-インフィニット・デンドログラム- 15.<GAME OVER>】  海道左近/タイキ HJ文庫

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大賢者ついに登場!!

講和会議の裏で起こっていた、盗賊王たちによる王都襲撃。
世界の謎を暴くため、譲れないものを貫くため、己の力を刻み込むため、かけがえのない日々を守るため。
未曾有の混乱の中で、様々な思惑と信念がぶつかり合う。
大賢者、管理AI、そして邪神とはいかなる存在なのか。
世界に潜む謎を解き明かす一端となる戦いが今始まる――!!
大人気VRMMOバトルファンタジー、熱戦必死の第15巻! !
大賢者インデグラと盗賊王ゼタが表紙ですか。大賢者ってロリババアだったのかー!(まだ二十代)
レイたちが獣王・衝王と激闘を繰り広げていた講和会議(講和会議なのに激闘とは此れ如何に)と同時進行で行われていた王都襲撃事件。
主人公不在で繰り広げられる死闘は、これまで厚いベールに覆われていたこの世界の真実の一端を閃かせる秘密開示の一幕でもありました。と、同時にアルター王国第三王女のテレジア・セレスタイト・アルターと黄河帝国から訪れていた第三皇子のツァンの秘されていた正体が明らかになる回でもありました。
二人共、まだ幼いと言ってもいいくらいの年齢に過ぎないのに、背負っている業がおもすぎる。片や、生まれた瞬間から世界の終焉のトリガーとなる存在であるが為に死ななければならない宿命を背負ったテレジア。生まれた瞬間に母体となった母をバラバラに引き裂き、母親殺しの業と家族からの憎しみを背負ってしまったツァン。特にテレジアはジョブ<邪神>の特性として、歴代邪神たちの記憶を引き継いでいるという宿業まで背負っている。歴代の邪神たちと人格は違うとはいえ、記憶は人となりの形成に大きな意味を持つだろうし、テレジアは生まれ落ちたその瞬間から明確な意識を持っていたのだから、生まれたその時から自分は死ななければならないと思い定めた人生とはどんなものだったのか。それでも捨て鉢になったり投げやりにならず、粛々と宿命を受け入れながらも王女として思いの外平穏に続く日々を喜び、自分を慈しんでくれる家族を愛するテレジアが本当にイイ子でねえ。
一方のツァンも、家族から愛されるどころか憎まれて、乾いた人生を送りながらこの子も実直に生きてきたんですよね。それは諦めだったかもしれないけれど、憎まれたからと言って家族を憎み返さず世界を呪わず、彼自身に罪は無いはずの母殺しの罪を濯ぐように生きてきたツァン。
そういう彼だからこそ、エリザベートという最愛を抱くに至る人に出会えたのだろう。
なんか、この作中で一番まっすぐに男の子してるのって、この蒼龍くんじゃなかろうか。レイの方もまっすぐはまっすぐなんだけれど、ちょっとぶっ壊れている節もあるし純真とはまた違う真っ直ぐさな気もするし。
まだ10歳の男の子と9歳の女の子との、純真で命懸けの人生を賭した純愛物語。何よりも真剣で何よりも必死な幼い恋の物語。この二人がともに歩む人生は幸せであって欲しい、祝福されたものであってほしいなあ。
邪神と龍帝という、過去から延々と引き継がれていた宿命、或いは宿業を引き継ぐことで人生そのものを苦難に塗りつぶされたものに変えられてしまっているテレジアとツァンは、だけれどそのジョブに引き摺られることなく、二人共彼らなりに今の自分の人生を自分のものとして歩んでいる。
でももうひとり、同じ過去から<大賢者>として記憶と使命、そして宿業を引き継いでいるインテグラはどうなのだろう。生まれたその時からジョブを引き継いだ上記の二人と違って、インテグラは教育を受けた上で先代の死と共に大賢者を引き継いでいるんですよね。その記憶の継承がどのような形で行われたのかは詳細よくわからないのだけれど、彼女もまた<大賢者>が代々引き継いできた使命感、或いは妄念と呼ばれるものをそのまま受け継いでいるように見える。
記憶を継承しても魂は違うから人格も異なっている、という邪神の継承は大賢者にも該当するかわからないのだけど、怨念みたいなものがそのまま引き継がれているような印象がこびりついてるんですよね。ただ、インテグラとして幼馴染であるリリアーナやアズライトを想う気持ち、彼女らへの友情もちゃんと抱いているようなので、彼女がインデグラなのは間違いないんでしょうけれど。
それでも、彼女が抱いている使命感、信念、或いは妄執は果たして彼女のものなのか。そのあたりが、同じ過去から延々と宿命を引き継ぐ邪神や龍帝とはちょっと様相が異なっているように見えるのだ。
俯瞰してみると似たような境遇に在るこれら<邪神><龍帝><大賢者>のジョブの持ち主たちが、しかし三者三様に異なった在り方を示しているのがまた面白い。
これは、今回王都強襲に送り込まれた改造人間たち、改人と呼ばれるティアンの成れの果てたちも似たようなところがあるんですよね。四者四様、人であったにも関わらず人から外れてしまった者たち。改造された結果とはいえ、それぞれ思う所あって人である事を捨て去る事を受け入れてるんですよね。その末路も含めて、四人ともが突き進んだ方向が違うのは面白いなあ、と。その中で、もっとも流された選択を続けたモーターが生き残る、というのもまた面白味がある。
そんな改人と対峙した騎士テオドール、マスクド・ライザー、ツァンという面々が捨て去るのではなく、受け継いで守るために戦って、彼らを下していったというのもまたシチュエーションの妙なのでしょう。
人とは多様な側面を持ち、その一点を研ぎ澄ませていくか、その多様を混在させたままで進んでいくのかも人それぞれ。そうした複雑さは、管理AIたちも同じように背負っている、或いは内包しているように見えるんですよね。AIでありながら情を持ち、それぞれの方向にその情を炸裂させて邁進している彼らをただの機械と称するのは難しいでしょう。彼らもまた、この世界の「人間」なのか。
世界の行く末のためには、テレジアを邪神として目覚めさせないまま殺す事が一番と合理的に理解しながら、その選択を取ることをためらってしまうドーマウス。彼らが元はマスターとともにあるエンブリオだった事を思えば、その情も理解できるのだけれど、大半がぶっ壊れた感性と妄執に捕らわれているのがなんともはや、なんだけれどそれもまた人らしいと言えるのかも知れない。
彼らに比べれば、IFの犯罪者たちの方がよっぽど「人でなし」なんですよね。倫理がぶっ壊れている、というよりも彼らの内面が非常にシンプルで、ある種の自分ルールを絶対遵守しているように見えるからこそ、そのブレの無さが非人間的に見えてしまうのか。
こいつら、こんな人間性でリアルの方でまともに生活出来ているのか、と心配になるのですけど、心配しなくても出来てない人の方が多いのかw

ともあれ、ついに動き出す犯罪王。終焉を巡る世界の秘密の一端も明らかになり、幾つもの思惑が多数の勢力とともに錯綜しはじめる。果たしてそんな中で、主人公レイ・スターリングはどんな役割を得ていくのか。
今の所、彼は幾つもの事件の中心に居たものの、核心には殆ど触れないまま表層で活躍している、とも言えるんですよね。そのままネメシスとイチャイチャしててもいいんですよ?
ネメシスに、なんかもうプロポーズみたいなセリフ吐きやがってまあ。テレテレなネメシス、かわいいですよ?