【虚ろなるレガリア Corpse Reviver】  三雲 岳斗/深遊 電撃文庫

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少女は龍。少年は龍殺し。 日本人の死に絶えた世界で、二人は出会う!

その日、東京上空に現れた巨大な龍が、日本という国家の崩壊の始まりだった。
魍獣と呼ばれる怪物たちの出現と、世界各地で巻き起こった“大殺戮”によって日本人は死に絶え、日本全土は各国の軍隊と犯罪組織に占領された無法地帯と化してしまう。
ヤヒロは数少ない日本人の生き残り。龍の血を浴びたことで不死の肉体を手に入れた彼は、無人の廃墟となった東京から美術品を運び出す“回収屋”として孤独な日々を過ごしている。
そんなヤヒロを訪ねてきたのは美術商を名乗る双子の少女ジュリとロゼ。二人がヤヒロに依頼したのは、魍獣を従える能力を持つという謎の存在“クシナダ”の回収だった。
廃墟の街で出会った少年と少女が紡ぐ、新たなる龍と龍殺しの物語、堂々開幕!


ドラゴンものはデビュー作以来って、【コールド・ゲヘナ】のことかー! 懐かしいなあ。って、あれはファンタジーじゃなくてガッツリSFでしたけどね。それ以上に人型ロボットものだったじゃないか。ド派手で何よりスピーディーな高速戦闘は読み応えたっぷりでのめり込んだのを覚えています。まさか20年以上経ってもこうして第一線で活躍し続けているとはさすがに思いもしませんでしたが。というか、そんな先のこと考えもしなかったんだけど。

さても今度の新シリーズは、前作の吸血鬼モノだった【ストライク・ザ・ブラッド】から、龍と龍殺しの物語。ドラゴンスレイヤーというのは本邦でもファンタジー小説やゲームの黎明期から活躍するある意味勇者の代名詞。かのドラゴンクエストからして竜王殺しの話でしたし、それよりも前、ファミコンのアクションゲームでも黎明期からドラゴンスレイヤー的な作品は山程ありました。ライトノベルでも、ロードス島戦記や海外から翻訳されたファンタジー小説なんかでもドラゴンスレイヤーとは最強の戦士、みたいな感じで常に最上位に位置し続けたジョブなのではないでしょうか。
吸血鬼に並ぶ、王道とも言えるでしょう。
しかも、本作の主人公ヤヒロのそれは現代に合わせて様々な形にアレンジやら改造やらされた龍殺しのそれらと比べると、むしろ原典に近いんですよね。古典的と言っていいくらい正統派な形で誕生した竜殺し、と言えるのかもしれません。

魍獣と呼ばれる謎の化け物たちの出現に加えて、世界中の国家、組織、個々の人々からの虐殺によって国家として日本は滅び、民族として日本人は絶滅した。
日本列島は都市の廃墟に魍獣が跋扈し、その縁側で世界各国の軍隊が基地を置く滅びの地と化していた。という、ポストアポカリプスものと言えなくもないけど日本限定終末後、というなかなか類をみない壮絶な世界観である。
でもこれだと、世界中が滅びてしまった後に比べて、他の世界の国々は健在なので物資の面では不足がないので、ガンガンとフルスペックの軍隊をアクションの中に放り込めるんですよね。その上で住民の被害を考えないで、日本の各地各都市各名所を戦場にして吹っ飛ばせるという自由度の高さ。なにしろ無人ですからー。日本人絶滅してますからー。文句はどこからも出ませんね、善き哉。

そんな根絶やしにされたはずの日本人の生き残り、主人公の鳴沢八尋には目的がある。死んでも成し遂げなければならない目的だ。死なないけど。
その死なない身体になった原因と、目的がまた覚悟決まりまくっていて壮絶極まりないんですよね。
まだ十代の若者にも関わらず、背負っている業が重すぎる。彼にとってはこれまでの人と関わらない、関われない孤独ですら、禊だったのかもしれない。
でも、彼はここで出会ってしまうのである。さて、その運命の相手がクシナダヒメであったのか、それとも悪魔(ベリト)の双子の方だったのか。
何もかもが双子の目論見通り、ではあったものの、なにげに双子との邂逅こそがヤヒロにとっての転換点だったのは確かなんですよね。それを運命と呼ぶのは恣意が介在しすぎているか。
でも彼女たちに目的と企みはあり利用する気満々でも、扱いとしては誠実であり好意的であり、駒とか道具扱いじゃなく、ちゃんと同じ人として、共犯者として、仲間としてベリトの双子のみならず、ベリト隊のなかなかに個性的な面々は接してきてくれてるんですよね。
孤独のまま走り抜けるつもりだったヤヒロにとっての、初めての仲間というべき人たち。
日本人の生き残りとして迫害され続けてきたヤヒロにとって、経験のない好意的な交友は戸惑い狼狽えるしかないものだったのだけれど、それでも仄かに嬉しそうで、ついつい警戒を緩めてしまう姿はチョロいとは言うまい。可愛らしいくらいじゃないですか。
憤怒と罪悪感にだけ塗れて生きて死ぬには、まだまだ若すぎるんだから。
にしても、ジュリエットとロゼッタの双子のキャラクターは良かったですねえ。半分マフィアみたいな連中ですけど、天真爛漫でどこか喰えないジュリに、クールでそっけないようでイイ性格しているロゼと、強烈な存在感を残してくれた二人でした。まさに天使のような小悪魔、といった周りを翻弄するジュリの明るさもとらえどころのなさも魅力的なのですが、クールなロゼみたいな子がデレるのは是非見てみたいなあ。
この二人に比べると、メインヒロインの彩葉は裏表のない真っ直ぐな性格していて、色んな意味で汚れていないなあ、とw
ただ行動力というかパワフルさは全然負けてないんですよね。結構グイグイくるタイプだぞ、この娘。こういうブレのないストレートにまっすぐ進める子でないと、超ヤベえレベルの凶悪なヤンデレには対抗できないのかもしれない。

初っ端からしっかりと強烈な世界観を叩きつけると同時に、そこで躍動するメインとなる登場人物たちの存在感を確立し、壮大なストーリーの始まりを強く意識させる。一巻目としては文句なしの、長期シリーズの開始を確信させる盛大な号砲でありました。このあらゆる意味でも面白さと安定感は、さすがとしか言いようがない期待の新シリーズでありました。