。まあそこで感情の伴わない契約的な関係を結ぼう、というのならそれはそれで導入としては違和感のないものだったのでしょうけれど、先生も健人もその辺事務的にならず、でも結婚するということに対して躊躇も壁も感じている様子もなく、なんか凄く「何となく」ではじめてしまったので、いいのかそれ、と思ってしまうところでもありました。
これは後半になってわかってくるのですけれど、先生も健人も実際はかなり重たい人間なんですよね。少なくともそういう設定のはずなんだけれど、それぞれ結婚、家族を作るという事に対して相当な想いを抱いているわりに、最初恐ろしく軽々にはじめてしまったなあ、と。心理的なハードルとかまったく見当たらなかったもんなあ。
ともあれ、最初の浮薄にすら見える始め方はともかくとして、それ以降は順調に親交を深めていき、お互いの事を知っていくのでありました。
小さいお子さん連れの片親との恋愛は、むしろその子供との仲を深めていくことが親の側との恋愛を進めていくよりも肝心、というのは定番でしょう。その親御さんが子供の事を何よりも大事に思っているなら尚更に。その子供に慕われていくことが親の方の好感度を高め信頼を深めていく事になりますからね。
というわけで、序盤はむしろ先生の子供である4歳の千鶴ちゃんと仲良くなっていく事の方に重点が置かれることになる。過去になんらかのトラウマがあるのか、男の人を極度に怖がる人見知りのちーちゃんこと千鶴ちゃん。そんな彼女に変に媚を売ること無く無理に距離を詰めようともせず、好きなご飯やデザートを作ってあげたり、一緒に好きなテレビ番組を見ることで自然に仲良くなっていく健人。その姿に、どんどんキュンキュンしだす先生。子供ばかりにかまけず、ちゃんと自分の相手もしてくれることで、性格はどストライクだし物件としては優良この上なく大当たり引いたんじゃ、とウハウハしはじめる先生。おめでとうございます。
健人の方も家事全般はダメダメだけれど、常に男前でなおかつ男心を擽る感じで上から甘えさせてくれる先生に、しっとりと本気になっていくわけで。
まあお互いに好きになってく展開としては、穏やかながら順当でありましたね。
でも、なんで健人がそんな主夫に拘っているのか、本人説明してくれていましたけれど、「?」という感じでその理屈がよくわかりませんでした。いや、母を亡くしたことをきっかけに家族を守りたいと思うようになったのはいいんですけど、主夫に拘る理由は? 
それに彼が自責している件についても、何をそんな自分を責めているのかさっぱりわからないんですよね。なんで嘘をついていることになるんだ? ちょっと自分の読解力では彼の理屈がよくわかりませんでした。先生、わかったんですか、それ?
取り敢えず、弱い部分を見せてくれた事に満足していただけのような。
一方で先生の抱えていた方の重い過去ですけれど……いや、それは真面目に間違いだったんじゃないですか? 介護関係の問題は周りと連携して助けを求めながらやらないと破綻し家族崩壊に繋がってしまう、という昨今では良く取り上げられるようになった社会問題の一つであります。相手が老親ではないのですけれど、先生どうも一人抱えしてしまったみたいで結局破滅的な結末を迎えてしまってるように見えるんですよね。
健人、あの場面では先生のこと全肯定して彼女の心を慰めるのは、二人の関係を進める上では正解だったとは思います。あそこで、否定してしまうとちょっと先生の心にトドメさしかねない場面でもありましたし。ただ先生の気持ちは間違いじゃなかったとしても、行動としては間違いだったことは結果が示しているので、この辺の意識をちゃんと後々修正していかないと、同じことを繰り返してしまってはいけませんからね。
さすがに先生もわかっているでしょうけれど、貴女は間違っていない! と言われて、そうか間違っていなかったのか! となってしまうと悲劇再びになりかねないので、ほんと健人はそのあたりちゃんと話し合っていかないとダメだと思うんだけど、大丈夫だろうか。
わりと健人も、意識の問題は先送りにしがちにしているようにも見えるので。父親と弟の不仲の方も、困った困ったと言ってるだけで特に解決に動いている様子はないですしね。あれは時間が解決すると思っているのだろうか。なんか無理っぽいのだけれど。
あと、なんで母の死のショックから逃げるためにお父さん女装趣味に走ったんだろう。このあたりもあんまり突き詰められて無くて、そうなってるという事実だけ見せられているので、よくわからん。
という感じで、重いテーマを扱っているのだけれどその部分に対してはあんまり突き詰めて掘り下げることなく、ふわっと乗り越えちゃっているので、全体的に最初にしても終盤にしても、山となる部分は何となく雰囲気で流して通り過ぎているような感じが……。
あんまり深く考えずに、それこそフワッとお話を眺めていればいい、という作品だったんでしょうかね。ふむ。