吼えろ ツインターボ!!


これ、実際の福島競馬場G3「七夕賞」の実況で絶叫されたセリフなんですよね。
このときの高橋雄一アナウンサーの絶叫たるや、G1でもここまで燃え上がるのは稀だろうという熱量の本当に喉が破れそうな叫びで、興奮が伝わってくるような伝説の実況なのでした。

こうしてみると、記憶に残る名レースにはこんなふうな名実況がセットになってついてくる。スポーツ実況というのはどのスポーツにもあるのですけど、こんなに幾つもの実況が語り草となって記憶に残り口の端に上り、何十年と語り継がれ続けるのは競馬以外では珍しいんじゃないだろうか。
それだけ、この競馬という僅か1分から3分の間に凝縮されたドラマを更に彩り演出するのにアナウンサーたちの個性的な実況が重要なファクターになっているのだな、と思うのです。

というわけで、今なお愛され続けている逃亡者ツインターボ。今回はその真骨頂とも言うべき回でありました。2期に入ってからその特徴的すぎるイカした見た目にギザ歯、無邪気で天真爛漫で純粋無垢なおバカなウマ娘。その娘は皆に愛され登場するだけで場を和ませてくれるマスコットでありました。
でも、彼女はマスコットじゃない。誰よりもひたむきにウマ娘として一生懸命走っていた娘だったのです。負けても負けても、幾ら勝てなくても勝つことを諦めなかった。強い相手と勝負して負かしてやるんだ、と食らいつき続けた娘だったのです。
ターボだけは、どんな強いウマ娘が出てきても驚くことも臆することもなかった。自分が倒してやるんだ、と自信満々に胸をそらしていた。身の程知らずであるのだろう、ターボは3歳のときにG3を一個勝っただけの実力ではその他大勢の中に埋没する程度のウマ娘に過ぎない。
テイオーは名前も覚えてくれなかった。そのくらいの娘なのである。
でもそんなのターボには関係なかったのだ。負けない、諦めない、絶対に勝つ。その純真さは純真であるが故に疑いを持たない。

だからだろう、テイオーが辞めるだなんて。走るのを諦めるだなんて、この娘だけにはどうしたって理解できなかったのだ。
トウカイテイオーが最初の骨折から復帰して大阪杯を勝った時、ターボと初めて二人きりで対面で話して、怪我したときはもうダメだと思ったのに頑張ったなあ、と噛みしめるように言うターボに、テイオーは言ったんですよ。語ってくれたから。
「諦めないことが大事だからね。だから頑張らなきゃ」

それを聞いた時、ターボ本当に嬉しそうな顔して「そうだね! ターボも頑張る!」って言ったんですよ。いつもちょっと偉そうな口調なのに、この時だけはターボ少し幼いくらいの感じのこの娘の繕わない本当の素の表情が見えたみたいで、とても好きなシーンでした。
でも、ただターボが可愛いだけじゃない、大事なシーンだったんだなあ。
ウマ娘 プリティーダービー Season 2 5話


片思いのライバルって、今回カノープスの仲間がターボのテイオーへの思いを言葉にしてくれましたけど、きっとこのときからずっとターボはテイオーのことライバルだと思っていたのでしょう。同志とすら思っていたかも知れない。きっと、憧れでもあったのだ。

だから、テイオーがもう諦めると言ったときに彼女だけがどうしても信じられなかった。テイオーがそんな事言うはずない、とどうしても受け入れられなかった。
だって、諦めないって言ったのだから。三度目の骨折したあとも、今度こそ勝負するって約束したんだから。

ウマ娘 プリティーダービー Season 2 10話3

ウマ娘 プリティーダービー Season 2 10話4
ウマ娘 プリティーダービー Season 2 10話6



今度ターボが出走するオールカマー。中山芝2200。現在はG2だけど、当時はG3。
そのオールカマーにはターボの他に安田記念・宝塚記念を連続2着した同じカノープスのイクノディクタスに、天皇賞春で現役最強のメジロマックイーンを撃破したライスシャワー。桜花賞を勝っているシスタートウショウ。G2を三勝。G1にこの時まで12回も出走していたG1戦線の常連ホワイトストーンという強力なメンバーが揃っていた。
あのライスも出るのに、君が勝てるわけがない。そう皮肉るように告げるテイオーに、ターボは絶対諦めないと咆哮する。勝ってそれを証明してやる、と。
心のライバル自身に自分の憧れを否定されて、悔しさに涙して、それでもこの娘は諦めない。

そんなターボを、同じチームのメンバーは、カノープスの面々はただのマスコットじゃない、本当に心の底から愛してるんですよね。オールカマーの日と、テイオーがファンに最後のお披露目をするというミニライブの会場であるファン感謝祭の日が重なってしまって、ターボの走りをテイオーに見せることができなくて、それでもなんとかならないか、とトレーナーにお願いするナイスネイチャ、マチカネタンホイザ、イクノディクタスの三人。
ここ、なんだかんだとトレーナーの事信頼してるのが伝わる姿で、それにちゃんと答えてくれるあの若いトレーナー、南坂くん。こいつ、なよなよしてるくせにここぞというとき頼もしいの、ほんとイケメン!

ウマ娘 プリティーダービー Season 2 10話7



そしてファン感謝祭当日。ライブの開始と同時に引退の報告をしようとしたテイオーに、キタサンブラックが、トレーナーが。ファンたちが。辞めないでくれ、まだ走るのを諦めないで、という声があがり、立ち尽くすテイオーの背後のスクリーンに突如映像が、

ウマ娘 プリティーダービー Season 2 10話8


伝説の93年オールカマー。ツインターボ一世一代の大激走。あのライスシャワーを筆頭にした並み居る強敵たちに影すら踏ませなかった、彼女のすべてを燃やし尽くした走りである。

ウマ娘 プリティーダービー Season 2 10話9



吼えろ ツインターボ!!

むしろこのセリフは、このオールカマーにこそふさわしかったかもしれない。
ターボの走る姿に目を奪われ、唇を震わせながら見入るトウカイテイオー。そんな彼女に向けて、ターボが叫ぶ。ターボが吼える。

ウマ娘 プリティーダービー Season 2 10話10


「これが諦めないってことだぁぁぁぁ!! トウカイテイオーぉぉ!!」


ウマ娘 プリティーダービー Season 2 10話12

ウマ娘 プリティーダービー Season 2 10話11



この走りに、この姿に、心動かされない者がいるだろうか。その叫びが届かない者がいるだろうか。
誰よりも明確に、テイオーにターボが伝えたのだ。諦めなければ、奇跡は起こる。
諦めさえしなければ。

ファンたちの、いつか後輩になるだろう若きウマ娘たちの、トレーナーの、仲間たちの声が、もう一度、もう一度だけトウカイテイオーの砕け散った心を奮い立たせてくれたのだ。

ウマ娘 プリティーダービー Season 2 10話13


その涙は、諦めの涙よりもずっと綺麗だ。


ウマ娘 プリティーダービー Season 2 10話14


あと、意地悪なこと言ってしまったなど諸々含めて、テイオー・ターボに土下座の図である。
うむ、ちゃんと謝ったのはえらいえらい。




『ウマ箱2』第1コーナー アニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』トレーナーズBOX)

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