【董白伝~魔王令嬢から始める三国志~ 4】  伊崎 喬助/ カンザリン ガガガ文庫

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孫家の姫、現る!

拉致された董白は、曹操の根拠地である許昌に連れてこられる。
そこに現れたのは、孫家の姫、孫尚香だった。
「ここから出て自由になりたいなら、わたしと来い」
曹操は、袁術と呂布が手を組んだ“長江同盟”と対立しており、そこには彼女の父、孫堅も参加しているらしい。
しかし、その同盟も一枚岩とはいかないようで……?
董白の身柄を押さえた曹操、袁紹軍の客将となった劉備、そして長江同盟で機を窺う孫堅――形を変えた“三者鼎立”は、歴史に新たな風を吹かせるか。

打擲幼女の覇道ファンタジー、動乱の第4幕!

主君である劉協陛下もあちらこちらにお持ち帰りされた人だけれど、董白ちゃんはさらにミニマムで持ち運びしやすいせいか、単体で軽々と携帯されてお持ち帰りされること度々。
確かになんかこう、持って帰りやすそうな体型してたけどさ。あんまりデカくないとはいえ男の曹操はともかくとして、同じ幼女っぽい孫尚香にもお持ち帰りされてしまうとは。
こんな事なら劉協くんも遠慮してないで、さっさと董白ちゃんお持ち帰りしておけばよかったのに。

というわけで、本拠である長安から強制的に引っ剥がされ、群雄たちが割拠する中原へと引っ張り出されてしまった董白ちゃん。人材マニアな曹操が董白ちゃんをただの人質なんて扱いをするはずもなく、彼女の才覚を試すように様々な難題を突きつけてくる。突きつけてくるだけならまだマシで、取り敢えずなんかやれ、とばかりに渦中に放り込んでくるのだからたまらない。いきなり戦場に放り込まれて部隊を率いさせられるわ、先日反董白連合で盛大に戦った相手の頭目であるところの袁紹の前に連れてこられた日には、董白ちゃん白目である。
凡人らしく目まぐるしすぎる上に過酷過ぎる状況に狼狽えてるばかりだと、曹操ってば露骨に白けた様子を見せだして、飽きたらポイするぞ、とばかりに強制的に才を示せ、な状況に追い込まれて、これってどう考えてもブラックですよね?
曹操陣営、こんな主君に仕えて常に試されているのだとしたら、相当に過酷である。精神病みそう。
況してや、仕えたつもりなんかない董白ちゃんである。ってか拉致られて無理やり連れて来られた挙げ句にいきなり最前線送りですもんね。董白ちゃん、少女なのに。さらにいうと漢の相国なのにw

このまま曹操陣営に抑留されていたら、それこそ絞りカスが出ないところまで絞られ尽くされそうだったので、孫尚香ちゃんが目ざとく董白ちゃん、掻っ攫っていってくれたのは結果だけみたら幸いだったのかもしれない。
少なくとも孫尚香はアホの娘で人の言うことをまったく聞かなくても、コントロールは出来る娘だったし、その親の孫堅はというと野獣みたいな男ではあるが狡猾な獣らしく話は出来るし交渉も効くタイプだったんですよね。いやあ、孫堅もその荒さやずる賢さは奸雄と言っていいヤバい人だったのかもしれないけれど、人を限界まで追い込むような狡猾さは曹操以上にヤバいやつはいないし、暴力の権化としては呂布以上の凶暴な輩はいないだけに、相対的にまともに見えるんですよね、孫堅は。
義理堅く、身内家族に対しては情が厚い、というまっとうな感性の持ち主ですし。
不義即斬、という関羽みたいなホントの意味でまったく人の話聞かないし、自分の正義だけしか見ていないようなヤバい奴に比べれば、ほんとにマトモな人だった、孫堅は。
でも、逆にここまで突き抜けた輩が跋扈する三国志の世界においては、まともであるというのはむしろハンデだったのかもしれないが。
それでも、董白ちゃんの唯一の武器であった口撃が、前みたいにコントロールできない自爆技だった頃に比べると、ある程度制御できる上に自力で発動させるようになってきたのはちょっとした安心感である。口八丁で切り抜けるだけでなく、相手を騙す云々ではなくその鋭い舌鋒で相手の精神を切って捨てる武器なだけに、痛快でもありますし。

さても、中原の戦況は群雄割拠の様相を呈しつつ、袁紹を中心とした華北連合と、袁術・呂布・孫堅による長江同盟という二大勢力が成り立ち、対立を深めつつあるという董白ちゃんの未来知識が通用しない展開に!?
と、思ったら、その内実はなかなか混沌としていて、完全に史実ルートから外れた、というわけでもなさそうなんですよね。というよりも、皮だけは妙なことになっているけれど、中身に関しては思いの外ルートこそ紆余曲折経ているけれど、結果として史実通りに進んでいるのかもしれない。

それでも、趙雲・馬超・甘寧という三人が董白ちゃんについてくれているのは、明確に史実と異なっている部分なので、そこが頼りといえば頼りだよねえ。
特に趙雲はある意味本作のもう一人の主人公、みたいな展開になっていているし。
今回も、ついに天下無双・人中の呂布という三国最強の武将と直接槍を交えることで、もう自分の才能の乏しさというものを嫌というほど痛感させられ、悔しさに惨めさに半泣きになりながら、それでも自身の乏しい才にしがみつき圧倒的すぎる呂布に、犬猿だった馬超と協力して立ち向かう姿は、ちゃんと英傑の一人に相応しい勇姿だったじゃないですか。
うまいこと董白ちゃんが退けた呂布ですけれど、こと暴力、こと戦闘に関しては今まで無双無敵無敗でありつづけ、その驕慢な余裕自信は揺るぎないものがあっただけに、ここでようやく呂布に武で勝利した、痛めつけてやれた、というのは大きいなんてものじゃなかった。どれだけ強くても、こいつチンピラなんだよなあ。それに比べれば、趙雲はどれだけ雑魚で弱くて情けない性格していても、その根底は見事な武人なんだよなあ。
ようやく馬超がそれを認めてくれたのはちょっとうれしい。ってか、馬超と趙雲にフラグ立った?

無事孫堅を助けることが出来、袁術ともなんとか対等に結べ、傍若無人の呂布を退け、東に追いやられていた長安勢力として、南側と盟を結ぶことが出来てよかったよかった、希望が湧いてきた! と、なったところでラストの「ゴンッ」である。
よ、容赦ねぇーッ!! うわー、そう来たか。本作、全然ゆるゆる三国志してくれないじゃないですか。曹操、打つ手打つ手が詰め手すぎて、こいつホントにやっばいわー。
これ、董白ちゃんどうやって生き残れるんだ?