【僕の軍師は、スカートが短すぎる~サラリーマンとJK、ひとつ屋根の下】  七条 剛/パルプピロシ GA文庫

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「おにーさん、助けてくれたお礼に、定時帰り、させてあげよっか」
ブラック企業に勤める史樹。終電帰りのある日、家の前に少女がうずくまっていた。その少女・穂春は、助けてもらったお礼として、史樹の抱える仕事上のトラブルをたちどころに解決してしまう。
どうしても定時帰りしたい史樹と、身を寄せるところを探していた穂春。史樹は衣食住を提供する代わりに、穂春のアドバイスに頼ることにする。
「人は先に親切にされると、お返ししなきゃって思う生き物なんだよ」
二人の同居生活が始まると同時に、史樹の社畜生活は一変するのだった。
サラリーマンとJK の、温かくも奇妙な同居生活ラブコメディ、開幕。
タイトルからすると、生足を見せびらかして誘惑してくる小悪魔的な女子高生がヒロインだと連想してしまいそうになりますけど、むしろこの穂春、そういう女の子を強調するようなアイドルっぽい可愛い衣装は苦手……というよりも自分には似合わないというコンプレックスみたいなものを抱えてるっぽいので、むしろ嫌がってます。
でも、それをわざわざスカートが短い、なんてタイトル引っ張ってくるあたり、ヒロインである彼女が抱えている問題の最重要案件なのかもしれません。
彼女が自分からアイドルをプロデュースしてデビューさせた事を含めて、ずっと引きずっていた家庭問題に関しては、ラストで主人公の北条くんがさらっと解決してしまうのですが。
こうしてみると、北条はけっこう行動力あるんですよね。ぼんやりしているようで、穂春が拘っている部分をちゃんと察して調べ上げ、彼女の父親と連絡を取って穂春のなかで雁字搦めになっていたものを解きほぐした上で解決策を提示する、なんて真似をするのですから。
ただ、若干的外れなところがあり、無自覚であるだけで。穂春が元々求めていた事は、喪われてしまった家族の想い出のヨスガを取り戻すためだったのが、想い出じゃなく新しい家族の温もりと幸せを図らずして穂春に与えてしまったわけで。穂春としては、なんかもう心理的にひっくり返されちゃったんだな、これ。
父親を通じて習い親しんだ心理学を駆使して、デビューからアイドルをプロデュースし、また北条の勤務環境を改善するなど、人の心の動きを読み誘導することに長けた「軍師」としての手腕を振るう穂春。だから、他人の心理を読み取るなんて事はお手の物、のはずなんだけど、案外と自分自身の心理は自覚できないし、家族である父親に関しても一方的な感情が邪魔をして冷静な判断が出来ていなかった、というあたりを見ると人の心を手玉に取り操るような魔女とは程遠い、未熟な少女である事が伺えるんですよね。
そして、頼まれたら断れないという他人からすると都合の良い人間であるはずのおにーさん、北条についても穂春はどうにも思う通りには動かせていないんですよね。いや、ちゃんと口で頼んでお願いすればホイホイというとおりに動いてはくれるのですが、心理を誘導したり気持ちや心を思う方に動かしたりという事になるとどうしても空振りするというか手応えがなく躱されてしまうというか。
お陰で北条相手には、穂春もなんだかモヤモヤしたりヤキモキして気を揉むことに。
そのあたりが、彼女の可愛げにもなっていると思うのですけれど、北条の方が完全に妹扱いで女の子として見ていない証明にもなっちゃってるんですよね。
その北条ですけど、個人的にはあまり好きではないタイプ。頼まれたら断れない、というのを自覚していながらちょっと度が過ぎた引き受け方してるんですよね。それ、好きでやってるなら文句ないのですけど、妹を引き取るという明確な目的があるにも関わらず、どうでもいい頼まれごとの方を流されるように優先して、妹を引き取る条件の方を破綻させてしまっているのは本末転倒もいいところ。
主体性がないのかと思えば、穂春の件では積極的に自分から動いているし、穂春の言われた通りにやっているとはいえ、会社内でも結構派手な立ち回りをしてるんですよね。いや、それだけ自分から動けるなら、なんであんなに流されて無茶振りも悪意ある押し付けもホイホイと引き受けるのか。そういう状態から、穂春と関わってちょっと変わった、というのもあるのかもしれないですけど、どうにもキャラがチグハグというか、よくわからないボンヤリと印象の定まらない人だなあ、という感じでした。
嫌がらせしてくる相手が、本当にしょうもない小物だったのもなんともはや。
しかしこれ、わかりやすい会社内の障害は排除されちゃいましたし、ここから話どう広げるんだろう。軍師としての話よりも、穂春自身をプロデュースみたいな展開になっていきそうに思えるのだが。

七条 剛作品感想