【竜歌の巫女と二度目の誓い 2.薬を探す子供】  アマサカナタ/KeG GA文庫

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「初めまして。僕はこの館のかかりつけ医です。彼女は僕のお手伝い」
あの誓いから1か月。平穏な日々を過ごすルゼとギルバートだったが、ドミニクと名乗る青年とラティナという名の女性の訪れによって、静かな時間は急変する……。
「竜の遺骸が、移送中に盗まれた」
それは竜が関わる不穏な報せと、その件に関する調査依頼――事件を追っていく中、ルゼとギルバートは、十二年前に交わした怪我を負った一人の少年と小さな竜の叶うことのない願いから始まった、悲しい誓いにたどり着き……
「ボクの足が治ったなら……お前の背に、ボクを乗せてくれるかい? 」
大切な誓いを巡る物語、第二弾。

お互いをこれ以上無く想いあったからこそ、より深く結ばれるために交わした「約束」が、その想いの深さ故に果たされなくなった時に「呪い」に変わる。
これは前回のルゼとギルバートの話と全く同じ構図になる。約束したらあかんのかい! と思わず思ってしまいそうになるけれど、呪いとなった約束こそが途切れてしまった絆を辛うじて繋ぎ止めていたからこそ、もう一度新しい誓いを交わすことが出来たと思えば、呪いも転じて祝福になるのだろうか。
そもそも約束が誓わなければ、何もかもが潰えてしまった可能性もあるんですよね。とはいえ、それはルゼとギルバートの場合。果たして、ラティナとドミニクのケースではどうだったのか。12年もの離別は彼らに必要だったのか。ラティナが犯してしまった幾多の罪は、負うに足る罪だったのか。
ルゼとギルバートのケースはちょっと他の場合と比較するには重すぎるんですよね。こっちは本当にもうどうしようもない柵と罪業に塗れてしまっているだけに。
裏切り裏切られ殺し殺された関係。どちらも正しくどちらも罪深く、故にお互いをこの上なく強く想い合いながら、お互いに踏み込めない。それは人との繋がり方が不器用というのもあるのだろうけれど、それ以上に内包するシチュエーションが特殊すぎる側面もあるんですよね。
ルゼとギルが行き違ってしまうのも、それぞれに抱える相手に対する罪の意識が強いが故に、というのもあるんでしょうね。二人共自分にこそ罪がある、と思っているだけにどうしたって自分の方を蔑ろにして、相手の方を大事にしようとする。二人共がそうしたら、そりゃ行き違うよね。相手を大事にしようとしたら、相手は自身を思いっきり蔑ろにする。それはもう、自分自身を完全否定されるようなものだ。
そうして苛立つあまり八つ当たりしてしまえば、それもまた大事にスべき相手を傷つける行為で、自分のあり方の否定そのものになってしまうという追い打ちで。
ネガティブスパイラルだなあ。
これ、オズワルドが八面六臂の働きで間を取り持とうとしてくれなかったら、完全に行き詰まっていたんじゃないだろうか。そりゃ荒治療で余計に拗れてしまったけれど、一度お互い致命的な所まで踏み込んで酷い事にならないと自覚すらしなかっただろうし。
オズってはそこまであれこれ世話して手配りして間取り持とうとしてって、過保護もイイ所だと思うほどなんだけど、ルゼたちの関係はあまりにも重すぎるので、それくらいしてやっとこ、なのかもしれない。いやほんと、オズ様様である。働きすぎじゃないのか? 気を使いすぎてストレスマッハじゃないですか?

さて、今回の黒幕、というよりも悪役であるガーウィン。彼はそもそも、約束すら交わして貰えなかった存在なんですよね。誓いもなく、だからこそその想いは彼の中にのみ淀む方向性を喪った呪いとなってしまった。
ギルバートの場合は自分が手を下した、巫女を殺したからこそ、その罪の意識は自分自身へと向けられたけど、ガーウィンの場合は自分の想いを受け取っても貰えず行所もないまま淀み腐り、救えなかった事実は救わなかったものたちへの憎悪へと変換されてしまった。彼の呪いは、竜に、世に向けて解き放たれてしまった。
もし、ギルバートが巫女を裏切らなかったら。世界をこそ裏切り、その果てに巫女を喪ってしまっていたら。彼の想いはどこへと向かっていただろうか。自身に向けて渦巻く殺意が、果たしてどこに放たれていたのか。
ギルバート自身が思い描いたように、ガーウィンというのはもうひとりのギルバートのあったかもしれない可能性だったわけか。
ならば、たとえ呪いに変わろうとも繋がりである事は間違いなかった約束は、祝福に至るものだったのか。
罪の意識を抱えながら、それでも二人で先に進もうと二度目の誓いを結ぶことができたドミニクたちの姿を、ルゼとギルは指針と出来ればいいのですけれど。もう少しオズに楽させてあげてくださいホント。
さて、ドンキーの存在が不明であり不穏のまま今回の話はひとまず片付いたのですが、彼の正体相当怪しいよなあ。そもそも、いったい「いつ」から活動してるんだ、この男は。