【母親がエロラノベ大賞受賞して人生詰んだ せめて息子のラブコメにまざらないでください】  夏色 青空/ 米白粕 富士見ファンタジア文庫

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俺のことが好きすぎる母親のせいで、人生がハードモード過ぎる!

母・美礼が書いた母×息子の近親相姦エロラノベが大賞を受賞した。なぜか俺が受賞したことになってた。……いやふざけんな!? しかも同期受賞の現役JK作家は俺が好きなあいつで――あ、終わった。人生詰んだわ。

後半に行くほど加速度的にテンポが良くなりリズムに切れ味が増していくぅ。いやこういう勢いマシマシの畳み掛けるようなテンポのコメディは結構好みなんで楽しかった。
最初の頃は結構手探り感あったんですよね。
なにしろ、大賞を受賞したものの、ヤベえ内容過ぎて社会的に死ぬので息子に自分の身代わりになってくれ、と頼む(事後承諾)母親とか、完全に毒親に見えるじゃないですかー。
しかもなかなかいい具合に壊れたお母様で、あんた世間体とか気にするようなタイプじゃなかろうに。書いたの小説じゃなくてノンフィクション(予定)のつもりだったんじゃないだろうか、と思えてくるぐらい、ガチの息子ラブ。ってか、この主人公これまで貞操は大丈夫だったんだろうか。わりと真面目にこの母親危ないと思うんだけど。
ともあれ、母親の身代わりに作家としてデビューする羽目になった霜村春馬。その名も「種付けプレス」というどこに出しても恥ずかしい雄大無辺なペンネームである。昨今エロ小説家でもエロ漫画家でもこれほどダイレクトなペンネームの人、なかなかいないんじゃないだろうか。
と、思ったらこの業界キメセク先生とか立ちバック先生とか緊縛セーラー服先生とか、同類は枚挙にいとまがないようで。この世界のライトノベル業界どうなってるんだ!?
というかこれ、わりとエロラノベの社会的立場が確立されてるんじゃないだろうか。エロラノベ部門とか大々的に他のジャンルに負けない勢いで出版社あげて授賞式とかやってるわけですし。
キメセク先生がラノベ界の神として崇め奉られてるくらいなんだし。

それはそれとして、授賞式を通じて先輩作家たちと知り合い、そこで業界の闇ならぬラノベ作家たちが抱える心の歪みや人生を傾がせる後悔を目の当たりにするのである。
授賞式直後の新人作家に何を背負わせているんだ、と言いたくなる先輩たちの絡みっぷりだ。受賞作の改稿とかデビューにむけての準備とか本当なら忙しいんじゃないんかい!
なぜか、速攻で作家人生を賭けて先輩作家との執筆バトルに挑むことになってしまった種付けプレス先生。まあ春馬は本当は種付けプレス先生じゃないのですし、自身デビューに向けて何度も投稿して三次あたりで容赦なく落とされる日々を送るラノベ作家志望に過ぎないので、むしろ自分の可能性を突き詰めるための手段として、千里エビデンス先生とのバトルは登竜門でありラストチャンスにも成り得る機会であったわけですけれど。
ともあれ、家庭の事情から家族愛を徹底して否定する千里先生。それは、家族愛をテーマにした種付けプレス先生の受賞作や、同時受賞した同級生のカリン先生の作品のテーマを根底から否定するものであり、骨子を捻じ曲げてでも改稿しろ、と迫る千里先生に敢然と否を突きつけるために必須の決戦ではあったわけだ。
このあたりから物語が軌道に乗ったのかスイスイと話が転がり始める。それに合わせて、作品そのものの勢いが加速度的に増していくんですね。会話掛け合いのテンポがどんどんと早くなり、ボケツッコミの連鎖も畳み掛けるようなリズムへと発展していく。
主人公の春馬も、母親に振り回されているだけの受け身の主人公ではなく、こいつはこいつでわりと言いたい放題思ったことを言いまくるヤバいやつなんですよね。先輩だろうが大人だろうが関係なし、勢いとノリで思ったことをズバズバと指摘し、言い放つ一言居士。年下や後輩という立場に甘んじで言葉を濁したりしない、なかなか度胸の据わった男なのでツッコミの切れ味たるや辻斬りもかくやという所なのである。
わりと勢い任せに生きているような節もあるし。
そもそも、彼が小説家としてデビューを目指しているのは、同級生で読書仲間で高嶺の花である同級生、今となっては同期の作家となった凛夏に、一端のプロの作家になって告白するぜ、という志?からだったはずなのに、この男そのへんの動機のこと途中から忘れてやしなかっただろうか。目の前の執筆バトルやら何やらに夢中になって、どんどん凛夏の扱いが雑になっていってるしw
まあ、この凛夏さんが面白いことに雑に扱われることで輝く系のヒロインだったのですが。

実は売れっ子イラストレーターだったという引きこもりの妹も含めて、この母にこの子あり、と言った感じで母一人子二人のこの霜村家、ほぼほぼ勢いとノリだけで生きてやしないだろうか。最初の頃は母親だけ変なのかと思ったけれど、ちゃんと親子だったよこの一家。
というわけで、後半あたりになるとほどこの霜村家が作品のノリを支配してしまったかのような怒涛の勢いで、小ボケとネタが叩きつけられツッコミが応酬し、なんかもう大騒ぎでついつい楽しんでしまいました。
はじめの段階では母親がアレすぎるし、シモネタもポンポン放り込まれてちょっと引き気味に読んでいたのですが、勢いつき出してからはなんだかもう面白くなってしまって、いやあこういうパワフルさ、強引なくらいの勢いはコメディ作品には大事ですよね、というのを再認識した次第。
これだけドタバタやってくれたら、ひたすら楽しかったです。