【グリモアレファレンス 2.貸出延滞はほどほどに】 佐伯 庸介/花ヶ田 電撃文庫

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図書委員の仕事は迷宮探索だけじゃない!? 未返却の魔書を回収せよ!

図書館の地下に広がる迷宮を探索する一方、通常のレファレンスもこなす図書隊のメンバーたち。
そんな中、守砂は大学教授の紙珠から地下に収められた魔導書の貸出を依頼される。初めて直接受けたレファレンスに張り切るものの、探索はトラブルの連続で……!?
「無いん! です! けどぉぉぉぉ!!」
未返却の図書の回収や男子の夢が詰まった隠し部屋の攻略など、図書委員として順調に探索をこなしていく守砂隊だが、迷宮のすべてを解き明かそうとする彼らに対し魔書生物たちが明確な敵意を持ち襲い来る――!!

紙珠櫛子教授、という守砂くんと過去に繋がりのある先生が登場してきましたけれど、名前の櫛からはついつい櫛名田姫が思い浮かんでしまって、すわメインヒロイン登場か! とざわついたのですけれど、むしろ紙珠……かむたま、と読むのだそうですけれど、そこから連想される神魂命―神産巣日神の方がモデルになるのかな。この神様は祖神として援助者としての側面を持っているそうで、紙珠教授も学者という立場から色々と知恵を貸してくれたり、直接勉強を教えてくれたり、と守砂くんたちのパーティーを熱心に手助けしてくれるんですよね。面倒見の良いお姉さん、といういい感じの人でねえ。
同時に、この人が守砂くんたちに初めてレファレンスの依頼を出してくれた人でもあり、ってフブルさん通して回ってきたのでありますけど、探索だけじゃない図書委員としてのお仕事を体験させてくれるきっかけになったわけです。書庫から目的の本を見つけてくる、というレファレンスのお仕事はその場所が図書館迷宮ということで中々に大変なのだけれど、苦労して見つけてきた本を直接依頼人に手渡しして、喜んでもらえるという体験は図書委員ならではの充実感なんですよねえ。いや、普通の図書委員でそんな体験することじたい少ないでしょうけれど。
迷宮探索云々じゃなくても、そもそも図書委員でレファレンスを体験するような本格的な図書館を擁した学校で図書委員を本格的にやる、なんて経験する人は少ないでしょうしねえ。
ともあれ、これはこれで学生らしい、委員としての体験の一つでもあるわけだ。
今回はちょっとした短編集的な体裁なんだけれど、迷宮探索者としての図書委員としてよりも、学生、生徒という立場としての登場人物たちの日常の様子を垣間見るような構成だったんですよねえ。
ちゃんと、学生として青春を謳歌しているなー! 毎日、充実した時間を過ごしてるなあ。というのが伝わってくる内容で。図書館迷宮の探索って、お仕事ではあるんだけれど、社会人という立場からのお仕事とはまた違って、ちゃんと学生としてのお仕事……なんていうんだろう、学校業務を補完するためのお仕事というんじゃなくて、学生として学びを充実させるためのお仕事って感じがするんですよねえ。知識を得たりとかのお勉強としての学びじゃなくて、学生の時しか出来ない体験としての学び、という風に言えばいいのかな。
ミカ姉との二人での延滞督促を兼ねた迷宮探索も、改めて二人の関係がどんなものなのかを実感させてくれる、ミカ姉的にはデート回と強弁してもまあ否定出来ない内容でしたし、エロ本を巡る男子と女子の攻防(一方的)なんかはもう、もろに若いなあと微笑ましくなってしまうものでしたし。男の子たちの熱の入れようといい、女子たちの激烈な拒否反応といい、思春期だからこその溌剌さなんですよねえ。
加来くんとの仲悪いにも関わらず、なんだかんだと協力してしまうエロへの欲求よw
加来くんとのあの複雑な関係は、単純に仲が悪い、で表現しきれないものがあるんですけどね。守砂くんサイドからは加来くんには別に思う所なかったり、加来くん自身過去の守砂くんには深い嫌悪めいた感情があるものの、現状の守砂くんはかつてとは違うという理解もあって、でもやっぱり嫌い、でも誰よりも認めている、認めているからこそ信用できなくて、でも信頼もしていて、という無関心では居られない複雑な思いが絡みついてる所は、ほんと好きですわーw

こういうのを見せられると、青春してるなあ、とやっぱり目を細くしてしまいますよ。こういう温かい熱がじんわりと伝わってくる生き生きとした描写は、ほんと好きですわー。
しかし、ミカ姉さんは本気で色んな意味でヤバい人だったのかw
この人、魔書のバフ抜きでも化け物なんじゃないだろうか。迷宮の外でも人外魔境出来そうなんだけど。その分、ポンコツさも残念なことになっていますが。
守砂くんの好みがモロにミカ姉さんだったのはちょっと笑ってしまいましたけど。いや、マジでストライクに好みが見た目から性格に至るまで彼女のことを指しているのに、未だ女性として意識されてないのって、完全にミカ姉の接し方の問題なんだろうなあ、これw
いやでも、ちゃんとメインヒロインがミカ姉っぽくて良かったですよ。

そんなメインヒロインの座を、ある意味脅かす人も出てきましたけれど。そうだよなー、中学時代からの友人、という文句を最初は普通にそうなんだー、と流してましたけれど、守砂くんの中学時代に友人とか明らかに厄ネタじゃないですかw あのひでえ中学時代に友人やっているという時点でちょっとおかしいですし。
最後にちらっと見せてくれた本心は、ミカ姉に引けを取らない守砂くんへの執心を見せながら、同時に方向性がまったく逆だという事実が、彼の妖しさを引き立たせてくれる。
生中な暗躍では、あのクレバーの塊のような守砂くんを引きずり回す姿は想像もできないのだけれど、本質的に守砂くんが中学時代のあの魔王のような在り方を失っていなければ、理解者であればあるほど、その本質を引き出す妙手を見つけることができるだろうしなあ。
本当に守砂くんは昔と何も変わっていないのか。それとも、今仲間を得て、新たな楽しい時間を得て、確かな変化を内側で芽生えさせているのか。その真価が、友人であるという彼……八十間雅の活動を通して見えてくるかもしれない。
でも、八十間って元ネタは八十神になるのかな。元ネタ的にはむしろ、大国後輩の敵役っぽいんだけどなあ。でも、守砂の天秤を自分の方に傾けるために対決する、綱引きする、取り合いする、という意味ではミカ姉じゃなくて大国後輩との方が噛み合うのかしらこれ。