【賢者の弟子を名乗る賢者 1】  りゅうせんひろつぐ/藤ちょこ GCノベルズ

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VRMMO『アーク・アース オンライン』で、
九賢者の一人という渋い召喚士「ダンブルフ」としてロールプレイしていた咲森鑑(さきもりかがみ)は、
プレイ中の寝落ちを境にゲームが現実となった世界へと飛ばされてしまう。
しかも、老練な渋い賢者の姿ではなく可憐な少女の姿となって……。

このままでは築き上げてきた賢者の威厳が失墜してしまう!

そう考えた咲森鑑(さきもり・かがみ)ことダンブルフは、
賢者の弟子「ミラ」と名乗るのだったが――。
あれ? この作品ってアニメ化予定なのか。知らんかった。
GCノベルズでも創刊最初期からシリーズが続いているレーベルの看板作品の一つです。コミカライズされた漫画の方を見て、これがなかなか面白そうだったので原作の方もいつか手を出してみようと思っていたのですが、思ってからが長かったw
ゲームのキャラクターのまま、現実化してしまったゲームの世界に転生、或いは転移? ともあれゲームの世界へと入ってしまった主人公だけれど、通常と違ったのは転移する直前たまたま自分のキャラクターである渋いジジイの姿をした召喚士「ダンブルフ」のキャラクターデザインを、課金アイテムを使ってついつい趣味で作り込んでしまった美少女キャラへと変更してしまっていたんですね。ちょっと勢い余って造形してしまったというだけで、完全にキャラデザインを変更してしまうつもりは毛頭なかったものの、タイミングが悪すぎた。
結果として、誰も知らない超絶美少女の姿でゲーム世界へと降り立つ羽目になってしまったのである。
かの世界では自キャラ「ダンブルフ」は世界屈指の魔術師の一人であり超有名人ではあったものの、今の自分は誰も知らない美少女。しかも、何やらゲーム世界では前回ログインしていた時から中の時間で三十年もの時間が経ってしまっていたらしい。
おまけに、ゲームが現実化したのか、元々ゲームが異世界に接続されていたのかはわからないものの、ゲームの時に使えていた機能が幾つも使用不能になっていて、キャラデザも変更できなくなってしまった主人公。これでダンブルフを名乗っても信じてもらえるはずもなく、信じて貰ったら貰ったで何やってんだ賢者、てな事になりそうなので急遽賢者の弟子を名乗ることにしたのでありました。
しかし、ゲームならともかく現実化してしまった世界でいきなり「女の子」になってしまうというのは、現実であるからこその困ったことがたくさんあるわけで。
異世界に戸惑うよりもTSしてしまった自分の肉体の方に困惑し慌てふためくダンブルフ改めミラ嬢。

TS願望があるわけじゃなく、それどころかジジイ専じゃないけれど、渋いジジイキャラにこだわりと愛着と趣味がある身としては、女性化というのはどうしたって抵抗があるわけで。かといって、女性の肉体には興味が尽きない、という複雑な心境が女の子パンツを履くこと、女性下着への抵抗感という形でにじみ出ているの、ついに現実に屈するところまで含めて、TSならではの妙というものがあって味わいがありました。
「わし、かわいい」
と、思わずこぼしてしまった瞬間は、ついに後戻りできない一線を越えてしまった感があって、よかよかw

幸いにして、なのかはこの先わかりませんけれど、ミラとは別のゲームプレイヤーたちが何人もミラと同じくこの世界に降り立っている、というのは世界観が広がる感覚があって面白かったです。
元々、知名度も世界における立場や役割なんかも、プレイヤーたちは重たい所にいて超有名人ばかりなんですよね。すぐに旧友とも再会できたのは両者にとっても幸いだったのでしょう。まあ、ミラの降臨はプレイヤーの中でも特に遅い方だったみたいだけれど。何しろ30年ですからね。
それでも、孤独でないというのはそれだけで良いことです。友達はそれだけでもかけがえのないものですし、もう戻れないとしたら、かつてのゲーム時代の想い出を一緒に笑って語れる相手がいる、というのは、生きていく拠り所にもなりえますからねえ。
まだ世界の設定から、キャラの立ち位置や主だった登場人物の紹介といった感じで、事件も起きているけれどまだまだ冒頭。ミラも世界屈指の召喚士である能力をまだまだ見せていない状況なのですが。
語り口が軽妙ゆえなのか、すいすいと読める上に目が滑らずゆるい雰囲気を心から楽しめる読み込ませる作品になっていて、さすがは長期シリーズになっている看板作品なだけあるなあ、と思った次第。いやほんと、まだ大して何も起こってないんですけどね。
ただ、プレイヤーのみならず、元々NPCだったこの世界の元からの住人達も、まだ出始めにも関わらず活きが良くて、好感の持てるキャラが多くて、そういう意味でもミラと同じようにこの世界を見て回り、この世界に暮らしている人たちとお話するのがなんともポワポワして楽しい、と思わせてくれる作品でした。
遅れ馳せながら、ぼちぼちとですがシリーズ全部追いかけてみたいと思います。