【ロクでなし魔術講師と禁忌教典 19】  羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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幾年の時を超えーー伝説の時代に、グレンが駆ける

ついに姿を現した魔王から逃れ、導かれたのは超魔法文明時代。失踪したセリカを取り戻すため、伝説の時代を駆け回るグレンとシスティ。圧倒的な実力差戦いに巻き込まれる2人は、この時代で新たな力を手に入れる!?

5853年という途方も無い時間を隔てた巡り会い。それは運命の出会いであり、きっと世界を救う出会いだった。でもそれ以上に、ただ一組の家族が生まれた出会いだった。
グレンにとって、セリカは大切な家族と呼んで憚らない相手だった。実際、グレンもセリカもお互いに公言して止まなかったし、お互いがどれだけ大事で掛け替えのない人なのかを、どんな深い想いを抱いているかを彼らはその言葉で、その態度で、その熱量で表し続けていた。
でも、その関係性をはっきりとした言葉で語ることはなかったんですよね。家族といいつつも、どんな家族なのかは言わなかった。もちろん、語らずとも言葉にせずとも、グレンがセリカをどう思っているのかは伝わってきていたんですけどね。グレンをセリカがどんな風に愛しているか、あからさまなくらいでした。
でも、それを言葉にはしてこなかった。
ずっと、この瞬間のためだったんでしょうね。これだけ長くシリーズ続いたにも関わらず、この瞬間のためにずっと温めてきていたのか。

そんな風にグレンが、セリカを呼ぶときは。その関係が終わるときだと考えていたのだろうか。
母さんと、グレンがセリカを呼んだ瞬間、様々なものが決壊した。それはわかりきっていながら、決して二人共表に出さなかったもの。図らずも、セリカを母と呼ぶことでグレンは巣立つ事になったのだろう。親離れで、子離れだ。いつも、最後の最後のラインでグレンのことを見守り続けてくれていたセリカ。時々、最後の最後どころか過保護なモンスターペアレント並にラインオーバーしまくって前に出てきたときもあった気がするが、それはそれとして、本当に最後のところでセーフティーネットとして、グレンの庇護者で居てくれてたんですよね。グレンが心を壊したときも、セリカが守り続けてくれた。
すでに自立し独り立ちしたグレンだけれど、帰る所はずっと在り続けていたのだ。安らかな気持ちで眠ることのできる場所を、セリカはずっと守り続けてくれていた。
そこから、彼はついに巣立つことになる。その胸に、本物の正義の魔法使いの姿を宿して。誰よりもカッコよく憧れた、あの女性の姿を焼き付けて。
グレンにとっての、生涯の命題であるのだろう「正義の魔法使い」としての在り方についても、この超古代文明時代を駆け抜ける中で、一つの答えにたどり着くための道筋を見つけたみたいだし。

グレンにとって、大きな区切りであり、リスタートとなる回だったんじゃないだろうか。
過去の世界に実際訪れることで、これまで謎とされていた部分、様々な伏線がぐるりと円環を描いて繋がった部分もたくさんありますし。だいぶ、ストーリーラインの設定周りもスッキリしたんじゃないでしょうか。ナムルスの正体はもとより、その態度についてもその発端がこの時代に起因していた事がよくわかりましたし。
しかし、イグナイト家はちょっと長く続きすぎじゃないですか!? 実質6000年近く連綿と続いたことになるぞ、あの一族。

そしてもうひとり、ついに魔将星の領域にまで至ることになったシスティ。成長物語として見たら、間違いなくこの娘がこのシリーズの主人公なんですよね。あの、初めての実戦でべそかいて心折れまくって泣きじゃくって何も出来なかった娘が。才能としても、おそらく一般的な秀才の域を出なかった娘が。挫折を繰り返し、努力を重ねて、実戦をくぐり抜け一つ一つ、一段一段着実に堅実に階段を登り続けてきたんですよね。決して一足飛びに段を飛ばさず、本当に一段一段丁寧に。システィがここに至るまで描いた成長曲線は、掛け値なしに美しいと思います。名実ともに、作中でも最強ランクにたどり着いたんだよなあ、この娘。もうすでに特務分室でも十分やってける実力になってましたけれど、ここでガチに次のステージに駆け上がったもんなあ。さながらそれは、星が天に昇るようにして。

ちなみにセリカ、まだワンチャンあると思ってるんですよね。どうにもそれらしい伏線が、この19巻の中にありましたし。
さて、舞台は現代に戻ってついに復活した魔王との決戦に。着々とラストに近づいてきたのが実感されます。