【わたし以外とのラブコメは許さないんだからね 2】  羽場 楽人/イコモチ 電撃文庫

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小悪魔系後輩登場! 恋人になってから始まるラブコメ戦線、第二弾!

「俺と有坂は付き合っている。ヨルカは俺の恋人だ」
ザ・平均値な男子高校生の俺と、完全無欠のハイスペック美少女・有坂ヨルカ。二人の秘密の関係はクラスメイトに向けての恋人宣言により晴れて公認に。だがそれはハッピーエンドなどではなく、新たな騒動の序章でしかなかった!
中学時代から俺と親しかった小生意気な後輩・幸波紗夕との再会をきっかけに俺達の両想いが揺さぶられる事態に!?
「きー先輩、好きです。私と付き合ってください」
俺、案外モテている? いやいや、ヨルカ一筋ですから! 告白で幕開けるラブコメ戦線、第二弾。

「わたし以外とのラブコメは許さないんだからね!」と仰ってるヨルカさんですけど、他の女子とは一切関わるんじゃねえ、という風には言ってないんですよね。それどころか、紗夕が引きずってしまっていた恋心に決着をつけるのに、むしろ希墨の背中を押してるくらい。
ラブコメするは許さん。だけど青春するのは推奨します、て事なのかしら。
希墨の心が既にヨルカにあって揺るぎない、という点にはヨルカ自身も自信があるのでしょう。実際、希墨は恋愛感情という面においては一切ブレることがない。でも、恋愛感情はなくても友情や後輩への親愛ではすごく悩むんですよね。希墨としては、ラブコメではないんだろうな、これ。

希墨本人はどうやらまったく自覚ないみたいなんだけど、こいつって人の良い所を見たらそのまま口に出して言う傾向があるっぽいんですよね。褒める事や良い所を指摘することに躊躇いがない。それも上っ面じゃなくて、本質をえぐるような鋭い指摘なものだから言われた方は平静では居られないわけだ。ああ、この人自分のことわかってくれてる。自分のことよく見てくれている、と思ってしまう。
実際、よく見てるもんだから間違ってはいないんだけど。
それは、その人だけをよく見てるわけじゃなくて、別け隔てなく色んな人のことをよく見てるんですよね。色眼鏡や偏見を介さず下心もなく……、朝姫たちなんかは後で気づいて、別け隔てなくフラットに見る人なのだ、と述懐していましたが。
でも、言われた方からするとなんか特別感感じてしまうじゃないですか。そりゃ、彼に失恋する娘がわんさと出てきてしまうのも当然なのかもしれない。
ある意味たちが悪いのは、彼は振ったあとも態度変わらないフラットのまま、という所なのでしょう。そのお陰で友人としての立ち位置に戻れる娘もいれば、消化不良のままくすぶってしまう娘もいる。態度が露骨に変わってしまったり、気まずくなってしまったら自然と距離を置くことになったり疎遠になったり、という形で関係も終えられるのでしょうけどね。それが良いのか悪いのかはわかりませんが。
紗夕はある意味、一番可能性が高かった娘でした。ヨルカと会う前の希墨と、星の巡りさえ良ければ付き合うことが出来ていたかもしれない娘でした。
タイミングが悪かった、とも言えるのでしょうけれど、チャンスを片っ端から逃してしまったのは紗夕の自業自得でもあるんですよね。勇気があれば、決断力があれば、希墨先輩を好きになる人がいるわけがないという油断が、希墨先輩が誰かに夢中になるなんてあるはずないという思い込み。それが、掴もうと思えば掴めた魚をスルリと逃してしまう痛恨のミスとなってしまったのでありました。
後悔先に立たず。チャンスがあったからこそ尚更に、未練が残ってしまう。
失恋も出来ていない、そう鬱屈を深めていく後輩の懊悩に、希墨は当事者だからこそ最も手が届く所から遠い場所にいる。
ここで紗夕にきっちり引導を渡してくれるのが、希墨じゃなくてヨルカというのがまたイイんですよね。生の恋人だからこそ出来る、両思いの熱を伝えてあげられる。自分を向いてくれない希墨の恋心だけじゃ、紗夕は置いてけぼりにされてしまうだけだったんですよね。でも、ヨルカからも希墨への熱い揺るぎない恋の熱をそっと教えてもらうことで、ようやく紗夕の置いてけぼりにされてしまっていた心が、現実に追いついてくる。
ああ、青春だなあ、とようやく泣くことの出来た紗夕の号泣と、それを優しく見守るヨルカの姿に感じ入るのでした。変化球抜きの、ただただ真っ直ぐに恋と青春に向き合ったお話でした。
こういう段階になると、男がどうこうするのは野暮ですよねえ。女の子同士で後腐れなく想いを吐き出し合うという意味では、ヨルカさんしっかり彼氏をラブコメからは遠ざけたんじゃないでしょうか。