【星詠みの魔法使い 1.魔導書作家になれますか?】  六海刻羽/ゆさの オーバーラップ文庫

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魔導の極致に至る、主人公(ヒーロー)を綴る物語。

魔導書作家――魔法使いの極致で、世界にほんの一握りしかいない存在。
世界最高峰の魔法使い教育機関とされるソラナカルタ魔法学校に籍を置く上級生の少年・ヨヨ。
魔法学校の地下空間に広がる工房迷宮でヨヨが出会ったのは、夢を抱く新入生の少女・ルナだった。
「わたし、魔導書作家になりたいんです! 」
あまりにも非現実的な夢を、当然のように口にするルナの瞳は輝いていた。
目的を見失っていたヨヨには、より一層そう見えた。空っぽの少年・ヨヨと、夢を追う少女・ルナ。
二人の魔導書を巡る物語が、今幕を開ける――。

輝きが力を喪って光が消えていく時、その輝きに魅せられていた者はどうなってしまうのか。
一人の少女の眩しいくらいの輝きに魅せられてしまった少年は、彼女に憧れ追いかけその夢を全力で応援することにした。それが彼にとっての魔法使いの生き様だったのだ。
でも、その彼女の輝きが失墜してしまったとき。彼女が挫折して夢打ち砕かれ去っていったとき、彼は諸共折れてしまった。彼女の夢を応援し支えその輝きに寄り添うつもりだった彼はただ一人そこに置き去りにされてしまった。
これは熱によって駆動する物語だ。勢いによって加速し、夢見る人の熱量によってパワーを得て、その夢を後押しする周りの人たちの声援によって走り出す、そんな輝きの物語だ。
だからすごく熱いし、キャラクターたちはキラキラと輝いていく。力尽きて落ちて行く姿すら流星のように美しい。
第一巻だからだろうか、物語の起承転結は最初から最後まで全力疾走で駆け抜けるようだった。メインヒロインのルナの魔導書作家という夢にかける想いは、さながら雪崩落ちる瀑布のようだ。彼女に関しては本当に留まるところを知らない。諦めることができない。書くことへの衝動は本能的なもので、前向きな気持ちに留まらず悔しさや怒りですら書くことへと変換される。書かずには居られない、トビッキリの本物の作家だ。彼女自身は物語の主人公を見出しその姿を追いかけ書き留める存在だと自認しているけれど、ある意味主人公以上に輝いている。
肝心の主人公のヨヨの方は、いわば月だ。他者の輝きに照らされて彼自身が輝いていく。流星であり星の示す運命を体現する魔法使いである彼は、その実彼独りでは輝けない。空っぽ、という自認はある意味間違っていないのだろう。しかし、その空っぽの器を満たす輝きが差し込めば、誰よりも光り輝くという意味ではやはり主人公なのだ。
その意味では、ベルベットの見立ては完璧なまでに当てはまっていたのだろう。この物語の監督はまさしくこの死霊魔術師であったと言える。
願えば叶う、世界の在り方すらその想いの強さでねじ伏せる、そんな魔法の在り方は幻想的で力強い夢想にあふれている。しかし、そんな魔法を使う魔法使いを生み出す学園の在り方は残酷なまでに容赦がない。篩を掛けて余分を排していき、無為を脱落させ、魔法を極めるために必要不可欠な狂気を孕むためのシステムを体現している。このソラナカルタという学校で年度を生き残り学年をあげていく、という事はそれだけ人から逸脱していくということだ。その情熱に狂っていくということだ。
その濃厚な世界観には酩酊すら覚える。実に味わい深い舞台であり、そこで踊る登場人物たちは熱く激しく生き急いでいて、それ故に魅力的だ。
面白い。

しかし問題もあって、あまりにも急ぎ足で駆け抜けているために、物語としての貯めの部分がスコーンと抜けている感覚があるんですよね。実際、自分は丸々一章分抜けてるんじゃないかと思ったくらい。ちょうど真ん中、充実していた前半からいきなり真ん中がストンと抜けたように、ヨヨが折れちゃうんですよね。そして、唐突に復活してしまう。
彼自身の葛藤、苦しみ悩みは、彼自身の口で語られていて、自分自身の中の矛盾、支離滅裂な言動への嫌悪など思考の行程の筋道はちゃんと順番に立っているのだけれど、ちょっとそのあたりの表現が急ぎ足すぎたんじゃないだろうか、と思うんですよね。
ヨヨとルナの交流パートも、ルナの親友のエヴァとのパートも含めてもう一幕必要だったんじゃないだろうか。再会からそのままダンジョン探索に出て、そこからいきなりヨヨのトラウマ再発、でしたからね。コミュパートがやっぱりもの足りない、必要分が抜けてるよ。
終盤、ルナの絶対に諦めない輝きの強さもヨヨ復活からのドライブ感たっぷりのクライマックスパートの盛り上がりも、非常に充実して密度も濃くスピーディーだっただけに、やはり真ん中の抜け落ち感がどうしても気になってしまったんですよね。
緩急の緩さがほしかったなあ、と。起承転結の承をじっくりコトコト煮込んでほしかったなあ、と。
そのあたりがスコーンとハマったら、ハチャメチャに面白くなりそうな感触なんですよね。ポテンシャルは十分、化ける要素はみっしりと詰まってる。あとはひと手間、ワンクッション。
そんな塩梅を期待したいところです。その意味でも先が楽しみな作品でした。