【最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 6 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する】  タンバ/夕薙 角川スニーカー文庫

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次なる暗躍は――表の顔、出涸らし皇子の実力を知らしめろ!?

フィーネに殺到する若手貴族からの結婚の申し込み。歯止めの利かない状況を打破すべく、皇族の力を存分に使うアルに貴族たちは為す術もなく……。そして、ついに開かれる記念式典の来賓にはレオの初恋の相手が!?

これ、今回のフィーネにちょっかいを出そうとした若手貴族たちを一網打尽にした作戦、結構なやらかし案件だったんじゃないだろうか。
皇帝の権威まで持ち出して、事を最大限大きくしていわゆる「大事」にしたのはそれだけフィーネと自分との間を邪魔してくる連中を根絶やしにしたかったからなんだろうけど、結果としてアルは状況のコントロールに大失敗してるんですよね。その挙げ句、国内で内乱が置きかねない、そうでなくても貴族家と皇家の間に修復し難い亀裂が生じる、或いは国内の連携がガタガタになって戦力が喪われる、みたいなかなり酷い混乱が起こりかねない瀬戸際まで行っちゃったわけですから。
一応、アルが事を収めた形になってますけれど、状況をここまで混乱させたのは彼の強硬手段によるものですし、途中からコントロール手放して皇帝に丸投げしてしまった部分もありましたしね。
正直、ここまで大事になってしまったのは評価できないですね、かなりの禍根を残してしまいましたし。元々、ラウレンツたちが自分の感情を制御できない愚かさからこそ起こった案件なのですから、その上彼らの感情をあれだけ逆撫でして徹底的に叩いておきながら、彼と落とし所を共有できると考えた方がちょっとどうなのかな、と。相手らがバカなのを利用しておいて、そのバカさに振り回されてたらねえ。
皇太子妃が皇后を引っ張り出してきたのだって、結局感情の問題ですしね。そもそもアルがこの件を強圧的に片付けようとしたのもアルの感情に基づくものだったのですから、ややも感情がもたらすものを軽視してしまったのかな、と思ってしまうわけです。どれほど愚かでも肉親は肉親、これで皇太子妃やラウレンツの姉だという近衛騎士団長とも隔意が生まれてしまった、禍根が残ったと考えるほうが自然でしょう。レオのフリまでしてしまったことで、なんかアル個人じゃなくて彼らの陣営そのものへのヘイトも集めてしまったように思いますし。
なんか、冷徹な判断もできるとレオの評価高まってるみたいですけれど、直接家に被害くらった人らは恨むでしょう、普通。悪いのは自分達の子息と頭ではわかっていても、それで納得できるかというのはまた別な話ですしね。オマケに、アルが煽った節まであるわけですし。
やり方としてもっと穏当というか、ここまで周りを巻き込む形でないやり方もあったと思うんですよね。軍師候補の人が行ってたみたいなフィーネを巻き込むやり方じゃなくても、親の方はまともな人物が多かったようですし、そちら側からアプローチかけて喫緊の強行を防ぎつつ、あとは個別にプチプチと狙い撃ちして潰していくようなスマートなやり方だって、色々とあったでしょう。
結局は、そうした迂遠な方法を選ばなかったのは、アルがブチ切れたからなんですよね、これ見る限り。自分とフィーネの間柄に口出ししてくるんじゃねえ、という怒りが撃滅・滅殺、全殺し、という殺意の塊みたいな過激なやり方になってしまったようにしか見えない。
フィーネのためではなく、あくまでアルの感情に基づく行動だった、と。
まあそういう情動を悪いとは思わないですし、悪いのはあの若手貴族たちなのは間違いないのですけれど、やり方としては褒められてものではなかった、悪手のたぐいだったと思ってしまいます。あの軍師候補の人になんで合格貰えたのは、正直わからんw
それに、あれだけ過敏にフィーネを自分から遠ざけよう、彼女と一緒にいることを邪魔しようとする相手を徹底的に叩き潰すような真似をしておきながら、肝心のフィーネとの関係は全くはっきりさせるつもりもないまま曖昧に放置しているのは、これも正直ずるいと思う。
ああ、なるほど。なんか今回のアルのやり方に不満というか納得がいかないというか、あんまり良い気分にならない理由がわかった。
俺の女に手を出すな、とはっきり自分の立ち位置を表明した上で、ちょっかい掛けてきた連中を叩き潰していたのなら、それはそれですっきりするものがあったのでしょう。
でも、彼女との関係を曖昧にしたままそれをはっきりさせるつもりもないアルは、あの若手貴族連中と実のところあんまり大差ないんじゃないだろうか。勿論、フィーネが望んでいるという一点において、若手貴族たちとは決定的な隔たりがあるのだけれど、アルはそんなフィーネの意思に甘えていないか、と思うんですよね、そう云う所がどうにもズルいと感じてしまったのでした。

はっきりせいよ! それに尽きる。

さて、一方で継承争いについても新たな進展が。進展というより、新たな観点が加わった、というべきか。前回の継承戦を覚えている人から提示される違和感、そして皇太子の死を契機に変貌してしまった皇子たち。
いやでも、上位の皇子たち、本来なら皇帝になるのに相応しい人品や能力だったのが別人みたいになってる、って別人に入れ替わっているわけではないみたいですし、性格に変化が出ているようなのだけど、そんな精神の変容が一人二人ではなく、というのはどう考えればいいのだろう。
なにやら背後で「悪魔」たちの動向が見えてきているのもあるけれど、うーん。精神面から変容させてしまうことで帝国に混乱をもたらそうというのなら、別に皇子たちじゃなくてもいいんですよね。直接皇帝やら宰相やらを狙い撃ちにしてもいいし、そもそもどうやったのかというのがわからないし。なんともモヤモヤする所だなあ。

と、ここでようやくレオにとってのヒロインが。他国の聖女様というのは、お妃様として引っ張ってこれる人材なんだろうか。ただ真面目で堅物というわけではなく、愛嬌とユーモアを兼ね備えた人みたいですし、レオのコンプレックスを包み込んでくれる人みたいなのでこのまま本当に彼のヒロインになってくれればいいのですけれど、見方を変えるとレオの闇落ちの触媒にもなりかねないからなあw
あと、あのレオ付きのメイドさん、書籍版だけのキャラみたいだけどどうにも持て余してますよねえ。居ても居なくてもいい存在感、というかもうむしろなんか置物みたいな扱いですし。これなら登場させなかった方が良かったんじゃないだろうか。