【死神に育てられた少女は漆黒の剣を胸に抱く VI】  彩峰舞人/ シエラ オーバーラップ文庫

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最強(オリビア)vs 最強(フェリックス)

王国の命運を賭した、帝国に対する決死の反攻計画“暁の連獅子作戦"がついに発動する。
第二軍のブラッドを総大将とし、オリビア率いる第八軍、さらには同盟を結ぶメキア神国軍からなる王国第二連合軍は、帝都オルステッドに向けて進軍を開始。
虚を突いた作戦は功を奏し、目標とする帝都は目前に迫っていた。
しかし、帝国最強と謳われる“蒼の騎士団"を前に、戦況は刻一刻と敗北へと傾いていく……。
起死回生の一手として、“死神"オリビアは少数精鋭による玉砕覚悟の強襲作戦に臨む。
立ちはだかるは、帝国最強の将・フェリックス。
最強同士が激突する最終決戦の幕が上がる――!

唐突に死神ゼットと少女オリビアが初めて巡り合う回想が挟まれて戸惑ってしまった。オリビアって、赤ん坊の頃にゼットに拾われて今まで育てられたんじゃなかったんだっけ?
と、思っていたらその少女オリビアは長じてとある男性と結婚し、一人の赤ん坊を産んじゃうんですよ。そう、この物語の主人公であるオリビアは、本来「オリビア」という名前じゃなく、その母親こそがオリビア・ヴァレッドストームだったのである。
紆余曲折あり、赤ん坊は人の立ち入らぬ森の奥深くで父親と思しき亡骸の横で生き残っていたのをゼットが拾い育て、今に至るわけですけれど。
ゼットとオリビアの母にこんな交流があったと知ってしまうと、ゼットが赤子の素性を知っていたかはわからないけれど、その子に「オリビア」の名前を与えて育てたという事実には意味深なものを感じてしまうんですよね。
その天真爛漫さで死神を恐れる事なく彼に多くの示唆を与え、人ならざるその身に今までにない「心」を宿すきっかけになった人間の少女。その娘の事をゼットはどのように思っていたのか。想っていたのか。
オリビアの名前には思いの外「情念」が込められているように見えるんですよね。

しかし、そんな手ずから育てた少女を置いて、ゼットは消えてしまう。未だ彼が何を思ってオリビアのもとを去ったのかはわからないが、ゼットを追い人間の世界に飛び出したオリビアはそこでゼット以外の大切な人たちと出会うことになる。
ただ成り行きで戦争に加わったオリビアが、明確に戦う理由を得たのはそうした友達を得たからだ。
果たして、ゼットはオリビアを人の世界に戻したかったのか。だが、戦争の渦中で得た友誼は、親愛は、同じ戦争によって奪われ失われることになる。
オリビア・ヴァレッドストームはまだその冷酷な現実を知らない無垢なる乙女だ。本当に大切なものを失った時、純真無垢なる彼女の心はどうなってしまうのか。それを目の当たりにするであろう時間が刻々と迫ってきている。彼女にそれを強いる、驚愕の急展開だった。ヒロイン、お前なのかよ!

いやでも、結構急展開続きなんですよね。これまで伏せられていたオリビアの出自、両親の存在が明らかにされ、深淵人と阿修羅と呼ばれる一族との因縁がオリビアにどう繋がっているのかもわかったのですけれど……ぶっちゃけ、オリビアからすれば眼中にない、まま変わってはいないんですけどね。
オリビア率いる第八軍とフェリックス率いる蒼の騎士団との激突は、お互い各々の国の真打ち同士ということで激闘が続く。正直ローゼマリーとの再戦も飛ばして神国メキアの援軍もよそに回して、フェリックスとの対決に突入したのは急だな、とは感じたんですよね。
それ以上に、フェリックスと直接対決に入ったところであの展開は、巻き入ったんじゃないかと思っても仕方ないんじゃないかと。いや、もうちょっと我慢しなさいよ、せめて決着つくまでは。なんでそんな乱入みたいな形で宣言してしまうのか。流石にこれでフェリックスとの決着が流されてしまったのは消化不良ですよ?
蒼の騎士団との戦いも、これまでと違ってあんまりパッとしないイメージが湧きにくい描写で、アシュトン頑張っていたのはわかるんですけど、オリビアの活躍の余地があんまりなかったのもなあ。それだけ、蒼の騎士団がオリビアを封じ込めていた、ということでもあるのでしょうけれど。
オリビアとアシュトン、せっかく二人が同格の作戦能力を持つだけに、一人のフェリックスに対して二人という強みを生かして、というのをちょっと期待していたのですが。

急展開の衝撃的なラストから、さらに次で完結という予告が入って、ここから一気に話終わっちゃうの? と、虚を突かれております。このままだとメキアの人たちあんまり話に入ってこれないんじゃないだろうか。
てっきり、アシュトンとクラウディアはカップリング既定路線かとも思っていたのですが、アシュトンの方はオリビア一途だったのかもしかして。