【魔王2099 2.電脳魔導都市・秋葉原】  紫 大悟/クレタ 富士見ファンタジア文庫

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伝説の魔王――奇怪なる進化を極めた“秋葉原”に君臨する!

秋葉原市。革新的な発展を続ける“電気街”と古き伝統を重んじる“魔法街”が対立構造を呈する未来都市に、魔王・ベルトールは降臨した……超名門学園への留学生として。新たな舞台を駆ける、未来の魔王譚第二幕!

魔王ベルトールさま、ゲーム実況動画の配信者を生業としてしまったために、頭ゲーム脳になっちゃってるよ!
前回で電脳ジャックして顔と名前を売りまくったお陰もあって、登録者も増えまくってるのか。300万というのが多いのかどうなのかわからないけれど、金銭的な収入的にも魔王信者として魔力供給源としても、この数は生活の余裕に繋がるには十分なのだろう。
そろそろ、マキナのヒモからは脱出できたんでしょうか。というか、マキナも不死者という身分証明が出来ない立場なのでフリーターという不安定な職にしかつけなくて結構カツカツだったのですから、逆に養うくらいの甲斐性を魔王様には見せてほしい所です。
というわけで、目下の目標は行方不明の魔王軍大幹部七魔侯の面々の行方を探すために、魔侯の現在の状況がわかるという散逸している魔侯録の確保。その一つが秋葉原にある魔法学校の宝物庫に収められているということで、物語はいざ異世界魔法学園編へ!
ベルトールって見た目の年齢二十代前半くらいかと考えてたんだけど、学生でもいけるの!?
教師枠とかいう変化球ではなく、直球で転校生としてマキナと高橋を引き連れて秋葉原の名門魔法学園へと乗り込むベルトールたち。魔力計ふっとばしたり因縁つけてきた貴族っぽいのをふっ飛ばしたりと、ノリが完全に転生モノの異世界学園無双なんですけど!
そこで出会うは秋葉原御三家の一角の跡継ぎにして、没落した貴族家のご令嬢。これでお家復興のために意気軒昂、というのならそのまま転生学園モノのパターンなのだけれど、彼女山田=レイナード・緋月はどちらかというと落ちぶれ自身も落ちこぼれ、本来は快活活発な人柄なのだろうけれど、諦観と周囲からの悪意に心へし折れている状態で、鬱々と日々を過ごしている娘さんなんですよね。
それがベルトールに目をつけられたことによって、散々振り回されるうちに鬱屈を無理やり振り払われ仄かに楽しくなってきて、心に明るさを取り戻していく。
こちらはどこか乙女ゲーのようなノリなんですよね。
緋月って娘は同世代からは孤立して疎まれ見下されているし、両親は秋葉原という地をめぐる政治的なゴタゴタのせいで亡くなり、家自身も没落してしまったものの、緋月自身は御三家のうちの二家の当主の二人から目をかけられ、可愛がられているんですよね。
ありそうな展開として下心ありの付き合いだろう、親身になっているふりをして緋月が持っていると思しきレガリアを狙っているんだろう、と思いきや、このゴブリンの大親分とフルサイボーグ化したエルフの学園理事長という二人、本当に心から緋月の事を実の娘のように可愛がって心配して世話して面倒みようとしてたんですよね。
だからこそ、余計に悲劇的になるのですが。
緋月も自分に注がれている愛情をちゃんと知っていただけに、心折れて鬱屈を抱えてしまっていてもそこから歪まず僻まず屈折せずにじっと耐えていられたんでしょうなあ。
ある意味、その愛情こそがしがらみとなっていたのかもしれませんけれど、彼女にとっては二人からの愛情は救いであり支えであったのは間違いないはず。両親が遺してくれた愛情と指針だけでは、思春期の娘さんが我慢できるものではなかったでしょうから。

しかし、ここから「学校に突然テロリストの集団がー!」という定番のアクションサスペンスまで盛り込んでくるとは。
1巻でもファンタジーにSFをごたまぜにした挙げ句にサイバーパンク、というやりたい放題な詰め合わせでもって作品自体を賑わせた本作ですけれど、2巻をまったく同じ基盤に乗っけたまま先にすすめるのではなくて、こうやって違う種類の山盛り詰め合わせのやりたい放題で来るとは思いませんでした。
このカオスを、しかし魔王ベルトールのキャラは易易と波乗りこなすんですよねえ。魔王さま、常にノリノリである。どんなウェーブが襲ってきても、全部ベルトールの世界にしてしまうんだよなあ。そこんところ、存在強度がやたらとつよいです。どんな波が来ても、ノリノリで楽しそうに乗りこなして我が物にしてしまう。おかげで、ひたすら面白い。
それにこの人、魔王と名乗っているけれど覇道の人ではなく王道の人なんですよねえ。信義にあふれた義侠の人ではなかろうか。好漢でありカリスマでもある。そりゃ、周りに人も集まりますわ。この男に任せた、と言われる事が何よりの喜びになってしまう。何気に人を乗せるのもうまいですしねえ。
ともあれ、あの裏切り者マルキュスも所属していたという組織の暗躍が発覚して、黒幕の存在がにわかに浮き上がってきました。
魔侯たちの行方も含めて、話も順調に広がってきた。
しかし緋月ってば、あの欠片を中に残したままだと勇者と魔王の両方惹かれてしまうことになるんじゃないだろうか。彼女が乙女ゲーの主人公ならそれも順当なのかもしれませんがw